News 2000年7月3日  9:50 PM 更新

Transmetaの製品ロードマップが明らかに

 これまでひた隠しにされてきたTransmetaのロードマップが徐々に明らかになってきた。Transmetaの上級副社長,James Chapman氏によると,同社の詳細なロードマップは,今週中にもプレス向けに公開される予定だという。先週ニューヨークで開催された「PC Expo 2000」で,そのロードマップのプレビューを受けることができた。

 ロードマップには,より高速なWindows PC向けの「TM5400」後継プロセッサとともに,「TM3120」の将来形として0.06ワットの超低消費電力動作を実現する統合型チップも存在した。同社はTM5400とその後継ではなく,インターネットアプライアンス向けのTM3xx0シリーズがビジネスの中心になると捉えており,積極的な製品開発を進める。

TM3120は2つの製品ラインへ

 現在,Transmetaはインターネットアプライアンス向けにTM3120を発表している。定格消費電力1ワットのTM3120は,コスト重視のために0.25μメートルプロセスを採用していたが,この秋には0.18μメートルプロセスを使った2つの製品ラインをサンプル出荷する。

 そのうちの1つは「TM3400」で,TM5400並の高性能を実現するため,高クロック化と2次キャッシュメモリの統合が行われる(TM3120は1次キャッシュの容量が少ない上,2次キャッシュメモリを内蔵していなかった)。パフォーマンスは,Pentium III/500MHzと同程度になる予定だ。高性能化に伴い,消費電力を抑えるためにTM5400で採用された「LongRun」(動作時負荷に応じてクロック周波数と電圧を動的に調整する機能)が搭載される。

 もう一方は「TM3300」と呼ばれる製品で,こちらはTM3200の正当後継者ともいえるチップだ。TM3400のような高性能化のフィーチャーを省くかわりに,非常に低い消費電力を実現する。定格消費電力はわずか0.1ワットだという。

 しかし,2001年の後半以降,Transmetaはさらに先へと進む予定だ。TM3400の後継は正常進化版の高速チップになるようだが,TM3300の後継チップは液晶コントローラ,2Dグラフィック,USBコントローラなどを内蔵する統合チップになる。Crusoeシリーズは,もともとメモリコントローラやPCIコントローラを内蔵し,PCチップセットのノースブリッジに相当する機能を備えている。このチップを使うことで,非常に小さいインターネットアプライアンスを設計することも可能になる。定格消費電力も,500MHz動作で0.06ワットと見積もられている。

 インターネットアプライアンスは,Webパッドや家庭用アクセス端末,PDAなど,さまざまなタイプの製品が登場するといわれており,Crusoeはそうした市場に対して強くコミットしていく。Chapman氏は,「x86互換のインターネットアプライアンスを作れば,x86用に開発された多くの資産を活用できる点がアドバンテージだ」と説明する。

PC用は次世代のTM5800へ

 Transmetaの力点はインターネットアプライアンスに置かれているようだが,当面の間,Windows PC用のTM5x00シリーズも同社にとって重要なプロダクトだ。既報の通り,PC Expoでは,発表済みのTM5400に加えて,512Kバイトの2次キャッシュメモリを内蔵するTM5600搭載のノートPCも展示された。Chapman氏は,「TM5600は既にサンプル出荷を開始している」という。TM5600は,2次キャッシュメモリの増量により高速化され,同じ消費電力でより高い性能を実現する。

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 興味深いのは,Chapman氏が見せた消費電力と性能の比率を表す折れ線グラフだ。このグラフから,いくつかの事実が読みとれる。

 まず,TM5600の最高性能時の消費電力はTM5400よりも上がっている。2次キャッシュメモリ増量分の消費電力とも考えられるが,TM5600の最高クロック周波数が向上していると見るのが妥当だろう。

 掲載したグラフは,スライドを撮影した写真から起こしたものであるため,若干正確さには欠ける。もとのグラフから類推すると,クロック周波数の上昇は15%程度ではないかと思われる。TM5400が最高700MHz動作であるため,おそらく800MHzが最上位版になると思われる。

 また,TM5600の最高性能時,消費電力は6ワットをわずかに切るところにポイントが打たれている。一方の「コンベンショナルモバイルx86」は,バッテリー駆動時の定格消費電力で500MHz動作時に11ワットを越えてしまう(低電圧版では8.1ワット)。こちらは,低電圧版ではないモバイルPentium IIIだと思われる。

 TM5400/700MHzがPentium III/500MHz相当であるというTransmetaのアナウンスは,少なくとも「CPUmark 99」の結果に関しては正しくない。TM5600でもPentium III/500MHzに届かないのだが,Crusoeは極めて特殊なアーキテクチャで作られているため,実際にアプリケーションを動作させてみなければ本当のパフォーマンスは分からない。なお,Crusoeのパフォーマンス曲線が線形ではない理由についてChapman氏は,「LongRunによって性能を動的に変化させることができるためだ」と説明した。

 Transmetaでは,定格消費電力(Intel製プロセッサでいうところの熱設計電力)を6ワットとしているが,同社は,ここが自然空冷が可能か否かを決めるラインになると考えているようだ。TM5x00シリーズは,今後も空冷ファンが必要ない6ワットを切る領域で,Intelとは異なる市場向けにプロセッサを開発する。

 さて,既にサンプル出荷済みのTM5600の次はどうなるのか? そこには「TM5800」という製品名が上がっている。TM5800は1GHz動作を実現し,プロセッサコアにも手が加えられるという噂もあるが,Chapman氏はTM5800に関して何も語りたがらなかった。

 TM5800でも6ワット以下の自然空冷駆動を可能にするのであれば,1GHzを実現するためにはプロセス技術の進化が必須となる。現在,TM5x00シリーズはIBMエレクトロニクスの0.18μメートルプロセスで製造されているが,同社が来年予定している0.13μメートルプロセスの立ち上げに合わせ,TM5800をリリースすることになるだろう。

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[本田雅一,ITmedia]

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