News 2000年8月31日 08:08 PM 更新

フリーPCは限界? バーテックスリンクが事業部を廃止

 バーテックスリンクは8月31日,昨年5月に開始したオンライン販売事業「ecap24」を廃止することを発表した。ecap24は,低価格なオリジナルPCの販売やフリーPC事業「ムリョーパ!」をコンシューマー向けに展開してきたが,「業界の激しい変化と新規参入企業との競合により,収益面で厳しい状況に直面した」(同社)という。バーテックスリンクでは,ecap24のユーザーサポートを含む運営業務全般を,9月1日よりEC事業などを手掛けるベンチャー企業のラブロスに移管し,自社は従来からのPC部品事業などにリソースを集中,収益構造の建て直しを目指す。

 バーテックスリンクが昨年6月に発表(1999年6月15日の記事を参照)したムリョーパ!は,IBMの「Aptiva」(後に自社製のRIVU21も加えた)とDDIのインターネット接続サービスをセットとし,3年契約でPCを配布するというもの。ユーザーには,初期設定料やecap24カードへの加入,指定するプリンタの購入(選択可)など,いくつかの条件が課せられており,これらの販売利益や手数料収入をPCの代金に充てる。配布されるPCが大手メーカー製だったことや,募集人数の多さから,国内初の本格的なフリーPC事業として,当初から注目を集めていた。

 ただし,同社としてはムリョーパ!による利益は見込んでおらず,フリーPCを“入り口”として会員を増やすことで,インターネットモール(ecap24)で収益を上げる,というのがビジネスモデルだったという。

 しかしその後,他社が続々とフリーPC事業に参入したことに加え,大手PCメーカーが「われわれの予想より早く」(バーテックスリンク)相次いで低価格なPCを発売した。これにより,「フリーPCで継続的に同じISPを使い続けるよりも,安いPCを買ってしまったほうが早いと判断するユーザーが増えた」(同社)という。ムリョーパ!は当初,1万台の募集に対して4万5000件の応募を集めたが(1999年8月20日の記事を参照),2回目以降の応募数は激減。フリーPCに伴う煩雑さが,ユーザー離れを招く結果になってしまった。バーテックスリンクは,今春までに方向を転換し,教育市場など特定分野に向けた募集に切り替えていたが,結局,ecap24を主力事業としていたインターネットリテールカンパニーは1999年度に1億6300万円の赤字を計上。「このままの環境で(利益を上げるのは)無理と判断した」(同社)。

 赤字の直接的な原因となったのは,ショッピングモールでの売り上げ不振だ。しかし同社では,「フリーPC(の会員数が伸びなかったこと)がトリガーになったのは確かだ。ショッピングモールの販売も伸び悩み,他社とのアライアンスにも影響を与えた」と話している。

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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