実質0円終了で「来店者2割減」、今後の影響は「読めない」 KDDI田中社長
1月末に起きた駆け込み需要の反動もあるが、2月の来店者数は大きく減少。低価格な1GBプランのニーズも未知数。
KDDIの田中孝司社長は2月9日に行われた決算会見で、実質0円以下の端末販売が終了した2月以降、「来店者数が2割は確実に落ちた。店舗によってはもっと大きく影響が出ていると思う」と明かした。
実質0円の終了が伝えられた1月末には、従来通りのキャッシュバックや割引を求める駆け込み需要があったが、現在はその反動で来店者が減っているという。「今後の販売数にも相当影響がでるだろう。それがどれくらいになるのか、駆け込み需要の影響が落ち着いた以降でどうなるのか、現時点では読めないのが偽らざる認識。もう少し待てば分かってくるのかなと思う」(田中社長)
これまで大手3キャリアは、主に番号ポータビリティ(MNP)利用者向けに高額なキャッシュバックや割引きを行い、実質0円以下でスマートフォンを販売してきた。しかし、過剰な値引き競争と販売奨励金の増加による通信料金の下げ止まりが指摘されたことから、総務省は2015年末、料金の値下げと端末販売価格の適正化を3キャリアに要請。2月に入り、実質0円以下の割引は姿を消した。
総務相はこの要請で取り組みに対する報告も求めており、KDDIは「店頭における端末値引きを分かりやすく表示する」「端末値引きや毎月割り引き、奨励金を含めて適正化を図る」ことを総務省に報告したという。
行政では今後、店頭での覆面調査や匿名で情報提供できる窓口を通じ、実質0円以下のスマホ販売を封じていく方針だ。「これからも実質0円以下にならないよう頑張っていく」と述べた田中社長だが、総務省の取り組みに対しては「コメントは控えさせていただく。粛々とやっていくだけだ」と複雑な心境を見せた。
また料金値引きについては、月間1GBのデータ定額サービス「データ定額1」を発表した。5分以内の通話がかけ放題になる「スーパーカケホ(電話カケ放題プランS)」と組み合わせると、月額5000円以下(税別)でスマホが利用できるようになる。固定回線とのセット割であるスマートバリューを適用すれば、月額3966円と4000円以下に抑えることも可能だ。
「3月から提供の1GBプランで、スマホの浸透率をさらに向上したい」と期待する田中社長だが、「(1GBプランは)行政の要請で作ったので、マーケットでの動きは予測できない。スマートバリューをセットにして、ケータイからシフトしてもらえれば……」ともコメントした。
2016年度第3四半期の決算は、売上が3兆2990億円(前年同期比3.8%増)、営業利益が6724億円(同11%増)、純利益が4085億円(同13.4%)の増収増益。1ユーザーあたりの収入を示す総合ARPAが増収したほか、純増数は鈍化したもののタブレット販売が好調で2台持ちユーザーも増加した。
利益目標の進捗率は82%で「3期連続の2桁成長も確実」とするが、上方修正の予定はない。「2月以降、市場が急激に変わった。2月、3月と値下げの影響は本当に読めない」(田中社長)ためだ。MNP向けの奨励金と毎月の端末割引を減額する一方、低価格な1GBプランの需要予測も難しく、中長期的の収支バランスがどうなるかはまだ見通せないという。
例年であれば学割などで活況を呈す春商戦だが、2016年は、行政からの値下げ&販売適正化要請で客足が遠のく事態に陥ってしまった。KDDIは物販サービスの「au WALLET MARKET」を開始したほか、データ容量をチャージできるプリペイドカードをキャリアショップで販売する予定で、来店者の減少はこうした店頭施策にも大きな影を落としかねない。
田中社長は「機種変更する方など、長い目で見れば来店者は戻ってくるだろう。しかしもっと違う目的でショップに来ていただける工夫をしないといけない。一番恐ろしいのは、興味の行き先が(スマホなどから)違うところに行くこと。これは業界としてもまずいと思う」と不安ものぞかせた。
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