サービスを拡充したが課題も多い「au HOME」/独自性が欲しかったau冬モデル:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
KDDIが7月に開始した「au HOME」を強化し、auひかり以外のユーザーも利用できるようになった。ただし製品バリエーションや料金には課題が残る。冬モデルも10機種がそろうが、auでしか買えないスマートフォンは1機種もない。
KDDIが、家庭用IoTに本腰を入れる。7月に開始した「au HOME」を11月に強化。もともとauひかりのみだった回線の“縛り”をなくし、au IDを持つauユーザーなら誰でも契約できるようにしていく。合わせて、スマートスピーカーの「Google Home」とも連携させ、スマートフォンを持たずに、ハンズフリーでこれらを利用する仕組みを整える。
au HOMEの強化に合わせて、冬モデル4機種を発表。発売済みの「Xperia XZ1」「Galaxy Note8」「AQUOS sense」と合わせ、計7機種(スマートフォンは5機種)で冬商戦を戦っていく。これらの発表を振り返りながら、auの狙いを読み解いていこう。
対応回線を広げ、ユーザーの拡大を狙うau HOME
7月に「誰もが手軽に始められるIoT」(KDDI 執行役員常務 商品・CS統括本部長 山本泰英氏)としてサービスを開始したau HOMEだが、その船出は「静かだった」(同)。家でIoT機器を気軽に利用でき、しかもそれらをアプリで一括管理できるというコンセプトには光るものがあったが、回線がauひかりに限定されていたからだ。厳しい見方をすれば、かつてauがテレビCMなどのコピーにしていた“auの庭”のように、囲い込みを強く想起させるサービスだった。
実際、「auひかりのユーザーに限定されていたため、利用者もそれほど多くなかった」(ホーム・IoT サービス企画部部長 渡辺和幸氏)という。ただ、サービス開始当初のau HOMEは、テストマーケティング的な色合いが濃かった。むしろ、サービスを強化する11月こそが、“真のサービスイン”の日ともいえるだろう。発表当時、KDDIの田中孝司社長は、対応回線の拡大やGoogleアシスタントとの連携を予定していることを語っていたが、それが実現した格好だ。
では、具体的に何が導入され、何ができるようになるのか。もともと、au HOMEはauひかりを引くユーザーにレンタルしていたホームゲートウェイに、Z-WAVEと呼ばれるIoT向けの無線通信規格に対応したドングルを挿すことで、利用できていた。このドングルがauひかり用のホームゲートウェイにしか対応していなかったため、自動的に回線がauひかりに限定されてしまっていたというわけだ。
対応回線を広げるにあたり、この必須機器を見直した。11月からは「無線通信アダプタ(A)」と呼ばれる、立方体形状の小型製品を導入。これによって、IoT機器とZ-WAVEでやりとりしたデータをWi-Fiに変換し、一般的なWi-Fiルーターでもau HOMEが利用可能になる。Z-WAVE対応のIoT機器とWi-Fiルーターをつなぐ、中継器ともいえる存在だ。
1人暮らしをしている若年層など、固定回線を引いていない家庭にも焦点を当てた。ここで利用するのが、LTE搭載のNASとして4月に発売された「Qua Station」だ。もともと、Qua StationはLTEの他に、通信機能としてZ-WAVEを搭載していた。これを生かすことで、au HOMEのゲートウェイにするというわけだ。Qua Stationを利用する場合、無線通信アダプタ(A)の代わりに、電波の到達範囲を広げる「レピータ 01」が届けられる。
回線の拡大によって、対象はauの契約がある全ユーザーに広がった。auひかりだけだと約426万戸だった母集団が、ケータイの4966万へと、10倍以上に広がる。さらに今後は、UQコミュケーションズやビッグローブ、ジュピターテレコムといった、傘下でMVNOを運営する会社にもau HOMEを提供する可能性があるといい、渡辺氏は次のように語る。
「auは全体の30%程度。残りの7割に使ってもらうには、au HOMEのプラットフォームを使ってもらって『ビッグローブのホームIoTサービス』のような形で提供する方向性はありだと思っている」
こうした他の企業が簡単にau HOMEを提供できるよう、KDDIは「with HOME」と呼ばれるプログラムを開始。傘下のビッグローブやジュピターテレコム以外では、不動産会社やディベロッパーなど、住宅に関する企業、団体が多く賛意を示している。こうした企業がau HOMEを採用していけば、家を買う/借りる人に、au HOMEを訴求するチャンスも生まれそうだ。
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