News 2000年8月23日 08:52 PM 更新

デジタルコミュニケーションの可能性を探る「e-mail2000」が開幕

都内で「e-mail2000」が開幕し,初日は情報のバリアフリーをテーマに基調講演が行われた。

 デジタルコミュニケーション全般を扱うイベント「e-mail2000」が8月23日,東京・池袋のサンシャインシティで開幕した。主催はe-mail2000実行委員会と日刊工業新聞社。電子メールを中心としたデジタルコミュニケーションの可能性と課題を検討するのが狙いで,25日までの3日間にわたり,各種の講演やシンポジウムが行われる。

 初日に行われた基調講演は,日本アイ・ビー・エム(IBM)技術顧問の石田清二氏による「インフォメーションバリアフリーの実現に向けて」がテーマ。石田氏はIBMワールドワイドの「アクセシビリティ」(アクセスしやすい,の意味)担当ジェネラルマネジャーを兼任しており,障害者らのPCやネット利用を促進する技術研究に取り組んでいる。


日本IBM技術顧問の石田清二氏

 石田氏はまず,「ITの進歩を活用してデジタルデバイドをどう克服するか。これはIT業界と社会の責務だ」と前置きし,障害者がPCやネットを利用する際の問題点を指摘した。例えばGUIの発達は健常者にとってはソフトを利用しやすいものにしたが,「キーボードでPCを操作していた全盲者を再び闇の中に追い込む結果になった」という。またWebの見栄えを良くするために,文字情報をJPEGやGIF画像で表示するケースが多いが,これは音声合成によるテキスト読み上げを利用している全盲者にとっては情報を得られないという結果をもたらしている。

 石田氏によると,障害者や高齢者がネットやPCにアクセスしやすくする「インフォメーションアクセシビリティ」は,

1.操作デバイスの改良(キーボードやポインティングデバイスなど)
2.代替機能の充実(点字ディスプレイ,音声合成による読み上げなど)
3.サービスの改善(読み上げに対応したWeb作成など)

の3要素が挙げられるという。現在,IBMが力を入れているのは「トランスコーディング」と呼ばれる技術。例えば弱視者らがネット接続対応携帯電話を利用する際,小さなディスプレイでもWebのテキストを読めるようする必要がある。このため,表示文字サイズを大きくしたり,背景色を変えるといった変換をサーバ上で自動的に処理させる技術だという。

 石田氏は,世界人口の10%に相当する約6億人が何らかの障害を持っているという統計を挙げ,「アクセシビリティ技術により,障害者が健常者と同じ教室や同じ職場で活躍できるようになれば社会は変わる」と指摘。IBMにとっては「これは企業としての社会貢献だけではなく,ビジネスとしての可能性を考えての活動だ。単なる社会貢献では景気が悪くなれば企業は手を引いてしまう」と息の長い活動を続けていく方針を強調した。

 24日は午前10時から電子メールのセキュリティや携帯電話によるデジタルデバイド解消をテーマにした招待講演が行われる。25日午前は招待講演に加えてパネルディスカッションが催される予定だ。また,企業による展示コーナーも開設されている。参加は有料。

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[小林伸也, ITmedia]

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