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インタビュー

スマホアクセサリーを扱うFOXが、なぜ「BlackBerry」の販売を決めたのか(2/2 ページ)

BlackBerryは日本でも新機種が定期的に投入されている。BlackBerryを販売するFOXは、スマートフォンのアクセサリーやIoT関連製品などを販売している。なぜ、スマートフォンのBlackBerryを取り扱うことを決めたのか。

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「柔軟な対応」でKDDIのKEY2取り扱いが決定

―― そんな中、auがKEY2の販売を始めました。これはかなり思い切ったなと驚いたのですが、なぜauだったのでしょうか。

FOX
KDDIは周辺機器という位置付けで、BlackBerry KEY2を扱っている。SIMロックはかかっていない

五十畑氏 通信キャリアにBlackBerryを販売したいという思いは、かなり強くありました。もちろん、キャリアがSIMフリー機を扱うのは、時代の流れの中でかなり先を行くことだとは思っています。

 ただ、アクセサリーも最初はクリアケースだけだったところに、ブランドのものが入ってきて自由に選べるようになってきました。アクセサリーを取り換えるのとはレイヤーが違う話ですが、端末も、決められたものの中からしか選べないという時代ではなくなってくると思います。実際、SIMフリーが出てきて、今日は仕事だからこの端末、遊びに出るときはこの端末と自由に自分でSIMカードを移し替えることができるようになってきています。

 KDDIさんはとても柔軟で、大きな心で対応していただけました。アクセサリー扱いですが、ちゃんと分割払いで買うこともできます。

―― KEY2はauの周波数やau VoLTEもきちんとサポートしています。過去のモデルも含め、こういったローカライズはどうしているのでしょうか。

五十畑氏 (過去の)BlackBerryの日本対応は、後回しになったり、最終的にやらなかったりしたこともあったので、日本に合う形にしたいと考えていました。auのバンドに対応したり、日本語入力もオムロンのアプリケーションを入れたりしています。辞書が弱かったので、そこは強化しています。

 特に大変だったのが周波数対応でした。海外のものを持ってきて技適を通すだけでなく、日本専用のモデルナンバーを付けたのはハードルが高かったですね。さらに、KDDIさんの場合、IOT(ネットワークとの接続性検証)を通す必要もあります。ここがTCLさんとしても大変で、総勢20人ぐらいが来日されて対応してもらうことができました。

―― 今までで一番売れたのはどのモデルでしょうか。

五十畑氏 KEY2ですね。KEYoneも売れましたが、それを超えています。やはりauさんに扱っていただけたのが、非常に大きかったです。auショップだけで2500店舗ですからね。見られる確率が大幅に上がると、「なんだ、あれ?」となるんだと思います。auの直営店に関しては、店頭に並べていただいています。あんなに大手なのに、遊び心を持って、コアなターゲットに向けているのは面白いですね。ただ「ぶら下げています」というのではなく、お互いが同じ志を持って、新しいSIMフリー端末をアクセサリーのように選べる形で入れていただけました。

 これはやはり、ある程度ターゲッティングがしっかりできていたからだと思います。特化したもので、お互いの利になりそうなものをしっかり提案する。利益だけを考えたらマスになりそうなものを持っていく方がいいのですが、狭い世界のものを扱うところもないと面白くないですからね。

B2CマーケットでBlackBerryのブランド力を上げたい

―― とはいえ、何十万台売れるというものでもないと思います。グローバルメーカーの端末を、日本向けに小ロットで販売するのは、TCLにとってどんなメリットがあるのでしょうか。

五十畑氏 彼らが期待しているのは、B2CのマーケットでBlackBerryのブランドをどう上げていけるかというところです。それをやるには、日本向けのカスタマイズが重要という話はこんこんとしています。今は韓国のチームがアジアの統括をしているのですが、そこが日本に対する理解があったのもよかったと思っています。

 海外系の交渉は長くやってきて、いい商品しか契約していないという自負もあります。弊社はどちらかというとマーケティング先行の会社で、返品してもいいから取りあえず買ってくださいということはやっていません。今も営業は2人しかいないですからね。ブランディングしたい、マーケティングしたいというメーカーさんには、その誠意をこんこんと説いています。

―― SIMフリーといえばMVNOですが、こちらはいかがでしょうか。

五十畑氏 PrivのときにU-NEXTさんがやっています。今回はお声がけもあったのですが、KDDIさんがやることは直前まで言えなかったので、そこにお応えできなかったのは本当に申し訳なかったです。スタートのときからビックカメラさんがずっと担いでくれていたので、そういったところに優先的に納めたいという考えもあります。

―― ベルリンで発表されたKEY2 LEは期待していいのでしょうか。

五十畑氏 今はお答えできないというのが正直なところですが、前向きに検討はしています。ただ、(ベースモデルが)Band 18(auの使う800MHz帯のLTE)に対応していないので、なかなかハードルも高いという認識です。仮に出せるとしても、あくまでラインアップの1つとして、Band 18に非対応なものを持ち込む形になると思います。

 僕らとしてはお客さまに合ったものを提供したいという思いがあるので、どこまでやっていただけるのかは交渉していくつもりです。それ以外でも、今後のラインアップを見る限り、かなり面白いものがそろっていると感じているので、ぜひご期待ください。

FOX
「BlackBerry KEY2 LE」。KEY2よりスペックは抑えているが、カラフルな色も用意した(写真はレッド系のAtomic)

取材を終えて:FOXがしっかりとブランドを育ててきた

 ほぼ全てのスマートフォンが全面タッチパネルになり、見た目の大きな違いがなくなりつつある中、キーボードを売りにするBlackBerryは貴重な存在。世代やどんなデバイスに普段から親しんでいるかにもよるが、長文を打つのであればやはり物理的なキーボードがあった方がいいという向きもあるはずだ。

 最新モデルまでしっかり日本で展開できているのは、FOXがしっかりブランドを育ててきたからという側面があることが分かった。かつての北米市場のように、BlackBerryがマジョリティーになる可能性は低いだろうが、ニッチを狙う端末として、ぜひ今後も継続的に販売を続けてほしいと感じた。

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