News 2000年7月7日  7:00 PM 更新

近未来型TVの期待と懸念

 松下電器産業,ソニー,東芝の3社が,蓄積型データ放送サービス技術検討プロジェクトを発足させ,放送と通信が連動したサービスの実現に向けて「eプラットフォーム準備会」を設立するという(7月3日の記事を参照)。議長会社が松下で,日立製作所も,この準備会に参加することが決定している。また,各放送局にも参加を呼びかけ,来年中のサービス開始を目指しているとのことだ。

 7月3日,月曜日の正午前。「夕方に都内のホテルで緊急記者会見を開催!」という案内が電子メールで飛び込んできた。最初はiモード携帯で読んだので,緊急記者会見ということは分かったのだが,何に関するものなのかが,文字数不足で表示しきれず,あわててパソコンをカバンから取り出し,PHSで接続してメールをダウンロードした。やっぱり,iモードでも,Webなどを使ってちゃんとメールを読めるようにしておかなければと反省……。

 ただ,この件に関しては,月曜日朝の日本経済新聞に既にほのめかした記事が掲載されていたわけで,びっくり仰天するようなことではなかった。いずれにしても,日本の家電業界をリードする3社がスクラムを組んだということは,いろいろな点で重要な意味がある。

蓄積型データ放送とは

 蓄積型データ放送サービスというのは,ハードディスクなどのストレージを組み込んだ放送受信機を使い,受信されたオーディオ・ビデオや文字データなどを蓄積し,視聴者が好きなときに,それらを楽しめるというものだ。年末から本放送が開始されるBSデジタルや,新しいCS,地上波デジタル放送,デジタルケーブルテレビなどにより,この種のサービスが期待されている。技術的にもそんなに難しいものでもあるまい。ややこしいのはコピープロテクション方式などではないだろうか。

 ただ,普及に際して混乱が起こり,利用する側がとまどったり,そのことによって,推進すべき普及の速度が滞ったりすることのないように,各社が足並みをそろえて標準化を図ろうというわけだ。

 3社は,基本システム技術の共同検討を進め,それぞれが社団法人電波産業界(ARIB)に提案をするということで合意したという。フォーラムやSIG,コンソーシアムなどを作って,共同でその推奨規格を提唱するというのではなく,各社それぞれが提案するという点が興味深い。

 とりあえず,普通に考えれば,この3社の中から,抜け駆けをするようなメーカーが出てこなければ,うまくいくだろう。しかし,そのほかのメーカーが,この提案を黙って受け入れるしかないのだろうかという点も多少気になるところだ。

 東京・帝国ホテルの記者発表会場には,松下電器産業会長の森下洋一氏,ソニー副会長の伊庭保氏,東芝会長の西室泰三氏という巨頭が勢ぞろいし,それぞれが,このプロジェクトへの期待をアピールした。例えば,東芝の西室氏は,とにかく簡単であることが必要だと強調し,今後の情報家電のキーデバイスとなるデジタル放送受信機の重要性を説いた。

 ここでおもしろいのは,3巨頭が,それぞれ会長,副会長といった役職にある点だ。というのも,実はこのプロジェクト,三氏らが,社長時代からの懸案であったらしい。だからこそ,なんとしてでも,これを成功させ,業界の発展を牽引していくことが悲願なのだそうだ。

 ナイターが延長戦になって番組の時間が変更になっても録画に支障がなかったり,外出先から電子メールで録画を予約したり,あるいは,留守録画途中に帰宅しても,続きを録画しながら番組を頭から見てみたり。そんなことができて,かつ,インターネットとも親和性の高いテレビ受信機が,各社から発売されることになるわけだ。

 心配すべきは,ここまで近未来対応の予告がされると,すべてがそろう数年,いや,10年くらい先までテレビを買い換えられないじゃないかという懸念だ。BSデジタルチューナーでさえ,すぐ先の地上波デジタル放送開始まで待った方がいいなどという声も聞かれる始末だ。どうせなら,いっぺんにやってくれよという声があちこちから聞こえてきそうだ。もちろん,売る方だって頭を悩ませているのだろうけど。

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[山田祥平,ITmedia]

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