News 2000年8月24日 07:05 PM 更新

Intel,超低消費電力のXScaleで日本のケータイ市場に進出

XScaleの消費電力は,最低で10ミリワットまで引き下げることが可能。その際のMIPS値も20をキープできる。携帯電話にも有効なアーキテクチャだ。

 米Intelの副社長兼ジェネラルマネジャー,Ron Smith氏は,米カリフォルニア州サンノゼで開催されている「Intel Developer Forum 2000」(IDF)の2日目,基調講演の席上で第2世代StrongARMのプロセッサコア「XScale Micro Architecture」を発表した。XScaleは,消費電力あたりのパワーが最も高いStrongARMコアをさらに進化させたもの。1GHz動作のハイパフォーマンスの領域から,10ミリワットの超低消費電力の領域まで,スケーラビリティの高い動作が可能なプロセッサになっている。IntelはXScaleを,携帯電話をはじめ,インターネットインフラ向けの機器などに応用していく予定だ。


XScaleを紹介する米IntelのRon Smith氏

 Smith氏は基調講演のデモンストレーションで,XScaleのパフォーマンス設定を自在に変化させて見せた。最初は600MHzで762MIPS,433ミリワット。次に800MHzへと周波数を上げるとMIPS値は1000に到達。このときの消費電力も760ミリワットにしか過ぎない。さらに周波数は1GHzまで引き上げられ,MIPS値は1270にまで上昇。このときの消費電力は1.5ワットである。いずれも0.18ミクロンプロセスで製造されたXScaleアーキテクチャ採用のサンプルチップでの数値だ。

 さらにSmith氏はクロック速度を上げるのではなく,下げていくデモを行った。600MIPS,450MHz,240ミリワットからスタートさせると,クロック周波数を200MHz,MIPS値で254まで速度を低下させた。このときの消費電力は,実に55ミリワットである。

 Smith氏は「250以上のMIPS値があれば,十分に動画を扱うことができる。消費電力を上げることなく,第3世代携帯電話の広帯域に対応したアプリケーションを処理することが可能だ」と胸を張った。Smith氏によると,消費電力は最低で10ミリワットまで引き下げることが可能で,その際のMIPS値も20をキープできるという。

 XScaleは動的な電圧制御により消費電力を削減し,スーパーパイプライン化を行うことでクロック周波数を向上,MMXにも似たマルチメディア命令を追加することで広帯域のネットワークアプリケーションにも対応する。

 またIntelは,XScaleとともに「Intel Integrated Performance Primitives」も発表した。これはオーディオ,ビデオ,グラフィックを扱うためのソフトウェアライブラリで,OSには依存しない。またIntelが持つIA-32,IA-64,StrongARM,XScaleといった,すべてのプロセッサで利用可能になっている。

第3世代携帯電話にも有効

 XScaleは,その名の通り,さまざまな規模の製品に応用できるスケーラビリティの高い性能が特徴だ。前述のように幅広い性能レンジから,その製品に最適な構成を選ぶことができる。携帯電話であれば,低消費電力で利用することを優先するだろう。また,インターネットインフラ機器向けのプロセッサであれば,パフォーマンスの高さが必要かもしれない。携帯電話からネットワーク機器まで,さまざまな分野に高い競争力を発揮することになる。

 携帯電話が第3世代に入り,広帯域のアプリケーションを利用可能になれば,当然ながらそれに見合ったプロセッサも必要になる。携帯電話のサイズが限られていることを考えれば,消費電力は従来のままで処理能力だけを向上させなければならない。

 インターネットが急拡大する中,そのインフラを支える機器は,可能な限りのハイパフォーマンスを求められる上,高密度の実装を行うために冷却が行いにくく,低消費電力であることも必要になる。1.5ワットで1270MIPSのXScaleは,この分野でも広く使われる製品になりそうだ。

 Smith氏は,9月に行われる予定の「IDF Japan」に出席し,さらに進んだ話を行う予定。Smith氏が基調講演を行うほか,携帯電話開発者向けのセッションを日本向けに用意するという。

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[本田雅一, ITmedia]

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