なぜ今“SIM替え”なのか 新生「BIGLOBEモバイル」の狙いを聞く:MVNOに聞く(1/3 ページ)
MVNOの老舗であるビッグローブが1月にKDDIの子会社となり、ブランドを一新した。シンプルな書体のロゴを採用するとともに、MVNO事業のブランドも「BIGLOBEモバイル」と命名。そんな新生BIGLOBEの戦略を、有泉健社長に聞いた。
早くからMVNOに参入し、“老舗”の1社といえるビッグローブだが、NECから投資ファンドに売却されるなど、事業環境は決して順風満帆とはいえなかった。一方で、いち早くGB単価を下げて料金競争を仕掛けたり、「ほぼスマホ」としてSIMカードと合わせて端末の提供を始めたりと、業界の中では先進的な取り組みも目立つ。カウントフリーを組み合わせた「エンタメフリー・オプション」も、同社の売りの1つだ。
そんなビッグローブが1月にKDDIの子会社となり、ブランドを一新した。シンプルな書体のロゴを採用するとともに、MVNO事業のブランドも「BIGLOBEモバイル」と命名。10月にはKDDIのネットワークを借りた「Aプラン」も開始し、同時期にはテレビCMの放映も始めた。テレビCMでは「SIM替え」を訴求。手持ちの端末そのままでBIGLOBEに移れば、料金が下がることをアピールしている。そんな新生BIGLOBEの戦略を、有泉健社長が語った。
端末を長く使いたいという人が増えてきている
―― なぜ今、SIM替えをあらためてアピールしているのでしょうか。その理由を教えてください。
有泉氏 マーケットの中で、端末を頻繁に変えるというより、長く使いたいという方が増えてきているからです。チップの性能が上がってきたこともあり、その傾向は強くなっています。これは、街頭調査でもネット調査にも出てきています。
SIM替えはマーケットのトレンドに関わらず一定の率でありましたが、マーケット自体が大きくなることで、その数は増えてきます。環境的には、SIMロックの解除が必須になりました。2年で端末の更新を迎える方は、この仕組みに乗れば、端末はそのままでSIMだけを変えることができます。この成長に注目しました。
もっとも、これは以前からあったものですが、お客さまの嗜好(しこう)の変化を捉えながら、あえてもう一度、SIM替えというところから再出発させていただきたいという思いがあり、そこを狙っています。テレビCMでSIM替えと同時にもう1回BIGLOBEのことを認知していただきたい。そこで使えるサービス、商品としてこれまでになかった「エンタメSIM」も出しました。
このようなお客さまのペインとウォンツに応えるものをセットにすることで、新しいBIGLOBEを認知していただきたいというのが、CMの趣旨でもあります。
―― 一方で、KDDI傘下には、既にUQ mobileやJ:COM MOBILEといったMVNOがあります。こことは、どうすみ分けていくのでしょうか。
有泉氏 auの料金体系のレイヤーが1つあり、UQ mobile、J:COM MOBILEの料金体系があり、その下にわれわれがあり、意識としては、3層で嗜好や意向に応えられるようにしていきたいということがあります。BIGLOBEはSIM替えというパターンで、SIMにひも付く形で差別化して、いろいろな嗜好のお客さまを取り入れていきたいですね。結果として、グループ全体でお客さまを増やしていければと考えています。
―― 確かにUQ mobileのようなキャリアだと端末もセットで買う人が多く、SIMカードのみというのはあまりないかもしれません。
有泉氏 この色は、なかったと思います。自分の端末そのままでというのが、これからは強いのではないでしょうか。今回はキャッチ―に(CMで)「シムシム」と連呼することで、お客さまに意識してもらうことを狙っています。
―― とはいえ、まだ自分のスマートフォンでMVNOのSIMカードが使えることを知らない、SIMロック解除の方法が分からないという人もいます。ここはどうフォローしていくのでしょうか。
有泉氏 Webに来ていただければ、SIM替えできるかどうかを明示することはしゃくし定規にやっていますが、もう少しベタに感じていただくために、ご自宅を訪問して、SIM替えから開通までをお手伝いするというサービスをやっています。
もう1つはスマホ教室で、これは全国でやりたいと考えています。弊社社員が現場に出て、お客さまと直に触れ合う。スマホだけでなく、PCやWi-Fiが分からないという方がいたとしても、それらを全て包含する形で、ビッグローブに聞けば済むようにしてきたいですね。そんなことを、10月か11月からスタートさせようと考えています。
