楽天のネットワークは「携帯業界のアポロ計画」 三木谷社長らが語る:MWC19 Barcelona(1/3 ページ)
楽天の三木谷浩史社長が「MWC19 Barcelona」において基調講演「The Next Generation」に登壇。MNO(キャリア)として活用するネットワークの優位性を説明。地下でも利用可能にする他、災害時の対策も行うという。
楽天の三木谷浩史社長が「MWC19 Barcelona」において基調講演「The Next Generation」に登壇。楽天モバイルネットワークがMNO(キャリア)として2019年10月にサービスを開始する際に活用する、ネットワークシステムについて紹介した。
三木谷氏は、楽天のネットワークが「エンドツーエンドで完全にクラウド化された、従来型とは異なる革新的なネットワークだ」と紹介。汎用(はんよう)ハードウェアを利用するため、従来型ネットワークよりはるかに低コストで構築でき、新しいサービス――例えばAIや翻訳サービス、IoTなどをクラウドで簡単に展開できる柔軟性があるとアピールした。
基調講演終了後は、MWC会場の基地局設備などを展示した楽天ブース内で、日本の報道関係者からの質問に答えた。三木谷氏の質疑応答の終了後は、引き続き、楽天モバイルネットワークの山田善久社長と、同社CTOのタレック・アミン氏が質問に応えた。
楽天の参入で海外でも「衝撃が走った」
―― 昨年(2018年)、携帯電話事業への参入を表明したときは驚きがあった。今年(2019年)に入って各国企業からのリアクションに変化はあったか。
三木谷氏 衝撃が走ったというのが正しい表現だと思う。みなさん半信半疑で、これが動くのかと。(ネットワークの完全クラウド化は)誰もやったことがないような話なので、携帯電話業界のアポロ計画といいましょうか。そのような驚きとともに、自分たちの業界に何を意味するのかを考えたのだと思います。すごい可能性があるという事業者の方もいれば、われわれの今までやってきたビジネスはどうなってしまうんだろうかと考える方も多かったと思う。
いわゆる携帯事業者の方々からは、国際的に楽天のプラットフォームは使えるのかという問い合わせが非常に多く来ました。正直な話、世界のかなり大きな携帯事業者の社長とも食事をしたりミーティングをしたりしました。逆に勉強させてほしいとか、一緒にやらせてほしいという声が非常に多かった。
―― 楽天のシステムを海外のキャリアに売っていく計画はあるか。
三木谷氏 一番いいアナロジー(類似)は、Amazonさんがもともと社内用に作ったクラウドシステムをAmazon Warehouse System(AWS)として外部に販売して、非常に大きなビジネスになったこと。(楽天は)誰もやったことがないネットワークを作って、正常に動くだけでなく、さまざまな意味のアドバンテージがあり、技術的にそんなに簡単じゃないところもクリアできた。
そうすると、日本だけでやっているのはもったいないと思っている。ただ、まず日本でしっかり立ち上げることが最優先。海外展開については夏以降に検討していくことになると思う。
―― 基地局設置は順調とは聞いているが、進捗(しんちょく)状況は?
三木谷氏 例えばサイト(場所)を決めるとか、OKをもらうとか、実際に建築するとか、いくつかのフェーズがある。KPI(最終的な目標を達成するための過程を計測・評価する指標)でいろんな測り方があるけれど、全般的に順調に進んでいます。
iPhoneも扱いたい
―― 「楽天新春カンファレンス2019」の講演で、ティム・クックと話したというエピソードを披露していたが、ティム・クックの反応はどうだったか。
三木谷氏 ティムは寡黙な人なので(笑)。最初に話したのは去年の米国サンバレーであったカンファレンスで、ダックポンドという池の周りにいろんな人が集まっているときに、こんなことをやろうと思っていると言ったら、「うーん……インタレスティング(興味深い)」と。
楽天のクラウドプラットフォームが実現すると、今まで携帯端末サイドでしかできなかったようなことがサーバサイドでできるようになる。抜本的なコスト削減などがネットワークレイヤーでできるようになる。そうすると、端末メーカーとしては、いろんな意味合いが変わってくる。非常に注目していただいていて、その後に会ったときには「本当にちゃんと進んでいるんだね」ということで、安心していただけたというか、そんな感じだったと思います。
―― 端末(iPhone)調達ができたりするのか。
三木谷氏 端末と通信の分離という話が出ていますけれど、われわれとしては当然、扱えればいいなと思っています。
「楽天モバイル」は統合する方向
―― 低コストを売りにしているが、ユーザーにはどう跳ね返るか。料金体系のイメージを教えてほしい。
三木谷氏 できるだけ安い料金体系で、なおかつ、できるだけシンプルにしたい。また、最後の最後まで検討することになるが、囲い込むというよりは、離れるときも自由度を高く、言い方は悪いかもしれませんが、「携帯電話の民主化」という方針で行きたい。具体的な値段設定は、競合さんもあるので言いにくいが、非常にシンプル。何とかバンドルとか何とか割ではなく、シンプルな価格構成にしてユーザーに分かりやすくしようと思っています。
―― クラウドネイティブなネットワークだと、低コスト以外にユーザーに対してどのようなメリットがあるのか。
三木谷氏 5Gになると大量の容量が行き交うようになるが、コア部分の十分な通信スピードを確保できます。また、ネットワークの中に、IoTを中心とした新しいサービスを埋め込んでいくようなことも柔軟にできます。ボイス(音声通話)についても、基本的にはデジタルでやっていましたので、例えばリアルタイムの翻訳サービスや通訳サービスといった、さまざまな新しいサービスを簡単にプラグインできるようになってくると思います。サインアップや、あるいは海外に行ったときのローミングとかも、全てソフトウェアで制御でき、非常に柔軟にできます。
―― MVNOの楽天モバイルは、どのように統合していくのか。
三木谷氏 今、ちょうど練っているところ。近いうちに発表があると思います。当然、統合していく方向です。技術的にどうやってやるのかということについては、近いうちに発表させてもらいます。
―― 高速、低遅延という5Gの特性を一番生かせる楽天のサービスは何だと考えているか。
三木谷氏 コンテンツやサービスが、どれだけユーザーに近いかということが一番重要になる。われわれの新しいアーキテクチャには4000のエッジがあるので、非常に向いていると思っている。そこでわれわれがサービスを提供するというパターンもありますし、レイテンシの低さをベースにキャッシングサービスや本人認証サービスなど、さまざまなことができるエコシステムのプラットフォームを作っていきたいと思います。
例えば、今はFeliCaを使った決済がかなり大きいですが、QRコード決済だと時間がかかってしまうデメリットがある。そういうものも5Gだと変わってくると思います。レイテンシがあったがゆえにできなかったサービスができるようになる。ドローンのサービスも、どうしても有視界飛行でいく必要があるところは、人間が離れたところで操作するようなこともできると思っています。4Gだと、どうしてもレイテンシがあって遅れてしまいますが、5Gではほぼリアルタイムで、実際に人間がドローンを操作することも可能になると思います。
一方で、楽天モバイルの固定回線のビジネスは、基本的にはNTTの光回線を再販するというビジネスモデルしかありませんでしたが、それに加えてFixed Wireless Access(FWA)のサービスを展開できるようになるでしょう。光を持っていないというデメリットを逆にメリットに変えていきたいと思っています。
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