News | 2000年8月11日 07:00 PM 更新 |
IntelアーキテクチャグループのFred Pollack氏 |
Intelでは,PCチップのクロック周波数は,現在の1GHzから,2011年までには10GHz以上にまで引き上がると予測している。
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オレゴン州ヒルズボロ,カリフォルニア州サンタクララ,イスラエルのハイファ,中国の北京など世界各地に拠点を持つこの研究施設には,同社のプロセッサ設計にまつわる知識が集められており,未来のチップで使われる新技術の開発が進められている。
170人いるMRLの研究員の大半は,プロセッサアーキテクチャの新たな設計について研究している。その成果は10GHzチップの達成に向けたパフォーマンス強化に活かされるはずだ。
しかし,MRLの研究員(これまではハードの専門家が多かった)は,近年ソフトに対する関心を強めている。新世代のソフト,とりわけコンピューティング負荷の高いユーザーインタフェースは,機能とパフォーマンスを大幅に強化したプロセッサを必要とする。
このためMRLは,新しいユーザーインタフェースと動画を多用するアプリケーションの開発にあたっている。その開発成果は,Intelチップの改良に役立てられる。
IntelフェローでMRLのディレクターでもあるFred Pollack氏は,「われわれは,未来のプロセッサが新しいアプリケーションにきちんと対応できる確証を得たいと考えている」と説明する。
Intelが社内で使用しない技術でも,最終的にIntelブランドの製品や技術の形で他の企業にライセンスされ,市場に登場する可能性もある。
現在開発が進められている新技術には,以下のようなものがある。
データを入力する際,音声入力やペン入力など,複数の方法に対応可能な,いわゆるマルチモーダルユーザーインタフェース
ライバル企業TransmetaのプロセッサCrusoeに搭載されているCode Morphing Softwareと同様の働きをするJavaベースのジャストインタイム(JIT)コンパイラ
大規模画面を使って日常的な作業をナビゲートする「没入型」作業領域
MRLが今,力を入れて開発しているソフトは,ビデオとコンピューティングデバイス用のナチュラルヒューマンインタフェースだ。どちらも大きなプロセッサ処理能力を必要とする。
ナチュラルインタフェースをめぐっては,音声,テキスト/音声変換,自然言語技術などの研究が行われている。3〜7年の研究を経て,研究員たちの目には,音声とペン入力の両方に対応する「マルチモーダル」ユーザーインタフェースの実用化が既に視野に入っている。
この結果としてIntelでは,自社のチップ用に調整された「コアライブラリ」の開発も進めている。同社は,研究メモでいっぱいのソフトコードを集めたこれらのライブラリを年内にリリースする予定だ。同社の目的は,身振りをコマンドとして認識するソフトや,新しいマルチモーダルユーザーインタフェースなど,コンピュータの利用範囲を拡大するようなアプリケーションを開発しているデベロッパーを支援すること。同社ではコアライブラリについて,まず大学で利用され,その後アプリケーションデベロッパーも使うようになると考えている。
Intelがリリースする最初のライブラリには,ビジュアルユーザーインタフェースやアプリケーションで,パターンと身振りを認識するのに使用可能なアルゴリズムが含まれる。
Pollack氏は,マルチモーダルインタフェースがいち早く受け入れられる可能性が高い市場として,標準キーボードの複雑さによってPCの利用拡大が妨げられているアジア諸国を挙げている。
またIntelは,手書き文字認識ソフトを使用するペンベースのインタフェースのリリースにも近づいている。同社は,手で書かれた文字を認識するため,ペンに超音波技術を組み込んで,その動きを三角測量している。また,ペンのデータをPCに送るのに赤外線技術も使われている。このペンは,ビデオ会議中に署名を送ったり,図面を転送するといった用途にも使うことができる。
Pollack氏によると,このペンインタフェースは来年中に製品化されるという。