ロゴやブランドを刷新した理由
―― CM開始から2週間ほどたちましたが、効果はいかがでしょうか。
有泉氏 SIM替え編と逃亡編があり、最初にSIM替えをハイライトし、逃亡編ではエンタメSIMをハイライトしています。結果、ネットの声やWebへの来訪者もデーリーで上がっています。実際に使っていただけるという意味では、獲得の単位でも勢いが出てきています。
SIM替えだけだと商品に直結させるのは難しいところですが、エンタメSIMのように、お客さまが欲しいと思っていた、通信制限に対するわれわれの回答が受け入れられた結果だと思っています。まずはBIGLOBEを意識していただくところからですが、これから打ち出すのは商品やサービスになっていきます。
―― 同時に、ロゴやブランドも刷新しました。これの理由を教えてください。
有泉氏 テレビCMと同時にコーポレートロゴを変えましたが、これはコーポレートアイデンティティーからすると非常に大きなことです。BIGLOBEを選んでいただいた方の55.2%が、信頼や安心をその理由に挙げていますが、これは揺るぎないベースバリューです。この価値はずっと提供し続けたい。ただ、変えなければいけないところもあります。
信頼品質を培ってきたこと。これは変えてはいけませんが、これからの社会、生活の中で生き残っていくために必要なのは、新しい価値をどれだけ提供できるかです。KDDIにいたときからずっとこの文化で生きてきましたが、差別化は、お客さまの体験を通して得られるものがどれくらいいいものなのかで決まってきます。これは商品もそうですし、コールセンターなどの顧客接点もそうです。
BIGLOBEにも、ベースバリューを失うことなく、新しい価値を重畳してく事業ビジョンがあります。変わるという意思表示をして、社員に意識を持ってもらうとともに、同じメッセージを社外のお客さまにも示し、この事業ビジョンの下でやるという意思表示を示したものがCMになります。もう1つ、11年間培ってきたロゴを刷新することで、BIGLOBEは変わるということを示したかった。
事業の中には固定とモバイル、バリュー、法人がありますが、第1弾としてはモバイルにフォーカスし、BIGLOBEモバイルというサービスブランドも新たに打ち出しました。これまで、BIGLOBEには格安SIM、格安スマホ、BIGLOBE LTE・3Gなどがあり、ブランドがバラバラでした。今回はブランドを変更する中で、モバイルも単一のブランドで展開していくことを決め、LTEも3GもBIGLOBEモバイルとひとくくりにすることにしています。
関連記事
- ビッグローブのMVNOサービスは「BIGLOBEモバイル」に “SIM替え”を訴求
ビッグローブがMVNOサービスを「BIGLOBEモバイル」に統一する。今後、他社と差別化を図るためにどんなサービスを目指していくのか。有泉社長が説明した。 - 「BIGLOBEモバイル」、au回線のサービスを提供 ドコモ回線と同額
ビッグローブが、「BIGLOBEモバイル」でau回線を使ったサービスを提供する。料金はドコモ回線と同じ。対応機種も投入する。 - 「エンタメフリー・オプション」からKDDI傘下、iPhone SEまで――ビッグローブに聞く
「BIGLOBE SIM」を提供するビッグローブは、MVNOのシェア5位で、依然として存在感が高い。2016年11月からは「エンタメフリー・オプション」を提供。KDDIグループになって「au経済圏」拡大の一翼も担う。そんなビッグローブに最新戦略を聞いた。 - BIGLOBE SIM、NECの通信トラフィック制御技術を採用――通信速度を最大2倍に
「BIGLOBE SIM」は、NECの「Traffic Management Solution」を採用。主要機能である「Dynamic TCP Optimization」を活用し、通信集中時の通信速度を最大2倍に高速化した。 - KDDI、ビッグローブの子会社化を発表
KDDIがビッグローブの子会社化を発表。2017年1月末をめどに、総額約800億円で株式を取得して完全子会社化する。それぞれの顧客基盤・事業ノウハウなどを生かして事業拡大を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.