News 2000年8月25日 09:43 PM 更新

Pentium 4,最大の敵は発熱

 米カリフォルニア州サンノゼで開催されている「Intel Developer Forum 2000」の3日目,米Intelは「Pentium 4」のアーキテクチャのうち,前回のIDFでは明らかになっていなかった部分について若干の情報を公開したが,その性能を予測できるほどの新しい情報は出さなかった。

 Pentium 4のマイクロアーキテクチャのうち,基本的な部分に関しては,2月に開催された前回のIDFで公開されている(2月17日の記事を参照)。Intelは「高い競争力があり,パフォーマンスヘッドルームとスケーラビリティを持つプロセッサを提供するのがPentium 4の目的」と話すが,これまでPentium 4の性能に疑問符が付けられていたのは確かだ。20段という前例がないほど深いパイプライン構造は,クロック周波数あたりの性能が低いのではないかと言われている。

パイプラインの深さは足かせになるか?

 IDFで行われたPentium 4の技術セッションでは「CPUパフォーマンスとは,(周波数)×(周波数あたりの実行命令数)で表される」(Intel)と定義。Pentium 4が高クロック周波数を実現可能なアーキテクチャであることは前回のIDFで明らかだが,Intelは周波数あたりの実行命令数(Instructions Per Clocks:IPC)も高めるようとしていると強調する。IntelのIPC向上への取り組みは,分岐予測の強化,並列実行度の向上,レイテンシ削減の3つだ。

 特に分岐予測は,これまで“より進んだ”分岐予測としか公表されていなかったが,20段パイプラインがIPC向上の足かせにならないための要となる部分だ。Pentium 4の分岐予測は,分岐先テーブルのサイズをPentium IIIの8倍にあたる4000個に拡大。分岐予測が外れる確率は,従来の1/3に削減された。Intelによると「公開されている分岐予測機能の中で,もっとも精度が高い」優れたものだという。

 これに加えて,高い精度の予測に基づく最大1万2000個のマイクロ命令を保存可能なトレースキャッシュ,3分の2に削減された1次キャッシュメモリのレイテンシ,2倍の帯域を持つ2次キャッシュなどにより,IPCを高める努力をしている。

 ただし,これだけの複雑な機能を実装しながら,なおPentium 4のIPCはPentium IIIよりも低いとの懸念が指摘されている。さらに言えば,一部のアンダーグラウンドなWebサイトでは,サンプル品のPentium 4/1.4GHzが,Pentium III/1GHzの1.3倍程度のベンチマーク結果しか得られないというデータを掲載している。

 真相はPentium 4の出荷まで分からないが,Pentium 4のIPCがPentium IIIを下回ったとしても,最終的にPentium 4が低速になることは考えられない。なぜなら,同じ製造プロセスならば,IPCの差以上にPentium 4のクロック周波数を引き上げることが可能だからだ。

 Pentium IIIの原型であるPentium Proは166MHzからスタートし,現在は1133MHzで動作している。しかし,Pentium Proのアーキテクチャ上,これを2GHzに引き上げることはできないと予想される。一方,1.4GHzからスタートするPentium 4ならば,将来2GHzはおろか4GHzを狙うこともできる。少々のIPCの差は,全く関係ないほどに高速になるだろう。

 しかしながら,年末までに登場するPentium 4のシステムが,当初は非常に高価なものになることは間違いない。Pentium 4用に出荷される最初のチップセット「i850」は,70ドル程度になるといわれており,チップセットの冷却も必要になるからだ。

いかに効率良く冷やすか

 今回のIDFでは,膨大な熱を発するPentium 4の冷却と,ヒートシンクが必要なほど大規模化したi850チップセットを搭載するPCを,いかに効率よく冷やすかも技術的なテーマだった。Pentium 4のヒートシンクは,総銅作りの450グラムもある巨大なヒートシンクが標準設定され,それに巨大な冷却ファンが組み合わされる。チップセットにも冷却ファンが割り当てられるほか,きょう体背面に10センチの大型ファンを取り付けることも推奨している。

 Intelは,温度センサーと連動し,冷却ファンのオン/オフや回転数の切り替えを行うソフトウェアを含むソリューションを開発者向けに提供する。しかし,Pentium 4システム向けの冷却システムは,コスト高で複雑,故障の原因にもなりやすいだろう。少なくとも,省スペース型デスクトップPCに,Pentium 4を実装するのは難しい。

 Pentium 4最大の懸念は,IPCでもクロック周波数でもない。消費電力の高さと,それにともなうコストアップだろう。いずれは製造プロセスの進化とともに,ほとんど気にならなくなるかもしれないが,現時点でのPentium 4の敵は発熱である。これを解決するまでは,急速な普及は望めない。

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[本田雅一, ITmedia]

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