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mineoは“楽しい”MVNOに――格安SIM差別化のカギを握る新戦略

料金や品質での差別化が難しくなりつつある格安SIM。「mineo」を展開するケイ・オプティコムは、「楽しさ」という新しい軸をプラスする。mineoで掲げる“楽しいMVNO”の姿とは?

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 2014年から2015年にかけて、多くのプレーヤーがMVNO業界に参入し、いわゆる「格安SIM」のシェアがじわじわと増加している。ケイ・オプティコムは、KDDIの回線を用いたサービス「mineo」を2014年6月に開始。2015年9月にはドコモ回線のサービスも追加し、業界では珍しい、ドコモとKDDIの2回線を保有するマルチキャリアMVNOとして存在感を高めている。契約数は2016年1月22日時点で約19万件に達した。

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「mineo」のこれまでの歩み。直近では10GBプランや、有料の(税別1000円)の設定サポートサービスも開始した
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契約数はauとドコモ用のプランを合わせて19万に達した
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契約形態はデータ専用の「シングル」が62%で多く、プランは「3GB」が最多で、「1GB」が続く。端末とセットで契約する人よりもSIMのみを契約する人の方が圧倒的に多い(85%)。契約地域は関東の40%が最多で、お膝元の近畿は31%という状況だ
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通信のトラフィックは平日昼間が最も大きい

 「パケットギフト」「家族割」「フリータンク」「チップ」など、他のMVNOとはひと味違うサービスもmineoの持ち味だが、一方で料金面での差別化を図りにくくなってきているのも事実。ケイ・オプティコムは今後、どのような戦略でmineoを展開していくのだろうか。1月25日に説明会を開催し、モバイル事業戦略グループ グループマネージャーの津田和佳氏が語った。

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ケイ・オプティコムの津田和佳氏

 ケイ・オプティコムはこれまで「料金の安さ」や「サポートの充実」などで差別化を図ってきたが、mineoでは「楽しい」という新しい価値を加えていく。そのカギを握るのが、2015年1月から展開しているコミュニティーサイト「マイネ王」だ。

 マイネ王では、中の人がmineoの最新情報を発信する「王国通信」、ユーザー同士が質問や回答を投稿できるQ&Aコーナー「王国教室」、ブログのような形で記事を投稿できる「王国広場」を用意。2015年12月のPV(ページビュー)170万は、mineoの公式サイトの2倍以上であり、大きな情報発信源となっている。1月20日時点でのマイネ王の登録者は1万9000人に上る。

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「マイネ王」は、登録数やPVなどが順調に成長しているという
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PVやUU(ユニークユーザー。閲覧者数)の推移
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ケイ・オプティコムの中の人も、さまざまな情報を発信している

 iOS 9のバージョンアップ時やiPhone 6s/6s Plusの発売時にmineoの対応状況をリアルタイムでリポートするなど、マイネ王を起点として新しい情報が発信されることも多い。王国教室のQ&Aは質問は1800件(1日8件)、回答は2万2000件が集まり、ユーザー同士のコミュニケーションも活発に行われている。

 2015年12月からは、余ったデータ容量をネットワーク上に保管して、mineoユーザー同士で分け合える「フリータンク」をマイネ王に開設。フリータンクはひと月あたり10GBまで入れることができ、引き出せるのはひと月1GBまで。現在は引き出す人よりも預ける人の方が多く、1月20日時点では6TB分がたまっている。また、王国教室や王国広場で役に立った投稿には「チップ」という形で、1回10MBのデータ容量を贈り合える仕組みも用意した。

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フリータンクは預ける量の方が多く、既に6TBものデータがたまっている

 500MBコースの追加、高速/低速データを切り替えられる「mineoスイッチ」、パケットギフトなどは、マイネ王で寄せられた声を元に生まれたという。このように、ケイ・オプティコムは「ユーザーと一緒に便利で楽しいサービスを作り、一緒にサービスを作る体験自体も楽しんでもらう」(津田氏)ことを狙う。一言に集約したコンセプトは「Fun with Fans!(ファンと一緒に楽しむ)」だ。

 津田氏は「MVNOの競争環境は厳しいが、ここ1〜2年でトップシェアに食い込んでいくことが大事」と話すが、そこで課題になるのが認知度の低さだ。ケイ・オプティコムが、格安SIMにあまり詳しくない層(マジョリティ層)にグループインタビューを行ったところ、「楽天モバイル」と「イオンスマホ」の認知度が圧倒的だったという。

 mineoの認知度は「10%ちょっとで、全国で9番目くらい」。グループインタビューで分かったmineoの印象は「怪しいなぁという感じ。ケイ・オプティコムについては一切知られていなかった」(津田氏)そうなので、まだ伸びる余地は大いにある。ちなみに格安SIMのシェアでは2位のIIJも、インタビューで「(雑誌の)JJ?」と聞き返されることがあったそうで、mineo同様、マジョリティ層への訴求に課題がありそうだ。

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今後は高リテラシー層に続く、マジョリティ層へも訴求していく
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マジョリティ層の特徴

 一緒にサービスを作って楽しんでもらう方法は、既存ユーザーの満足度を向上させ、囲い込みを図るのには有効だが、それだけで新規ユーザーを取り込むことは難しい。そこで、「マスマーケティングも、この1〜2年はけっこうな費用をかけてやっていく。CMやキャンペーンもやる」と津田氏は意気込む。MVNOは今後淘汰されていくであろう中で、mineoのようなファンを増やしていくことは、シェアを伸ばし、生き残るための重要な施策といえる。

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ユーザーと一緒にサービスを作り、その体験を楽しむことをコンセプトとする

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