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800万ユーザー時代のADSLを大分析
年々速度がアップし、進化を続けるADSL。すでに20Mbps超のサービスも各事業者から発表され、受付を開始したプロバイダもある。光ファイバーに迫る速度を実現することはできるのか?その真の実力を探ってみたい。 |
主軸は12Mへ。 ただし実効速度は1M〜3Mbpsが多い
理論値12Mbpsでも実は 1M〜3Mbpsという現実
昨年後半のADSL業界は、各社の12Mサービスの開始で大いに沸いた。その結果、今回の調査では、12Mサービス利用者が全ADSL利用者の半数にまで増加している(図1)。前回の調査で9.1%にとどまっていたことを考えると、この半年でADSLの主軸が完全に12Mbpsに移ったことがわかる。昨年秋から繰り広げられた各社の大キャンペーンで、多くの人が12Mサービスを選んだ影響もあるだろう。
図1 利用しているADSL回線の最大通信速度(公称値)を教えてください
12Mユーザーの割合は、前回の9.1%から50%へと急増。8Mユーザーは37.2%に減少した
●参考:前回調査時*2002年10月2〜15日に実施
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さて、そんな12Mサービスだが、実際にどの程度の速度が出ているのかは気になるところ。図2では、12M ADSL利用者の実効速度分布をまとめてみた。これを見ると1M〜3Mbps付近に山のピークがきている。下りの理論値が12Mbpsであっても、多くのユーザーがこの程度の速度なのだ。
興味深いのは、4M〜5Mbps付近で利用者の割合がいったん減少し、6M〜8Mbps付近でまた増加している点だ。電話局に近いなど、条件に恵まれたユーザーだろうか。これらのユーザーにとっては、12Mサービスの価値は高いであろう。また、20M超のADSLでも有利な条件で導入できることになるので、理想的な速度が得られる可能性は高い。
8Mサービスと比較して 約1Mbps速い12Mサービス
図1では、現在8Mサービスを利用している人が全体の37.2%という結果が出ている。8Mサービス利用者にとって、ほとんど料金の変わらない(フレッツ・ADSLの場合は50円の差)12Mサービスは気になる存在であろう。
とはいえ、12Mコースへの変更は手間と費用(OCNでアッカ・ネットワークスの回線を利用している場合は6050円、フレッツ・ADSLを利用している場合は3050円)がかかる。12Mコースに変更して、これに見合うだけの結果は得られるのだろうか。また、これからADSLを新規に導入しようという人にとっても、自分に最適なサービスを見つけるために各コースの実力を知っておくことは大切だ。
図3は、電話局までの距離とADSLの実効速度の関係をグラフ化したものだ。電話局までの距離は500mごとに区切ってあり、各距離に該当するユーザーの平均実効速度を縦軸にとった。これを見ると、1.5M、8M、12Mサービスの違いがよくわかる。
まず、すべてのサービスにおいて、ADSLの最大の欠点である、距離に応じて速度が低下するという特徴が表れている。ただし1.5Mサービスに限っては、距離による速度の落ち込み率が少ない。電話局までの距離にかかわらず、ある程度一定した速度が得られる公平なサービスといえる。
8Mサービスと12Mサービスの速度差については、電話局からの距離が1.5km付近までは12Mサービスの方が1Mbps程度勝っている。その後は、距離が増加するにつれ差が縮まり、5km付近では、ほとんど差がなくなる。この結果をどう見るべきか。約1Mbps(あるいはそれ以下)でも、速くなるのであれば手間と費用を惜しまないという人もいれば、その程度の差であれば無理してコース変更をすることもないと考える人もいるだろう。何を優先するかで選び方は変わってくる。
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