7月22日、日本でも「ポケモンGO」の配信がスタートした。ポケモンGOとは、米グーグルからスピンアウトしたナイアンティックが、任天堂の関連会社であるポケモンと協同で開発した、スマートフォン向けのゲームである。
ポケモンGOには2つの大きな特徴がある。まず、ゲーム内では、あたかも現実世界にポケモンが現れたかのように仮想の映像を重ねて表示できるため、これまでにないリアルな体験ができること。
もう1つは、外に出ないとプレイできないということ。ゲームの基本要素として、モンスターの捕獲とアイテムの獲得があるが、そのためには現実世界に存在するモニュメントまで移動しなくてはならないのだ。
日本でもβテストが6月30日まで行われていたが、日本に先駆けて7月6日に米国で配信が始まり、大きな話題になった。現在では世界約30カ国以上で配信中だという。すでに各国のApp StoreやGoogle Playでは、無料アプリのランキング1位をキープし続けている。
ポケモンとIngressが交わるとき
配信が始まってから、街の様子は一変した。あちらこちらでスマホを凝視しながら立ち止まっている人が見られるようになったのだ。それまで人がいなかったような場所にまで集まるようになっていて驚かされる。
筆者は同じナイアンティックが開発した「Ingress」という位置情報を使ったARゲームのプレイヤーである(エージェントと呼ばれる)が、この変わりようは本当に驚いた。Ingressで1カ所にここまで集まるとしたらFF(フラッシュファーミング。アイテム補給するための集まり)か、アノマリー(公式戦)くらいだろう。Ingressプレイ時には見られなかった風景だ。
ポケモンGOでアイテムや経験値獲得のために使われている「ポケストップ」や、バトルの会場になっている「ジム」と呼ばれるスポットは、Ingressでいうところのポータルがベースとなっている。名称、使われている写真、スポットの解説は、Ingressのポータルで使われているものそのままだ。これらは、Ingressのエージェントたちがコツコツと申請を重ねて作り上げていったものなのだ(現在新規申請の受付は終了している)。
そのポータルの中から、Ingressのスポンサーであるポータルを除き、なおかつ適切と思われたものがポケストップとして残されているようである(ポケモンGOで提携しているマクドナルドは、約2900店舗がポケストップとして、その中でも約400店舗がジムとして新たに登録されている模様)。
ちなみに、筆者は週末になるとIngress仲間たちとよく外飲みをしているのだが、ポケモンGOが広まるや、道行く人には「ポケモンGOをやるために集まっている(イタい)中年集団」に映ったらしい。
いつものように集まってIngressをしていたら、通りすがりの女子高生グループから「ポケモンGOですか(笑)」と聞かれた。幾度となく飲んでいるが、それまで1度も声などかけられなかったのに、である。ポケモンGOの影響力のすさまじさを感じた次第だ(もちろん中にはポケモンGOをしていたメンバーもいたが)。
Ingressのエージェントが「不審者」でなくなる日
Ingressは、架空のストーリーをベースにEnlightened(エンライテンド。陣営カラーは緑)、Resistance(レジスタンス。陣営カラーは青)の2陣営に分かれ、ポータルを取り合うゲームである。外に出かけてポータルのオーナーになり、獲得したポータルをリンクと呼ばれる線で結んで三角形を作り、そのエリアを陣営カラーに塗りつぶすというのが、基本的な遊び方だ。
エージェントたちは、そのポータルを巡って日夜戦いを繰り広げているわけだが、活動時間は深夜早朝に及ぶことも多い。ポータルを獲得するためには、対象と自分の距離が40m以内でなければならない。スマートフォンを見ながら近づき、GPSの具合によって進んでは戻りを繰り返すため、端から見たら不可思議な行動を取ることもよくある。
そのため、警察に職務質問をされるエージェントも多く、「不審者」と言われるほどであった。これまでポータルの周辺をうろついているのは、間違いなく不審なエージェントだけだったのだ。しかし、今ではまるでひと気のなかったポータル、いや、ポケストップの周辺にポケモントレーナーが集まるようになった。
特に「ルアーモジュール」と呼ばれる、モンスターを現れやすくするアイテムを使うと、それを見つけたトレーナーたちがあちこちから集まってくる。効力は30分続くため、1度訪れるとしばらくそのまま立ち尽くしている。ときおり親に連れられた子供の姿も見られるが、集団を形成しているのは、カップルやグループで、団体行動をしている人が多いのが印象的である。
特に休日は夜中も多くの人が公園や駅などのポケストップに集結するほどの社会現象になっている。ゲームをプレイしていない人から見ると異様な光景ではあるが、Ingressのときのように職質されたり、よく分からない人が夜中にうろついているという印象を与えたりすることは減りそうだ。ポケモン効果で、Ingressのエージェントたちも思わぬ恩恵を受けたようだ。
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