News 2000年9月5日 07:55 PM 更新

電子マネーからの脱却を図るサイバーキャッシュ

電子マネーの老舗であるサイバーキャッシュが戦略を転換。なかなか普及しない電子マネーに見切りをつけ,クレジットカード決済の普及を進めている。

 ECサイトの決済手段として,電子マネーやデビットカードの普及はなかなか進まない。これは,1998年5月よりサービスを行ってきた電子マネーの老舗であるサイバーキャッシュが導き出した回答だ。方向を転換した同社は現在,クレジットカード決済システムの提供を主な業務としている。

 サイバーキャッシュはサービス開始当初,「CyberCoin」という少額決済用の電子マネーを中心に事業を展開。デビットカードや,BitCashなどそのほかの電子マネーととともに大きな注目を集めた。しかしながら,サイバーキャッシュ営業企画部マネージャーの沖田貴史氏は,「現在,CyberCoinを導入しているのは1店舗だけで,利用者は数千人にとどまっている。実際にはサスペンド状態だ」と話す。サイバーキャッシュでは,CyberCoin事業を廃止したわけではないが,今後の計画としてCyberCoin事業を拡大する予定はないという。

 「米国においても,電子マネーはほとんど普及しておらず,主流はクレジットカード決済になっている。サイバーキャッシュは以前から,電子マネーとSSLベースのクレジットカード決済システムの販売を同様に手がけていた。ただ,電子マネーブームの中,戦略としてCyberCoinを前面に打ち出すことになった」(同氏)

中小規模のECサイトがターゲット

 富士通総研が発表したインターネットショッピング調査では,クレジットカード決済を希望するユーザーは多いものの,実際にECサイトに導入されている決済手段としては,代金引換が最も多く(全回答者の70%),クレジットカードは13.7%にとどまっている。

 こうした現状についてサイバーキャッシュでは,「コストや信頼性の問題から,中小規模のECサイトで,クレジットカードの導入が進んでいない」と分析。中小規模のECサイト向けに「BuySmart Web」というソリューションを提供することで市場の拡大を狙うという。

 BuySmart Webは,決済サーバをサイバーキャッシュ側で用意することにより,ECサイトを経由しない決済フローを実現するのが特徴。初期導入コストが9万8000円と低額で,月額料金は定額制と従量課金制の2種類を備えている。

 「名の通っていないECサイトでは,クレジットカードの利用に不安を覚えるユーザーも少なくない。BuySmartでは,ECサイトを介さないため,サイト運営者側の不備でクレジットカード番号が漏洩する心配はない」(サイバーキャッシュ)

 ただ,今でもサイバーキャッシュというと電子マネーのイメージが強いため,「エンドユーザー向けに啓蒙活動を行い,サイバーキャッシュの名前が表示されているECサイトでは,安心してクレジットカードが利用できるとアピールしていく」(同社)方針だ。

 なおサイバーキャッシュでは,10月1日よりBuySmart Webの販売を開始し,今年度末までに700社の獲得を目指すとしている。

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[中村琢磨, ITmedia]

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