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公正取引委員会が、値下げ競争の起きない「接続料」にメス――もはや「接続料」は役目を終えたのではないか石川温のスマホ業界新聞

公正取引委員会で行われている「携帯電話に関する意見交換会」。その2回目の会合では「MVNOへの接続料」が大きなテーマとなったが、回線の卸提供を受けるMVNOが大半を占める中、接続料そのものの見直しが必要なタイミングに来ているのかもしれない。

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「石川温のスマホ業界新聞」

 5月15日、公正取引委員会にて「第2回携帯電話に関する意見交換会」が開催された。テーマは「MVNOへの接続料」だった。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2018年5月19日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。


 接続料に関してはこれまでも総務省で大学教授の先生方が頭を突き合わせて喧々諤々の議論がされてきたが、結局のところ「誰もが納得する算定方式」というのが出せていない状況だ。

 意見交換会では「3社の接続料がなぜ競争して値下げの方向にいかないのか」といった問題点が焦点となっていた。冷房の効かない蒸し暑い会議室での3時間の議論を傍聴していたが、そこでふと「そもそも、MVNO に対しての接続料はもはや意味のないものではないか」という根本的な疑問をいだいてしまった。

 今回の意見交換会ではIIJ、ケイ・オプティコム、日本通信の3社がプレゼンを行ったのだが、接続料を使ってサービスを提供しているのは日本通信のみで、IIJ、ケイ・オプティコムは卸によるサービス提供であることが明らかになった。

 日本通信は「接続させろ」とNTTドコモと戦ってきた経緯もあることから、接続料にこだわっているのだが、他社に関しては、条件がゆるい卸での契約となっている模様だ。しかも、現状、接続と卸の料金に違いはないのだという。

 おそらくNTTドコモとしては、卸の料金設定はあるものの、日本通信からのツッコミを恐れて、あえて接続と同じ料金設定にしているのではないか。

 接続料の算定方式としては、原価コストに適正な利潤を載せるとされている。ただ、このコストの算出方法や適正な利潤というのを弾き出すのが難しく、誰もが納得する数字になっていないのが現状だ。さらに接続料を算定するのにも、数年単位でかかるため、MVNOからは「経費が確定できず、経営が安定しない」と不満の声が上がっている。

 それであれば、もう、大学教授が寄ってたかって考えても、まともな算定方式を出すことができない接続料なんてやめてしまえばいいのではないか。

 そもそも、「適正な利潤」を載せるから、いつまで経っても接続料は高止まりしているのだ。

 接続料をやめてしまい、卸の基本的なメニューだけにして、あとは交渉次第で、MVNOへの料金を決めればいいのではないか。

 大量に帯域を調達するMVNOはボリュームディスカウントによって割安で回線を借りれるようになれば、結果としてMVNOが負担するコストは下がる。

 接続料という厄介な計算式があるから、3社で競争が起きないわけで、卸による自由な料金設定であれば、3社で大型案件の取り合いが起きるのではないか。

 携帯電話の法人市場においては「損して得取れ」ではないが、各社とも割引しまくって、回線を獲得するというのも珍しくない。

 意見交換会では「接続料をどうすれば高止まりの状況を変えられるか」という議論が進むが、いっそ「接続料の存在を根本から見直す」という考えにはならないものだろうか。

© DWANGO Co., Ltd.

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