News 2000年7月18日  0:05 AM 更新

ほとんどの人に600Kbps以上の常時接続環境が提供できる──イー・アクセス

 7月17日に開幕したIPインフラとネットワークソリューションの専門展示会「IP.net」でイー・アクセスのCTO,小畑至弘氏が「日本のDSLサービスの展望」と題するワークショップを行った。イー・アクセスは,昨年11月に設立された通信ベンチャー。現在は,東京の青山,三田,および大阪の大阪中央,淀川の4局でADSLの試験サービスを行っている。

 小畑氏は冒頭,国内の景気回復が遅れているのはインターネット接続インフラの貧弱さが原因だと指摘。「インターネット白書」のデータを引き合いに出し,「個人と企業の両方で,約半数がモデムもしくはISDNのダイヤルアップ環境だ。景気を立ち上げるには,IT投資を進めなければならない」とした。

 一方で,既存のメタリック心線を利用できるADSLは,ユーザーが拡大しても対応できる柔軟性と,新たな回線敷設作業が不必要というコストメリットを併せ持ち,高速常時接続をコモディティ化させるための起爆剤になる。

 そのADSLでは,サービス開始前からISDNによる干渉やメタリック心線の古さ/長さによる信号の損失が問題視されてきた。しかし小畑氏によると,ADSLの試験サービスを通じて,こうした問題がかなりクリアになってきたという。「98%の確率で750Kbps以上,88%で1Mbps以上,62%で1.5Mbps以上の通信が可能だ。ほとんどの人に600Kbps以上の環境を提供できる」(小畑氏)。

 イー・アクセスでは,今年4月から東京および大阪の計4局で試験サービスを行っているが,7月末以降,東京4局(茅場兜,池袋,四谷,新淀橋)と大阪3局(東,大阪北,北)を順次追加し,計11局とする。10月には商用サービスに移行し,年内には「東京03と大阪06の全域,そして横浜や埼玉の一部地域をカバーするつもりだ」(小畑氏)。さらに,2001年には首都圏と近畿圏,全国主要都市にまでサービス提供地域を広げ,「少々控えめな数字だが,来年の今頃には300局程度に増やすつもりだ」(小畑氏)。

 同時に,@niftyやBIGLOBE,PSINetなどのISPと始めたADSL相互接続実験を進め,商用サービスが開始された暁には,有効なマーケティング手段として活用する構えだ。「ISP各社は強力なマーケティング力を持っている。特に,コンシューマーやSOHOに向けたサービスはISPを窓口とし,われわれは(障害発生時などの)問題解決の担当というように分業していく」(小畑氏)。

 このほか,ハードウェアベンダーにも働きかけ,ADSL普及に向けた環境を整備する。例えばPCメーカーには「ADSLモデム標準搭載モデル」を,モデムベンダーには「無線LANと組み合わせたADSLモデム」などの開発を促す。実際,既にいくつかのメーカーとは交渉中だという。

 「ADSLも,やっと使えるという見込みが出てきた。課題は,広帯域に適したコンテンツの不足や課金システムの構築だろう。ここは業界全体で対応していかなければならない」(小畑氏)。

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