「スマホで見る音楽PV」から学ぶ Webの作り手に今必要なもの(1/2 ページ)
「lyrical school(リリカルスクール)」をはじめとしたスマホ特化型PV。「PC用/スマホ用」「レスポンシブ対応」そんな既成概念を取っ払ったクリエイティブが今、注目されている。
数年前まで、Web上のコンテンツは基本的にPCで見ることが当たり前だった。しかし、スマートフォンやタブレットの登場に伴って、ユーザーはさまざまな“視聴形態”を選べるようになった。
一方で、こうした変化はコンテンツの作り手側にとって負担増につながったともいわれている。わざわざ「PC用/スマホ用」のようにコンテンツを作り分けたり、どんなデバイスでも同じように見えるように「レスポンシブ対応」したりする必要が出てきたからだ。
そんな中、アイドルユニット「lyrical school(リリカルスクール)」が公開した音楽PVが大きな話題を呼んだ。この音楽PVは「どのデバイスで見ても同じように見える」ことを大胆に切り捨て、スマホで視聴することに特化したつくりになっていたからだ。単に作り手が「作業量を減らすため」ではなく、「スマホだからこそ」の理由を動画の中に込めた1つの作品になっていたのだ。
1:デバイスの不自由さを逆手に取った「lyrical school(リリカルスクール)」
「RUN and RUN」のPVでは、スマホのカメラ機能、Twitter、Instagram、Vine、Vimeoなどのアプリケーションを「これでもか!」いうほど活用している。画面を通じてTwitterやInstagramのアプリを遷移する(と思わせるような)映像に、見入ってしまったユーザーも多いのではないだろうか。
この手法は、音楽評論家である宗像明将氏も「デバイスがコンテンツを決定する lyrical school『RUN and RUN』の衝撃」の中で「ポピュラー・ミュージックとして正しい潔さ」だと書いているので、こちらも合わせてご覧いただきたい。
つまり、リリカルスクールの「RUN and RUN」は「デバイスにコンテンツが縛られる不自由」を逆手に取って見せた、1つのPR事例なのである。
前置きが長くなったが、過去スマホに特化したPVを作っているのはリリカルスクールだけに限らない。他にも「スマホで見ること」に最適化した面白いPVは存在するので、順番に紹介していこうと思う。
2:腕を上げ続けていないと再生されないPV
カラーコードのメンバーは、レディ・ガガを世界的トップスターに押し上げたファッション・ディレクターのニコラによって「POP ICON PROJECT TOKYO」というイベントから選出された(画像は公式サイトより)
まず、事例に挙げたいのは日本版レディ・ガガとして結成されたアーティストグループ「color-code」(カラーコード)だ。
2015年5月に発売した2ndシングルである「Hands UP!」では、プロモーションとしてスマホ特化型のPVをネットで公開した。
動画を見るには、アプリをインストールするのではなく、スマホのWebブラウザで専用サイトに直接アクセス。PRサイト「Hands UP! Play-Pause Music Video」にあるQRコードを読み取るか、スマホで直接PVサイトへアクセスすると視聴が可能だ。
PVサイトへアクセスすると、無人でモノクロの渋谷の360度映像が映し出される。そこで画面の指示に従い、スマホをHands UPする(高い位置に掲げる)と、街の風景が色づいて音楽が流れ始め、歌って踊るメンバーが画面内に現れる。
このPVはスマホの角度を検出するジャイロセンサーと連動しており、つまりスマホを頭上に掲げ続けないと見られない仕組みになっているのだ。曲名である「Hands UP!」をうまく視聴者に意識させるプロモーション手法だといえる。
3:「“見る”か“聴く”か」選択を迫られるPV
カラーコードと同じ手法を取り入れているのが、グラビアアイドルでもあり歌手としても活躍中の篠崎愛だ。
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