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「フルMVNO」と「ライトMVNO」の違いMVNOの深イイ話(2/3 ページ)

2018年春の「フルMVNO」のサービス開始に向けて準備を進めているIIJ。ではこの「フルMVNO」とはどんなMVNOなのでしょうか。既存の「ライトMVNO」とは何が違うのでしょうか。

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フルMVNOのメリットとデメリット

 まさに図3で説明したように、ホストMNO以外のMNOとも事業者間接続を独自に持てることが、フルMVNOのメリットの1つです。これにより、フルMVNOはさまざまなローミングサービスを提供可能になります。海外で安価なローミングを提供したり、セキュリティを付加したローミングサービスを提供したりできます。逆に、国内で海外旅行者がSIMを差し替えることなく安価にインターネットを楽しめるようなサービスも提供可能です。

 もちろん何でもできるわけではありません。相手の海外事業者との合意が必要ではありますが、そもそも海外事業者と独自に協議することすらできないライトMVNOに比べ、高いサービス企画の自由度を持つことがフルMVNOの特徴となります。

 さらに踏み込めば、独自のMNCにより、1つのホストMNOに縛られず多数のMNOと接続することで、国境をまたぐMVNOとなることも可能です。つまり、(比較的に)高価なローミングではなく、複数の国においてあたかもその現地のMVNOであるかのような料金でサービスを提供できるMVNOも既に世界には存在していて、フルMVNOであればそういったサービスも可能となります。

 もう1つのフルMVNOのメリットはSIMカードです。eSIMのような新しく便利なSIMカードを、フルMVNOは独自に発行することができます。SIMカードにはその発行者のMNCを登録する必要があるのですが、ライトMVNOは独自のMNCを持たないのでSIMカードを発行できず、フルMVNOにはその制限がない、ということです。

 ホストMNOが機能提供している範囲の中であれば、例えば販売店の店頭で独自にSIMカードを発行する、といったことはライトMVNOでも可能ですが、ホストMNOが提供していないようなSIMカードであっても自由に提供できるというのがフルMVNOのメリットとなります。

 次にフルMVNOのデメリットも見ていきましょう。何よりのデメリットはコストです。ライトMVNOに比べ格段に多くの設備を保有・運用する必要がありますから、設備投資や人的資源への投資を含め、ライトMVNOより多くのコストが必要となります。

 格安SIMのような単一の市場での提供だけを考えると、コスト的にはライトMVNOの方が有利なこともあるでしょう。フルMVNOには投資額に見合った、より広いビジネス領域をカバーするための戦略が必要であり、現に海外のフルMVNOにはそのような事業者が多いです。

 また、厳密にはデメリットというわけではありませんが、フルMVNOといえども、ホストMNOの設備の影響を大なり小なり受けることは避けられません。典型的なフルMVNOは、無線アクセス以外の全てのコアネットワークを自ら保有して運用する仮定の上にありますが、実際には完全なフルMVNOというのは世界でも例がほとんどないように思われます。そのため、フルMVNOもそのホストMNOと協調して、スムーズに新サービスを開発していくことが必須となるという点では、ライトMVNOと本質的には変わりません。

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