夏の足音が近づく6月の終わり。この時期の風物詩といえば、梅雨やアジサイはもちろんですが、ホタルのかすかな光も味わい深いものです。
田んぼの土手で心地よい夜風を感じつつ、ホタルたちの光を眺めながら物思いにふけるのも乙ですが、今見ているこの光景を写真に残して、友人や家族と共有できないだろうかという気持ちも出てきます。
ホタルの光は微弱であることと、点滅していて常に光ってはいないことから、小さなイメージセンサーでオートモードでしか撮れない従来のスマートフォンのカメラで撮影することは困難でした。
しかし、iOSでは8から、Androidは5.0 Lollipopからカメラの各種設定を変更できるマニュアルモードのAPIが追加されています。
今回はAndroidスマートフォン(Huawei honor 8)で、ホタルの撮影に成功しました。
ホタルの撮影では、シャッタースピードとISO感度、マニュアルフォーカスを設定していきます。
シャッタースピードはオートモードの場合、手ブレ・被写体ブレを防ぐ観点から1/100秒など高速に設定されていますが、これでは露光時間が短いために光を多く取り込むことができません。
ホタルの光は微弱なため、シャッタースピードは長く設定しましょう。ここでは設定可能な最大の30秒としました。
また、長時間の露光になるため、スマートフォンは三脚に固定しましょう。三脚がない場合は工夫次第ですが、木に挟む、石に立てかけるなどしてスマートフォンを動かないようにできればOKです。
ISO感度は数値が低いほど写真のノイズが少なく(厳密には少々違いますが、簡単のため)、光に対する感度も下がります。逆にISO感度を上げれば、ノイズが増える代わりに光に対する感度が上がります。
30秒露光の場合、周囲の明るさにもよりますが、ISO200〜400程度に設定するとちょうどいいでしょう。
マニュアルフォーカスは基本的に無限遠にしておきます。オートフォーカスしようとしても暗闇では効きませんし(特にコントラスト方式の場合)、写真を撮るたびにピントがずれるとボケボケの写真になってしまうこともあります。マニュアルで無限遠などに固定しておくのが定石です。
シャッターボタンはぶれを防ぐために、タイマー機能で2秒遅延させて撮影します。イヤフォンの再生ボタンでシャッターを切れる場合はレリーズ代わりに使うのも良いでしょう。
このような設定で撮影したのが次の写真です。ホタルの光跡が見えることには見えますが、全体的に暗くてよく分かりません。今回はRAWでも撮っているので、後から大きく調整することができます。ここでは、adobeの「Lightroom mobile」(Android、iOS版ともに無料使用可)を使ってスマホ上で修正してみました。
また、同じ場所で複数回撮影しておけば、後で合成して多くのホタルを1枚の画像に映すこともできます。ここでは同じ設定で現像した5枚の画像をPC上の「Photoshop Elements」でレイヤーとして読み込み、レイヤーモードを「比較(明)」にすることで明るい部分(ホタルの光)だけを画像に重ねています。
こうした設定や合成手法は、ホタルの撮影以外にもライトペインティングや花火、星空の撮影にも使えるものです。お手持ちのスマートフォンがAndroid 5.0もしくはiOS 8以上であれば、カメラアプリにこのようなマニュアルモードが搭載されている可能性が高いです(iOSの場合は純正カメラアプリにマニュアルモードがないので、サードパーティー製のアプリを入れる必要があります)。
これからの季節、ホタルや花火の撮影に参考にしてみてください。
追記 ホタルの光とスマホの光
ホタルの撮影時に気を付けなければいけないことが1つあります。それはスマートフォンから発する光です。背面のLEDフラッシュを付けないことはもちろんですが、ディスプレイの明るさも最小まで下げるようにしましょう。
ホタルを見に来た他の人に対して光が迷惑になりますし、ホタルも彼らの微弱な光でコミュニケーションをしているので、明るい光はホタルにも悪影響を与えます。
他人やホタルのことを配慮したホタル撮影を心掛けましょう。
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