5G商用化に向けた現状と課題は? ドコモの5G推進室 室長 中村氏が語る:Mobile World Congress 2018(2/2 ページ)
いよいよ2019年に商用サービスが始まる「5G」。その中で先導して研究開発をしているのがドコモだ。同社が取り組んでいる5Gの現状と展望を聞いた。
コンシューマーが享受する5Gのメリットとは
―― MWC 2018は、例年にも増して、ドコモのブースが賑わっていますね。
中村氏 今回はNTTグループとの合同出展ということもあり、会場が広かったこともありますが、5Gに関する技術的なデモも増やしました。とはいえ、ここに持ってきているものは、ほんの一部です。昨年11月に東京で開催した「R&D オープンハウス」では、もっといろいろなユースケースを提案させていただきました。
―― 今回出展した技術やデモンストレーションの中で、特に来場者に注目を集めたものは?
中村氏 お客さんの反響という意味では、やはりロボット(遠隔操作でダンスや書道を披露)と、フジテレビさんと共同で開発しているジオスタ(ジオラマスタジアム)ですね。
―― スマホやタブレットを使うユーザーが直接享受できる5Gのメリットはありますか?
中村氏 まさに今回出展しているジオスタはB2Cのアプリだと思っていますが、スポーツは重要なトピックですね。われわれだけでなく、いろいろなところで多視点映像が1つのトレンドになっていますが、デバイスが進化することで、もっと高精細な映像を送りたくなり、そのためには5Gが必要になってきます。
あらゆるものが組み合わさって、進化がスピードアップしているように感じます。今回のジオスタは、市販のタブレットで見られるようにしていますが、もっと高性能なARグラスとかはできたら、さらに臨場感ある映像が楽しめるでしょうし、楽しみ方はもっと広がるでしょう。バンダイナムコさんとは、5Gを活用し「ソードアート・オンライン」をVRで楽しむという試みも進めていますが、ゲームもいろいろな可能性を秘めていると思います。
―― 5Gの導入を目前にして、すでに「6G」への準備が始まっていたりするのでしょうか?
中村氏 LTEのときも、それがLTE-Advancedへと発展し、さらに、LTE-Advanced Proへと進化を続けました。いわゆる「5.x G」というのは、やっていないかといけないし、既に始まっています。さすがに「6G」という段階には入っていませんが、5Gの進化形という意味では、ベンダーさんと話をして、一部実験を始めています。技術的な先進性は突き詰めていきたいです。
―― 3Gから4Gへの移行と異なり、5Gは社会に変化をもたらす大きな進化のように感じますか?
中村氏 単純な高速・大容量だけではなく、あらゆる業界のユースケースを考えて、5Gの準備を進めています。以前とは比べものにならないくらい、いろいろなことに使われることになると思います。
―― 私たちの生活がどう変わるのでしょうか? 最後に、読者へのメッセージをお願いします
中村氏 普通の生活で楽しいことがもっと楽しく、もっとワクワクするようなことが、どんどん出てくる環境になると思います。それは、われわれの努力だけでなく、いろいろなパートナーと協業することで実現します。エンターテインメント系も、どんどんすごいものになるはずです。また、5Gによって、さまざまな社会的な問題も解決させたいです。地方にお住いの方や、お年を召した方々の苦労をできるだけ軽減したり、取り除く手助けができたりすればとも考えております。5Gによって、より楽しく、より幸せな社会を実現したいです。もちろん、そのためのビジネスモデルも考えなくてはなりません。
関連記事
- 「5G」でクルマ、コミュニケーション、スポーツ観戦が変わる――ドコモの最先端技術イベント
5Gのライフスタイルを体験できるイベントをドコモが開催。5Gの特性を生かすことで、クルマ、コミュニケーション、スポーツ観戦が変わる。離れた場所で音楽セッションをしたり、スムーズにロボットを操作したりもできる。 - 「5G」でクルマ社会はどう変わる? 3キャリアに聞く
次世代通信規格の「5G」を生かした新しいビジネスモデルとして期待されている「コネクテッドカー」や「自動運転」。5Gでクルマ社会はどんな変化を遂げるのだろうか。ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社に聞いた。 - docomo withの反響から、AIの取り組み、5Gの料金まで――ドコモ吉澤和弘社長に聞く
ドコモの吉澤氏が社長に就任してから1年がたった。2016年〜2017年は端末購入のルールが変わり、MVNOも勢力を伸ばしている。この1年と直近の状況について、吉澤氏に話を聞いた。 - “5G時代”にドコモが果たす役割とは――吉澤和弘社長に聞く
MWCに日本の通信キャリアとして唯一、毎年出展しているNTTドコモ。今回、MWCの会場で吉澤和弘社長に単独インタビューをする機会を得た。5Gを中心に業界全体のパラダイムシフトが近づく中で、ドコモはどのような姿勢で臨むのか。 - 10Gbpsの高速通信にも実現のめどが――ドコモが5Gの最新技術やサービス像を披露
NTTドコモは11月17日から18日にかけて、同社の最新技術などを展示する「ドコモR&Dオープンハウス」を開催。同イベントの開催に先駆けて、11月16日にはドコモは次世代の通信技術とされる「5G」に関する取り組みを報道陣に公開した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.