News 2000年8月25日 06:22 PM 更新

Intelの考える非Windowsのコンシューマー製品

 カリフォルニア州サンノゼで開催された米Intelのデベロッパーフォーラム(IDF)に行って来た。Pentium 4の詳細や,XScale,Peer to Peerネットワーク関連など,話題は盛りだくさんなのだが,この連載にふさわしいテーマとして,「New Platforms for the Family Room」なるセッションの内容を紹介しよう。

 要するに,Intelが作ったインテルアーキテクチャを持つ家庭用アプライアンスを見てきたわけだ。一言でいうと,CD,DVDなどのマルチディスクプレーヤーであり,HDTVチューナーでもあり,PVR(Personal Video Recorder)でもあるという何でもこいの機器だ。OSにはLinuxを使い,家庭用に特化した機器として開発されたプラットフォームである。テレビのようにやさしく使え,ほんの数秒で起動するという。


インテルの提案する家庭用アプライアンス


DVD-Videoを再生中。HDTVチューナーも搭載し,ホームシアターユースにも使える


背面にはパソコンと同じコネクタ類も並ぶ

 IntelはこれをベンダーにOEMすることで,各社に新しいビジネスチャンスをつかんでほしいという提案をしているのだ。OEM先としては,従来のPCメーカーはもちろん,コンシューマーエレクトロニクスのメーカーも想定されている。また,いわゆるサービスプロバイダーも含まれる。

 まず,グラフィックチップには加ATIの「Rage HDTV」と「Rage Theatre」を搭載する。ハードウェアMPEG-2デコードが可能で,「Adaptive De-interlacing」という手法により,文字をシャープにし,ギザギザの目立たない映像を作り出す。

 また,サウンドは,AC97による標準的なオーディオアーキテクチャだ。16〜20ビットの48KHzオーディオをサポートするほか,一般的なDVDプレーヤーと同様に24ビット96KHzDACを持つ。今後のメディアプラットフォームは,最低でもこのくらいのスペックが必要だという判断だ。

 もちろん,ネットワークにも対応する。AnyPointなどを使って,家庭内のネットワークに乗り入れ,インターネット接続共有のネットワークなどに乗り入れることができる。つまり,インターネット接続が可能で,Webも楽しめる。中身はパソコンだからというわけではないが,ハードディスクの容量を増やしたり,PDAなどのデバイスをつないだり,ジョイスティックやタブレットなどのポインティングデバイスを接続したり,ビデオカメラやデジタルカメラ,CDジュークボックス,そして,ルームランナーのような健康器具をつなぐことも考えられているという。

 OSのLinuxは,専用にシェイプアップされ,カスタムファームウェアによって,5秒以内に起動するという。そして,Linuxアプリケーションがストリーミングメディアを再生するためのCODECなどが,ミドルウェアとして提供される。

機能をアップグレードできるコンシューマー製品

 こうした機器を欲する層を,ニュー・デジタル・エイジと呼ぶそうだ。インテリジェントでプログラマブルなプラットフォームであり,ネットワークに接続可能で,しかもシンプル,買ったあとにアップグレードが可能で,優れたユーザーインタフェースを持っている機器をほしがるという層である。

 ここで注目すべきは,購入後にどんどん機能をアップグレードできる機器を提案している点だ。リビングルームに2台のブラウン管は受け入れられないだろうから,ホームサーバのような機器は,間違いなくボックス型のきょう体を持ち,テレビに画面を表示し,リモコンで操作するだろうし,それがネットワークにつながって,家族が個々に持つノートPCなどとも連携するような環境が,家庭での新しいプラットフォームだというわけだ。

 これまで,パソコンは一人で使うことを想定して,いろいろな要素が考えられてきたように思う。1台のパソコンを,数人が共用することがあっても,1台のパソコンを数人で楽しむということはあまりなかった。が,今後のパソコンのユーザーインタフェースは,例えば,家族数人で1つの画面を見ながら楽しむような使い方に耐えるものでなくてはならない。となれば,ブラウン管からは,ある程度の距離が必要になる。そういう場合には,Windowsのユーザーインタフェースは,決して優れているとはいえない。やはり,新しいシェルが必要で,それを載せるOSは,Windowsではないということだ。

 Windowsの未来に翳りが見えたとしても,PCが世の中に受け入れられ続けなければ,Intelに未来はない。Intelのプロセッサを必要とする層をまだまだ増やしていくためには,こんなアプライアンスの提案も必要なのだろう。現状のコンセプトモデルは,いかにもゴツいデザインだが,これが,今のビデオデッキくらいの大きさに収まるのなら,受け入れられるかもしれない。

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[山田祥平, ITmedia]

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