News 2000年8月11日 07:25 PM 更新

ユーザーインタフェースは進歩しているのか?

 ジャストシステムが「ジャストホーム」の新版「ジャストホームi」を発表した。昨年6月の発表から約1年,100万本以上の出荷本数を達成,2000年夏モデルのパソコンにも15社50万台以上のプリインストールモデルが出ているという。

 この製品の特徴は「おウチで使う10個のアプリケーションを標準装備」という点で,従来の「一太郎Home」や「フォトシアター」「楽々はがき」などに加え,従来から要望が多かった表計算ソフトの「三四郎Home」や家族で使える生活カレンダー予定表ソフト「eタイム」などが搭載されている。

 ジャストシステムの調査によれば,そのユーザーの特性として,女性の使用比率が43.5%に達し,分かりやすく楽しいことが評価されているという。また,ユーザー対象アンケートの結果として「満足している」という回答が実に87.2%と,驚異の満足度を実現しているのも特徴だ。同社の分析では,この製品のユーザーは,機能の充実は求めていないという。現在の製品に満足し,初めてのパソコンを自分が使いこなせていることに満足,機能アップは望んでいないのだ。

 そこで,今回のバージョンアップに際しては,「機能」ではなく「配慮」を追加し「ナンバーワンソフト」ではなく「オンリーワンソフト」を目指すべく,開発に注力したとのことだ。

 もし,こうしたソフトウェアが定着すれば,パソコンを購入したユーザーの多くは,自分のやりたいことのほとんどを,買ったままの状態でできるようになり,新たにパッケージソフトウェアを追加することも少なくなるだろう。そうすると,汎用機としてのパソコンは,いわゆるアプライアンスに近い存在として認識されるようになる。ジャストホームが提供するシェルがあれば,Windowsのスタートメニューを使う必要もなく,レジュームとサスペンドを繰り返して使い続けていれば,パソコンの再起動さえ経験しなくてすむ。

 もっとも,今のWindows 98では,そんな使い方をすることはできそうもないが,Windows 2000なら多少は無理もきく。だからこそ,コンシューマー向けのWindows 20000に期待したい。

GUI統一の必要性

 ともあれ,ぼくがちょっと気になったのは,ジャストホームiの各コンポーネントが持つ,ユーザーインタフェースの微妙な違いだ。ぼくは,ここに,かつてのMS-DOS時代からWindows時代に移行したときと同じことを感じた。

 例えば,MS-DOS時代のワープロソフトや専用パーソナルワープロの多くは,ある文字列を削除する際に,先に「削除」という機能を選択し,そのあとで「どこから」と「どこまで」という範囲を指定した。ご存じのように,この操作手順は現在は逆になっていて,先に「どこから」「どこまで」という範囲を指定した上で「削除」という機能を選ぶようになっている。

 ちなみに,ジャストホームiに搭載された「三四郎Home」では,あるセルとあるセルの値をかけ算する計算式を入力するために,先に,かけ算の意味で「×」を指示し,次に「このセル」と「このセル」を指定,結果を入れるセルがどこかを指定するのは最後という段取りになる。つまり,WindowsやMacintoshのGUI的な手順とは逆になるわけだ。これが,すべてのコンポーネントで共通であればいいのだが,パソコン上のソフトウェアである以上,そうはいかないし,仕様上の混乱も感じられる。

 さらに,ちなみにを続ければ,手元のiモード携帯電話のユーザーインタフェースでは,コピーに関してはコピーという機能を先に選び,範囲を後指定するようになっている。にもかかわらず,貼り付けに関しては,無条件にカーソル位置に文字が貼り付き,貼り付ける位置をあとで問い合わせてはこない。これもチグハグだ。

 こんな具合に,環境ごとにいろいろなユーザーインタフェースがあり,ユーザーが混乱してしまう傾向にある。何が簡単なのか,何が難しくないのかということも重要だとは思うが,どんな環境,どんなデバイス,どんなソフトウェアでも,似たような操作で機能を実現できるということも重要だ。カンタンを追いかけた結果,こうしたことが見失われることはさけなければならないと思うのだが,いかがだろうか。

[山田祥平, ITmedia]

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