実質0円終了でスマホのMNP価格アップ 「適正化要請」も残る不公平感、実効性どこまで
総務省が端末販売の適正化を要請したことを受け、キャリア各社が実質0円でのスマホ販売を終了した。MNP契約時の端末価格がそろって値上がりした。
実質0円の携帯販売は2月まで――NTTドコモは1月29日の決算会見で、番号ポータビリティ(MNP)を利用した乗り換え契約への過剰なキャッシュバックや割引きを、2月にやめると明らかにした。
MNP契約を促す高額なキャッシュバックや割引きは、MNPを利用しない長期契約者がその金額を負担している構図だ。監督官庁の総務省は2015年暮れ、料金の値下げと端末販売価格の適正化を3キャリアに要請していた。
これを受け、ドコモのほかKDDI(au)とソフトバンクも、2月から端末販売価格を適正化すると総務省に申し入れた。また1人1カ月5000円以下になる新しい料金プランも相次いで発表した。
- ソフトバンク、1GBのデータ定額プランを4月に提供――トータル月額4900円〜に
- ドコモ、家族で5GBの新プラン発表 データシェアで1人5000円以下に
- KDDI、月間1GBの「データ定額1」発表 スーパーカケホとセットで月4900円に
2月1日になり、3キャリアは予定通りスマートフォンの販売価格を一部値上げした。3社が取り扱う人気の「iPhone 6s」、またAndroidの「Xperia Z5」について、2月1日時点の実質負担額と1月31日時点との価格差をまとめた。
iPhone 6s(16GB)の実質負担額
- ドコモ(支払総額9万3312円)
- MNP:1万368円(+2万1600円)
- 新規契約:2万5920円(±0円)
- 機種変更:2万5920円(±0円)
- au(支払総額8万4240円)
- MNP:1万6080円(+5280円)
- 新規契約:1万6080円(±0円)
- 機種変更:2万5800円(±0円)
- ソフトバンク(支払総額9万3600円)
- MNP:1万6080円(+5712円)
- 新規契約:1万6080円(±0円)
- 機種変更:2万5800円(+240円)
Xperia Z5の実質負担額
- ドコモ(支払総額9万3312円)
- MNP:1万368円(+2万1600円)
- 新規契約:4万9248円(−1944円)
- 機種変更:4万9248円(−1944円)
- au(支払総額8万4240円)
- MNP:2万3976円(+1万6200円)
- 新規契約:5万976円(±0円)
- 機種変更:5万976円(±0円)
- ソフトバンク(支払総額9万3600円)
- MNP:1万800円(+1万800円)
- 新規契約:4万6080円(±0円)
- 機種変更:4万2720円(+240円)
支払総額(一括販売価格)は変わらないものの、特にMNP利用者への割引きを減らすことで、実質負担額が5000円前後から2万円程度増えている。一方、新規契約や機種変更では負担額がほぼ据え置き、または若干値下げしたケースもあった。
金額はいずれもキャリアのオンラインショップのもので全て税込。2年間の継続利用後の実質負担額で比較した。固定回線や電力サービスとのセット割、学割、シニア割引、長期契約者割引、下取りサービスなどは考慮していない。また実店舗のキャリアショップや併売店、量販店などでは、独自の頭金やキャッシュバックなどを設定している場合があり、金額が異なる場合がある。
MNP契約者への過剰なキャッシュバック競争は2014年3月をピークにいったん沈静化したが、販売競争のあおりを受け度々再燃している。今回は総務省から要請という形で適正化が行われたが、ほとぼりが冷めたころにいずれまた実質0円が復活するのでは? という観測もある。総務省は2月以降、店頭での実態調査を行い、場合によってはさらなる指導を行う方針だ。
キャッシュバックや割引きが控えめになることで、スマホの端末価格は高騰すると予測されている。以前のようにフラッグシップモデルやハイスペックモデルを少ない負担で購入することができなる可能性もあり、特にAndroidはミドルレンジのスマホが売れ行きの中心になるとみられる。
しかしMNP時と機種変更時の価格差は依然として大きく、契約方法による格差は抜本的には解消されていない。新規ユーザーの獲得にどの程度コストをかけるのかはキャリア次第だが、既存ユーザーの負担感をどう拭うのかも課題だ。
各社は、固定回線や電気など他のインフラサービスと合わせたセット割や家族割での囲い込みを強め、MNP利用者のほか若年層や高齢層などをピンポイントで狙った割引も行っている。iPhoneを高価に下取りしたり、キャリアのサービスやアプリを利用しているとスマホが安くなるという販売方法もすっかり定着した。行き過ぎたキャッシュバックや割引きは是正されるが、今後も「人によってスマホの購入価格が違う」という格差拡大の傾向は続きそうだ。
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