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中古端末の「SIMロック解除」 なぜauとソフトバンクは「来店」のみ?ふぉーんなハナシ

大手キャリアが中古端末や他者から譲り受けた端末の「SIMロック解除」に応じ始めました。しかし、Webでの手続きが可能なのはNTTドコモだけ。auとソフトバンク/Y!mobileは来店手続きのみ受け付けています。なぜ、このような違いが出るのでしょうか……?

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 2017年に初めて策定された、総務省の「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」。2018年8月28日に行われた改正(PDF形式)では、中古端末を含む全ての販売端末のSIMロック解除に応じることを事実上義務付ける旨が盛り込まれました。

 SIMロック解除に関する指針の改正は「2019年9月」、つまり今日(9月1日)から適用されるわけですが、同日にau(KDDIと沖縄セルラー電話)が対応したことから、大手キャリア(MNO)における指針改正への対応は完了したことになります。

 一見すると、各MNO共に同様のルールに見えます。しかし1点、NTTドコモとそれ以外のMNOで対応が異なるポイントがあります。WebでのSIMロック解除受け付けです。

(記事中の料金は全て税別です)

ドコモはWebでもOK auとソフトバンク/Y!mobileは店頭のみ

 ドコモは、他者から譲渡を受けた端末や中古端末(以下まとめて「解約済み端末」)について、契約者向けWebサイト「My docomo」でもSIMロック解除を受け付けています

 ドコモショップに出向いて手続きすると事務手数料が3000円かかりますが、My docomoから手続きをすると無料です(※1)。MVNOサービス(いわゆる「格安SIM」)を含め、ドコモと直接契約していない人でも、「dアカウント」を登録すればMy docomoから手続きできます

※1 手元にドコモ以外が発行するSIMカードがないと解除操作が行えません。ただし、iPhoneやiPadはいったん端末を初期化してアクティベーションをやり直せば、ドコモ以外が発行するSIMカードがなくてもSIMロック解除を完了できます

ドコモ
ドコモでは解約済み(あるいは未契約)ユーザーでもdアカウントさえ取得すればWebからSIMロック解除手続きができる。Webでは手続きできない一部端末については、来店でのロック解除手数料を無料としている

 しかし、auやソフトバンク/Y!mobile(以下まとめて「ソフトバンク」)では解約済み端末のSIMロック解除手続きをキャリアショップの店頭でのみ受け付けています。店頭での手続きなので、事務手数料が3000円かかります

ソフトバンク
ソフトバンクでは解約済み端末のSIMロック解除をソフトバンクショップでしか行えない
手数料は3000円
店頭での手続きは手数料が3000円かかる。これはY!mobileブランドも同様

なぜ対応に差が出た?

 解約済み端末のSIMロック解除を希望する人の立場からすると、店頭に出向く必要がなく、出向かなければ手数料もかからないドコモは“ユーザーフレンドリー”で、店頭に必ず出向く必要があって、手数料も必要なauとソフトバンクは“ユーザー軽視”であるように思えます。

 なぜ、このような対応の違いが出たのでしょうか。

 実は、8月29日に総務省が開催した「モバイル市場の競争環境に関する研究会」と「ICTサービス安心・安全研究会 消費者保護ルールの検証に関するワーキンググループ」の合同会合において、なぜこのような“差”が生じたのか示唆するやりとりがありました。

北俊一構成員 SIMロック(解除の手続き)について、参考資料を見るとオンラインでの対応状況が表になっています(※2)。

 中古端末について、ドコモはオンラインでも(解除を)受け付ける一方で、KDDI(au)とソフトバンクはオンラインでは解除を受け付けないことになっています。KDDIとソフトバンクにはなぜ(オンラインでの)解除に応じないのか、ドコモには逆になぜ(オンラインでの)解除に応じているのかお尋ねしたいです。

※2 資料は総務省のWebサイトで公開される予定ですが、9月1日現在では未掲載となっています

KDDI担当者 KDDIでは契約者(本人)の場合は店舗でもオンラインでも受け付けが可能です。9月1日から予定している契約者以外が中古端末のSIMロック解除する場合については、店舗でどんな方が来られるのか見ながら(確認した上で)解除するという運用としています。

 今のところ、オンラインですとどのような方が手続きをするのか把握できないので、9月1日時点では解除不可、という運用をしています。この点については、何か(本人確認をする)良い方法があるのかなど検討した上で運用を変更することも考えていきたいと思います。

ソフトバンク担当者 基本的には(KDDIと)同じ考えで、本人確認上の問題から現在は店頭での受け付けのみとさせていただいております。

 今後、(本人確認をする)良いやり方があるのであれば、(Webでの受け付けを)検討したいと思います。

NTTドコモ担当者 SIMロックをなぜやっているのかという話からすると、割賦契約して一度も支払っていただけず、(端末を)持ち逃げされることがあるので、それによる被害を防ぐため(の方法の1つとして)行っています。競争を抑制する観点からやっているわけではありません

 今までの(会合での)議論を踏まえて、中古端末などに対するSIMロック解除について検討を重ねてきました。「なぜオンラインでもやっているのか?」ということについては、(ドコモショップの)店舗においてのみ受け付けると、他の手続きにいらっしゃったお客さまの待ち時間が長くなるという問題が発生する可能性があり、(店頭手続きでは一部の端末を除いて)手数料をいただくことになってしまうので、オンラインでも受け付けよう、ということにしました。

8月29日
8月29日の会合冒頭の様子

 KDDIとソフトバンクは本人確認への懸念からWebで受け付けない一方、ドコモはドコモショップのオペレーションや利用者の利便性を優先してWebでも受け付けている――このように、現状では判断が分かれています。

 Webでも受け付ければ、ユーザーの利便性は高まります。一方で、Web手続きでは“誰が”解除手続きをしていて、“誰が”端末を持っているのかを正確に確認できないため、手続き端末が盗まれたものだとすると……という不安があるのも事実です。

 リスクを考慮すると、auやソフトバンクの判断を間違いと断ずることはできません。かといって、リスク回避を過剰に意識するあまりに利便性が低くなりすぎるのも問題なので、ドコモは軽率であると断ずることもできません。

 「だったらSIMロックなんてかけなきゃいい」という人もいると思いますが、世界を見ても「SIMロックを掛けない義務」を課している国や地域は少数派で、あったとしても日本のように「SIMロックを解除する権利」を定める程度。一応は「SIMロック自体にはそれなりの合理性がある」というのが世界の大勢です。

 それのことを踏まえて、SIMロックとその解除はどうあるべきなのか――いろいろ思い悩む日曜日です。

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