News 2000年8月30日 09:41 PM 更新

ナショナルセミコンダクター,TRON採用のWebPADを発表 「PCの時代は終わり」を力説

ナショナルセミコンダクターは,インターネット端末「WebPAD」のOSにTRONを採用したリファレンスモデルを発表した。

 ナショナルセミコンダクタージャパンは8月30日,日本生まれのOS「TRON」を採用したWebPAD(インターネット接続に特化した端末)のリファレンスデザインを発表した。同社はx86互換の統合プロセッサ「Geode」を搭載した情報端末(インフォメーションアプライアンス:IA)普及に力を入れており,「PCの時代は終わり,来年にはIAが主役になる」と次世代の標準を狙っている。

 発表されたWebPADは液晶ディスプレイ一体型のデザイン。今回採用されたTRONは,ソフト会社のパーソナルメディアがPC向けの「BTRON3」に準拠して開発した「超漢字2」。超漢字2は漢字や世界各国の文字など約13万字を表示できるのが特徴だ。移植はナショナルセミコンダクタージャパンとパーソナルメディアが共同で行った。


TRONを採用したWebPADの試作品

 搭載CPUは「Geode GX1」。x86互換CPUコアに加え,2Dグラフィックコントローラやディスプレイコントローラを1チップに集積し,平均0.8〜1.2ワットの低消費電力で駆動する。動作クロックは現在,200M/233M/266M/300MHzの4種類が用意されている。

 ナショナルセミコンダクタージャパンIA事業本部の浅尾明秀本部長は「TRONはレスポンスがいいOS。Geodeの低消費電力と組み合わせれば携帯機器向けの強力なコンビとなる」とTRONの利用を積極的に進める考えを明らかにした。今回のWebPADはリファレンスモデルだが,今後メーカー数社に製品化を働きかけ,「半年から1年後には製品が発売されるだろう」(浅尾本部長)としている。

 試作品が発表されたのは,同社がメーカー関係者らを集めて開いた「IAセミナー」の会場内。セミナーでは,来日した米National Semiconductorの会長兼社長兼CEO,Brian Halla氏が講演を行った。Halla氏は「計算機としてのコンピュータの時代から,ネットを活用した情報機器の時代へと移ってきている。これからはCPUの動作クロックを競うのではなく,情報アクセスへの最適化を図るべきだ」と述べた。その上で「PCの次は間違いなくIAだ。PCが複雑過ぎるために普及率は足踏みしているが,IAならすぐに100%普及する」と意気込んだ。


「PCの時代は終わった」と力説するBrian Halla氏

 National SemiconductorがWebPADのリファレンスを発表したのは1998年。マイクロプロセッサ市場におけるIntelの独占に対抗する活路として見いだしたのが,初心者でもインターネットに簡単に接続できるよう配慮されたIAだ。ネットの爆発的な普及とデジタルデバイドの顕在化によって,IAは「PCの終わり論争」とともに脚光を浴びるようになってきた。

 同社としては,GeodeとWebPADリファレンスをPCに代わるデファクトスタンダードに育て上げ,MPU市場におけるIntel独占を別ルートから突き崩していく狙いのようだ。Halla氏はセミナーで,「IAによってMicrosoftとIntelからわれわれは解放される」と宣言。セミナーの終了時に放映されたビデオは,砂漠の真ん中に置かれたWindowsマシンが,エラーメッセージを続々と叩き出した挙げ句に爆破されるという刺激的なものだった。

 ところがここにきて,米TransmetaがGeodeと同様に低消費電力を最大の売りとするCrusoeでIA市場に名乗りを上げた。米GatewayがIAにCrusoeを採用するなど(5月30日の記事参照),Transmetaに対する市場の好意的な反応はNational Semiconductorをあわてさせている。セミナー会場でも「Crusoe搭載のシステムは120ドルだが,Geodeなら70ドルで済む」(米本社IAグループ執行副社長のBories氏),「CrusoeのTM 3000シリーズとGeodeをシステム全体で比べると,Geodeのほうが低消費電力で勝っている」(浅尾本部長)と対抗心をむき出しにしていた。

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[小林伸也, ITmedia]

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