News 2000年9月1日 08:58 PM 更新

縦置き型ビデオデッキはブレークスルーか?

 シャープから新型ビデオデッキが発売された。ハイファイビデオの「VC-V1」と,S-VHSビデオの「VC-VS1」の2機種があり,どちらも縦型であるのが特徴となっている。すなわち,設置面積は横置きするよりも圧倒的に狭くてすみ,従来の3分の1のスペースしか占有しないという。

 プレスリリースの写真を見る限りでは,なんだか,スリムタイプのタワー型パソコンみたいだ。縦置きタイプのビデオデッキは,据え置き型では業界初だそうで,誰でも考えつきそうなのに,今までなかったというのは,ちょっと意外だ。


ハイファイビデオの「VC-V1」。デザインの合う15型フラットTV「15C-FM1」も出た。価格はすべてオープン。

 ビデオデッキをはじめ,DVDプレーヤー,家庭用ゲーム機,ビデオムービーカメラ,デジタルスチルカメラ,CSチューナー,BSデジタルチューナーと,テレビにつながるデバイスというのは実に多い。オーディオセットを勘定にいれれば,もっとある。今後のことを考えると,テレビにつなぎたいデバイスはまだまだ増えていくだろう。

 そんな中で,悩みの種は,これらのデバイスをどう設置するかだ。単純には横積みすればいいのだが,段数が増えると重量の問題が出てくる。たとえば,今回のシャープの新型ビデオデッキは,見た目は軽量に見えるが,それでも4.1キロある。S-VHS機は4.5キロだ。この手のデバイスを横に積み重ねていくと,5つ重ねれば,一番下のきょう体には20キロ近い重みがかかってしまう。その重さに耐えられるかどうかというと,それは,ちょっと難しいのではないだろうか。

 もちろん,発熱の問題も大きい。たとえば,わが家の場合,オーディオコンポとして,アンプやプレーヤーは別のきょう体のものを使っているが,熱を逃がすことを考えると,いちばん重いアンプを,プレーヤーの上に重ねるといったレイアウトをしなければならない。それは不可能なので,とても非合理なスペースの使い方をしなければならなくなっている。


S-VHSビデオの「VC-VS1」。省スペースデスクトップ用のラックにも合う

 機器を縦置きにできることで,これらの問題が解決できるのなら,それは大歓迎だ。でも,それができるのが,この機種だけしかないうちには,そんなに大きな恩恵は受けられないだろう。今後,シャープが,いろいろなデバイスに,すべて縦置きデザインを用意するようになるようなら,「やっぱり目のつけどころがシャープだ」と判断するユーザーが,同社の製品を選ぶようになるだろう。それに他社が追随して,家電の業界に縦置き文化のようなものができてくれば,ひとつのブレークスルーになるに違いない。

問題は別のところにも

 けれども,根本的な問題は,家具にもあるんじゃないかと以前から思っている。ヤマハだとか,ビクターといったメーカーは,システム家具を作っていて,こうしたAV機器を,うまく収納できるようなソリューションを提供しようとしている。が,それらがあまりにもお粗末なのだ。とても家電のメーカーが,機器の設置をきちんと考えて作っているとは思えない。いったん配線したら,再配線が難しい家具裏の孔や,何十本というケーブルが行き交うことを全く考えていない棚の仕切り。電源のことなども,ほとんど無視されている。

 棚にゆったりと置物をおき,優雅にお茶を飲むような,カタログ写真のリビングルームにありがちな生活をしようとしている人たちばかりではないのだ。こうしたメーカーこそ,きちんとした設置の提案をして欲しいと思う。中身に合わせて器を作るのか,器に合わせて中身を作るのかは,難しいところだと思うけれど,少なくとも,現行のAV機器を整然と,かつ合理的に,しかもメインテナンスしやすく安全に収納できる家具やラック類が欲しい。

 今,テレビを取り巻く状況は,テレビの中にPCを入れるのか,PCの中にテレビを入れるのかという2方向のスタンスで,各メーカーが試行錯誤を続けているが,PC屋さんとテレビ屋さんでは発想のプロセスが違うから,両側からアッと驚く製品が出てきて,コンシューマーは楽しく迷うことができる。

 縦置きのビデオデッキ,これまた,アッと驚く設置方法を提案する第三者が出てきてほしいものだ。家具メーカーの方,今がチャンスです。いつでも相談に乗りますから……。

関連リンク
▼ シャープのプレスリリース

[山田祥平, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.