携帯電話はどのようにつながるのか? 「圏内」になるためのステップ:IIJmio meeting 16(1/3 ページ)
IIJが7月15日に東京でファンミーティング「IIJmio meeting」を開催。エンジニアの佐々木太志氏が「スマートフォンがつながる仕組み」と題して、携帯電話がつながる裏の仕組みを紹介した。ケータイが「圏内」になるために、どんなステップを経ているのだろうか?
インターネットイニシアティブ(IIJ)は7月15日、恒例のファンミーティング「IIJmio meeting 16」を東京で開催。ネットワーク本部 技術企画室の佐々木太志氏が「スマートフォンがつながる仕組み」と題して携帯電話がつながる裏の仕組みを紹介した。
これまでのIIJmio meetingでネットワークの説明をする際は、主にMVNOの設備やその運用について語られてきた。IIJが今後、自前で運用する「HLR/HSS」(加入者情報データベース)についても、前回のIIJmio meetingで紹介されたが、今回取り上げたのは、もっと基地局寄り、スマートフォンの電源が入り、圏内になるまでに行われていることについてだ。
無線でデータを届ける仕組み
携帯電話は、1979年頃登場した自動車電話が、ショルダーホンになって外に持ち出せるようになり、携帯電話に進化する。最初に出た携帯電話はアナログ無線(第1世代)で、1993年にPDC方式の「デジタルmova」からデジタル無線になる(第2世代)。それ以降、全ての無線はデジタル無線だ。
携帯電話は、基地局と携帯電話端末が電波を出して通信しているが、通信には方向があり、「上り(送信時)」と「下り(受信時)」という言い方をする。携帯電話端末からネットワークに進む方向を上り、ネットワークから端末に向かう方向を下りという。電波は上りと下り両方を同時に取り扱わなくてはいけない。上りと下りの通信を重ねることを多重というが、多重の方法には2種類あり、上りと下りで異なる周波数を使う方法を「周波数分割多重(FDD)」、非常に短い時間で上りと下りを切り替える方法を「時分割多重(TDD)」という。
通信が行われるときは、電波(搬送波)に信号を乗せる。デジタルの場合は「0か1」のデジタル信号を電波の波に乗せて運ぶ。このデータが相手の端末に届き、元に戻して0か1が分かると通信が成立する。電波を使って0か1を送るには、その信号を搬送波に乗せて運べるようにするが、これを「変調」という。受信した側は変調と逆の「復調」を行い、0か1を取り出す。
変調方式の代表例が「AM」と「FM」だ。デジタル変調方式の代表的なものには、電波の強さを変えることで0か1を表す「振幅偏移変調(ASK)」がある。アナログでいうAMをデジタル化すると、このASKになる。音に例えると、AMは音量を変えることに相当する。音量が大きく聞こえていれば1、音量が小さくなったら0として送信し、受信側は大きく聞こえたら1、小さかったら0に戻していくと、音から0か1を読み取ることができる、というような方法だ。
「周波数偏移変調(FSK)」は、アナログでいうFMで、電波の周波数を変えることで0か1を送っている。他に、電波の位相を変えることで0か1を表す「位相偏移変調(PSK)」、ASKとPSKを組み合わせた「直角位相振幅変調(QAM)」もある。QAMは電波を効率的に使って0か1を送ることができ、最近ではQAMがよく使われている。
QAMは1bitのデータを振幅偏移変調で変調。もう1bitデータを作り、位相を90度ずらして加算する。受信側では2つの波が重なって、1つの波から1bit、もう1つの波から1bitのデータを取り出すことができ、1回の信号送出で合わせて2bitのデータを取り出せる。現在のデジタル無線の基礎技術となっており、Wi-Fiや光ファイバーのケーブルモデムなどもQAMで変調されている。
ドコモのLTE-Advancedでは、振幅を16段階(音の強さが16段階)に分けて4bit分のデータを送ることができ、それをもう1つ作って重ねることで4×2=8bitのデータを1度で送れるようになっている。LTEでは、この搬送波を複数重ね合わせることで、さらに高速通信を実現している。これがOFDMA(直交周波数分割多重接続)という方法だ。
現在はOFDMAを使って、QAMで作られた波を空間の中に詰め込んで送るという技術が採用されている。OFDMAのOは「Orthogonal(直交)」を表すのだが、佐々木氏によると、5Gでは、non orthogonalな多重、さらにもっと重ねていく変調方式が議論されていて、さらなる電波の有効活用が研究されているという。
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