FREETELの「業界最速」は何が問題だったのか? プラスワンと消費者庁に聞く(3/4 ページ)
「FREETEL SIM」の「業界最速」「シェアNo.1」などの表記が景品表示法違反だとして、消費者庁が措置命令を出した。プラスワンと消費者庁は、今回の問題について自社サイトで説明しているが、「業界最速」を巡る両者の考えに溝があると感じた。
グラフに注釈があればいいわけではない
消費者庁の見解は以下の通り。
―― FREETELさんからは、どんな資料が提出されたのでしょうか。
笠原氏 「業界最速」という表示と、その下にある棒グラフ図の根拠となる資料の提出をお願いしたところ、Webメディアの定点観測記事が出されました。その内容が、一定期間、特定日時、場所で1位だったというものでした。
その記事では、ドコモ回線のみ比較していましたが、「格安スマホ業界」と言ったときには、au回線も含まれます。ドコモ回線の比較のみなので、「業界最速」とは言えないだろうと。また、「業界最速」と書いてあれば、恒常的に業界で一番速いと認識しますが、資料で出された記事では平日昼間の測定結果を掲載しており、恒常的な評価にはつながりません。
※編集注:資料の出典元について、プラスワンと消費者庁の発言に相違がある。現在、事実関係を確認している。
4/28 18:00追記
消費者庁に提出されたグラフデータの出典元について、プラスワン側に再度確認したところ、「新橋で測定したデータを提出すべきところ、誤ってITmedia Mobileのデータを提出していた」とのこと。FREETELのグラフの1つの測定場所が「東京都千代田区」となっているのも、誤りとのこと(プラスワンの所在地である「東京都港区新橋」が正しい)。
消費者庁が確認したのはITmedia Mobileの記事だったため、当然グラフと数値が異なるが、そもそも、プラスワンがグラフ化したデータも誤っていたため、結果的に「出典元からの転記に誤記があった」は事実となった。プラスワンは消費者庁に対し、提出したデータを訂正するとのこと。
―― この棒グラフの数字も、実際とは異なっていたのですよね。
笠原氏 棒グラフと実際の数字を見比べると、(比較対象の)I社とO社の速度は0.2〜0.3Mbpsとなっていますが、実際は0.4〜0.5Mbpsほどなので、過小に書かれていました。また、ドコモの速度は実際のデータでは20Mbpsだったのに対し、グラフでは6Mbps程度でした。他社よりも著しく速く、MNOのドコモと匹敵するように誤認されるため、データとして根拠がないと判断しました。
―― 一方で、12時台に測定した旨は、グラフの下に注記されています。正しいデータを使った上で、注釈があれば、問題ないという考え方もあります。
笠原氏 注釈が下にあればいいというわけではありません。仮に注釈の通りだとしても、ドコモ以外の人はどうなのか? という議論があります。
「業界最速」という表示が全てです。特定のあるタイミングだと言っても、見た人からは、恒常的に速いととらえてしまいます。
―― 「12時台で業界最速」と書いてあればよかった。
笠原氏 同じ月のUQ mobileやY!mobileのデータを確認しましたが、UQやY!mobileの方が実測は速かった。そこで注釈や12時台を加えても、「ドコモ回線での結果が速い」以上のことはいえません。
―― 「業界最速」といえる基準はありますか。どこまでなら合理的根拠ありといえるのでしょうか。
笠原氏 「合理的な根拠」の判断基準は、「不実証広告規制に関する指針」というガイドラインで確認できます(参照※PDF)。ポイントの1つは、提出資料が客観的に実証された内容であることです。口コミやアンケートではなく、テストや調査による、信頼されたデータであるかどうかです。もう1つが、提出資料が、表示(広告)の内容と一致しているかどうか。今回は、ある特定の地点と場所での調査だったため、合理的根拠なしと判断しました。
―― そうなると、「業界最速」で合理的な根拠を得るには、日本全国でくまなく、毎時間測らないとダメということですか?
笠原氏 それは物理的に難しく、一種の犠牲が必要です。総務省が実効速度のガイドラインを出していて、MNOには適用されていますが、MVNOには対応していません。公にされた、共通したルールにもとづいて表示すれば、社会的にも比較ができます。今は過渡期なので、徐々に環境整備が必要になるでしょう。
―― ちなみに、FREETELの「スマートコミコミ」については、どう見ていますか。端末価格が極端に高く、それが分かりにくい場所に明記されていることを問題視しています(その後、解約時に、割賦残債50%分を買い取るよう仕様変更された)。
笠原氏 一般論として、消費者に誤認させる表示があれば、対処します。スマートコミコミについても、誤認させるような表示があれば問題視しますが、現在はいいのか悪いのか、申し上げることはありません。
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