News 2000年7月7日 11:55 PM 更新

フレッツ・アイ,ADSLを後目に大躍進(3/4)

フレッツ・アイの本当の狙いは?

 さて,フレッツ・アイは今後どんな局面で活用されていくだろうか。例えば,「夢中になっていたらいつの間にか2時間も接続していた自分」と,支払うべき電話代の関係を反省しなくてよくなる。遠距離恋愛の男女も,心おきなく相手の顔を見ながら,テレビ電話でおしゃべりを楽しめるだろう。地球の裏側とも安価にテレビ会議・定額電話ができる。東京と大阪の本支店間でビジネス用テレビ電話を常時設置しても大した金額にはならない。または,東京と大阪の本支店間をVPNで結んだ共有フォルダが欲しい場合も,合計2万円/月程度で実現できる。ユーザーはつなぎっぱなしでも定額なので,株価情報や買い物情報がリアルタイムで入手できる……。

 ここで,株価情報という用途を考えてみよう。情報によって株の売買を決める世界はリアルタイム性が命だ。携帯性を別にしても,PCはiモードに勝てないかもしれない。そこまでシビアでなくとも,例えばYahoo!のネット・オークションも似た側面を持つ。インターネットの反応が遅くて,みすみす落札の機会を逸したという話もよく聞く。

 現状のフレッツ・アイはインターネットの世界を通る。そこの渋滞が致命的になる時もある。どんなにユーザー側の回線が速くても,どんなに企業側のサーバが高性能でも,インターネットの世界が遅ければボトルネックになってしまう。

 実はそのために(渋滞を回避すべく),もう1つのフレッツが用意されている。こちらは「フレッツ・オフィス」という。これはフレッツ・アイのユーザーを,地域IP網から企業ネットワークに直結してしまうサービスだ。

 企業ネットワークを専用線やイーサネットで地域IP網に接続することで,フレッツ・アイのユーザーを迎え入れる。すなわち,これはインターネットを通らないIPバイパスである。この意味は大きい。インターネットに渋滞をもたらさず,逆にインターネット混雑の原因にもならない。少し遅いものの,安価で確実な通路と言える。

 フレッツ・オフィスは,ユーザー宅からISDNを通じ,地域IP網を経由して,専用線またはイーサネットで企業ネットワークに接続する形になる。専用線接続は128Kbps(月額1万8000円),または1.5Mbps(一般が月額5万円,回線単位の監視がないエコノミーが月額3万8500円)の専用線を使う。

 イーサネット型接続はNTT東西地域会社の局内にサーバを設置し,10Mbpsで接続する(サーバ・ハウジング料が必要)。月額料金は9万1000円で済む。

 付加機能もある。NTTはグループ設定機能を用意している。あらかじめ指定して,接続するユーザーの数を限定することが可能だ。ユーザー数に応じた登録料が必要だが,たとえば100ユーザーまでの場合は月額3000円。ただし地域IP網は県単位なので,1つの接続で対応できるのは,その県内のフレッツ・アイ・ユーザーに限られる。ユーザーを限定し,囲い込む,株の売買サービス等にぴったりだ。

 以上見てきたように,NTT地域会社は,お得意のISDNと地域IP網の組み合わせで,巻き起こる回線開放の声に対抗しようとしている。ドコモを除き,NTTの各関連会社にも利益が出るような仕組みを作っている点もさすがと思える。考えてみれば,電電公社とその後身のNTTの長い歴史の中で,外圧も含め,例えば「電話線とMDFを外部に開放してADSLをやれ」「接続費用を下げろ」「分割・分社化を更に推進せよ」などと言われたのは初めてのことだ。こんな激動の時代は過去にはなかった。その中で,NTTグループが必死に巻き返しを図っている1つの例が,このフレッツ・シリーズのように見える。

 フレッツ・アイ,既知の問題点