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緊急インタビュー MAYA SYSTEMはなぜFREETELの端末事業を引き継いだのか(1/3 ページ)

FREETELブランドの新機種が約1年ぶりに登場。現在の運営元であるMAYA SYSTEMは、なぜプラスワン・マーケティングから端末事業を引き継いだのか。競合がひしめくSIMフリー市場でどのように存在感を出していくのか。

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 FREETELが、約1年ぶりに新たな端末を発売する。ただし、同ブランドを運営するのは、プラスワン・マーケティング(以下、POM)ではなく、クラウドWi-Fiルーターなどを手掛けるMAYA SYSTEMという会社だ。既報の通り、2017年にFREETELは経営不振からMVNO部門を切り離し、楽天に売却。残った端末部門で経営を再建するはずだったが、資金繰りのめどが立たず、12月には民事再生法の申請を行っている。この救済をしたのが、MAYA SYSTEMだ。

 新たに発売するのは、ミドルレンジモデルの「REI 2 Dual」。POM時代に販売していたミドルレンジモデル「REI」の後継機にあたり、デュアルカメラを採用しているのが大きな特徴だ。チップセットも、FREETELの主要モデルとしては初となるSnapdragonを採用している。REI 2 Dualは、POM時代に企画、開発が進んでいた端末で、MAYA SYSTEMにはFREETELブランドとともに引き継がれているという。合わせて、ローエンドモデルの「Priori 5」も発売される。MAYA SYSTEMは、今後、FREETELブランドで、独自端末の企画を進めていく方針だ。

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FREETELの端末事業を引き継いだMAYA SYSTEM

 とはいえ、SIMフリー市場は今や激戦区と呼べる状況だ。もともとSIMロックフリースマートフォンではシェア上位争いをしていたFREETELだが、経営が傾いて以降、新端末の発表がなく、販売台数も大きく落としている。なぜ、MAYA SYSTEMはあえて火中の栗を拾いにいったのか。新生FREETELとして、同社がどのような戦略を考えているのかを聞いた。インタビューには、MAYA SYSTEMの代表取締役 長谷川智之氏、代表取締役 吉田利一氏、ECマーケティング部部長 山崎正志氏が答えた。

FREETELブランドを引き継いだ経緯

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MAYA SYSTEMの吉田利一氏

―― POMが民事再生法適用申請を出した際に、MAYA SYSTEMの名前が唐突に出てきた印象があります。まずは、FREETELブランドを引き継いだ経緯からお聞かせください。

吉田氏 MAYA SYSTEMは、一昨年(2016年)ぐらい前から、クラウドSIMを使った海外Wi-Fiルーターの「jetfi」を展開していました。その上で、昨年(2017年)の初めごろから、新端末を開発したいと考えていました。eSIMを搭載した端末を開発するということで、これは新聞でも記事になっています。その際に、私がPOMさんに乗り込んで、「一緒に開発しませんか」と提案していました。POMさんとは、その頃からのお付き合いになり、新端末も議論をしながら進めたいというお話になっていました。

 そこから彼らとミーティングを続けていましたが、そうこうするうちに、POMさんの経営が傾いているという情報が入ってきました。いち早く情報が入ってきたのは、弊社の母体であるMAYA STAFFINGが、POMのFREETELショップに人を出していたからです。その話を受け、長谷川が投資も含めて話をしようとしていた矢先に、ああいった事態になりました。ですから、唐突にFREETELを引き継いだわけではありません。

長谷川氏 楽天にMVNO事業を譲渡した際には、POMさんも端末製造だけで再出発しようと思っていました。ただ、やはり資金繰りが厳しいということで、12月4日に民事再生を申し立てています。その前からデューデリジェンス(投資先のリスク調査)のため、中に入って調査はしていましたが、急きょ方向転換して民事再生するということになったため、スポンサー候補として名乗りを上げました。実際に、裁判所からの決定が下されたのが、今年(2018年)の1月9日のことになります。

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MAYA SYSTEMの長谷川智之氏

―― もともとつながりはあった一方で、急転直下で状況が変わり、すぐに決断したということですね。

長谷川氏 (POMは)極めてギリギリの状況で、年が越せないかもしれないということだったので、われわれもかなり焦りはしました。ただ、優秀な従業員たちは守らなければいけないということもあったので、われわれも一緒になって決断しました。

―― スムーズに決断できたのは、なぜでしょうか。

長谷川氏 必ずしもスムーズだったというわけでもありません。海外の部分はわれわれにもなかなか見えてこないところがあり、いったん国内事業のみを引き継ぐことにしました。しかしながら、話をしていくと実はドバイの拠点に関してはニーズがあるということで、そちらも私どもが承継しています。

―― それでもかなりの短期間で決断に至っています。

長谷川氏 MAYA SYSTEMという会社は、意思決定のスピードが速く、ベンチャー気質もあります。端末事業でも新しい分野に早い決断をして進むことを心掛けていました。特にeSIMのような新しい技術については、どこよりも早く手掛けたいと思っています。

サポートは3月から強化していく

―― 今回は、どのような端末を発売するのでしょうか。POMと共同開発していたeSIMは搭載されているのでしょうか。

吉田氏 今回出すのはREI 2 Dualで、これは昨年の春に企画し、夏に発売しようとしていたものです。遅れたのは、カメラアプリなどの設計、開発をODMから自社に切り替え、完成度を高めようとした結果で、当初は12月に出そうとしていました。その後はご存知のようにPOMが資金難に陥り、部材調達や量産が遅れ、今回の発表に至っています。eSIM端末ではなく、普通のSIMロックフリー端末になります。ただ、eSIMではありませんが、非常に高性能でいい端末だと思っています。他にも、Priori 5があり、これも去年(POMが)出そうとしていたものを引き継いで、そのまま出す形になります。

 いずれも、本当はもっと売れるのではないかという気持ちはありますが、まずは小ロットから始める予定です。エンドユーザーまで(POMの経営破綻が)伝わっているかどうかは分かりませんが、少なくとも販売店の一部が、FREETELブランドで大丈夫なのかと気にされているからです。サポートはちゃんとしているのかと、不安になるところはあると思います。

 サポート自体は、1月15日から再開してはいますが、いったん解散していることもあり、充実しているとまではいえません。ただし、MAYA STAFFINGはもともとBPOでコールセンターを請け負っている会社なので、そこに委託する形で3月から、(より強化したサポートを)提供していこうとしています。

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