News 2000年9月14日 11:27 PM 更新

PalmやEPOCも速くなる──MediaQの製品ロードマップから

 インターネット端末向けのLCDコントローラなどを手掛ける米MediaQが,9月11日に日本法人を設立した。これに合わせて来日した米MediaQの社長兼CEO,Elie Antoun氏は,LCDコントローラのロードマップを一部明らかにするとともに,Palm OSやEPOC32といった携帯端末OSへのポーティングが順調であることを強調した。

 米MediaQは,1997年に設立されたばかりのベンチャー企業だ。しかしながら,同社の128ビットディスプレイコントローラ「MQ-200」は,NECの「MobileGear II」をはじめ,日立製作所のWindows CE端末(米国版PERSONA),ナナオのWebターミナルなど,多くの国内メーカーに採用された実績がある。採用した製品を見ても分かるように,その特徴は“マルチOS”“マルチCPU”。東芝やNECのMIPSチップをはじめ,日立製作所のSHシリーズ,そしてインテルのStrongARMといったプロセッサをサポートする。対応OSもWindows CE,Pocket PC,Linuxと豊富だ。これは,同社がフォーカスするWebターミナル,ハンドヘルド,スマートフォンという3つの市場に標準が存在しないため。Antoun氏は「System on a Chipに近い形だが,顧客によって異なるCPUをサポートしなければならない。今後,数年は(MQ-200の製品ラインに)CPUを内蔵することはないだろう」と話している。

Palm OSやEPOCにもポーティング

 同社のロードマップ図には,1998年に投入した最初の製品「MQ-100」から分岐して,2つの製品ラインが描かれている。一方は,現在の主力製品となっている「MQ-200」とその後継チップだ。こちらは,WebターミナルやWebパッドなど比較的大型のデバイスに向けたラインで,128ビットのグラフィックコア,2Mバイト以上のオンチップメモリといった特徴がある。ロードマップによると,MQ-200の後継チップは2000年11月にファーストシリコンが登場し,2001年の1月にサンプル出荷,7月には量産出荷を始めるという。「次期製品では,これまでの倍にあたるメモリとI/O機能を統合する」(Antoun氏)。

 

 一方,ハンドヘルドPCやスマートフォンに向けたラインでは,2001年までに2つの新チップが登場する。まず,256Kバイトのメモリ(SRAM)を統合し,320×320ピクセル,6万4000色表示が可能な「MQ-PDA1」(仮称)が2000年末までに投入される。USBやシリアルポートのほか,AC97オーディオコーデックも内蔵。「11月にはPalm OSに向けたポーティング作業が完了する」(Antoun氏)ため,あるいは大画面&ステレオ音声のPalmデバイスを投入するベンダーも現れるかもしれない。また,MQ-PDA1に含まれるグラフィックコントローラと2Dアクセラレーションにより,描画も速くなるはずだ。「Windows CEやPalm OSのデバイスに向けて,既に数社のベンダーと交渉が行われている。また,今月中にシンビアンのEPOC 32もMQ-200のポーティング作業が終わる予定だ」(Antoun氏)。MQ-PDA1は,2000年12月に生産を開始する。

 続いて,2001年8月にはスマートフォン向けの「MQ-PDA/SP」(仮称)のサンプル出荷が始まる。これは,MediaQとして初めてCPUを統合し,またBluetoothや各種のマルチメディアコーデックを内蔵するワンチップソリューションだ。MediaQはCPUコアを持たないため,他社との協業になるが,「まだプロセッサは決めていない」(Antoun氏)という。

 しかしながら,日立製作所のSH-4のように,自社でCPUコアと周辺アナログ回路の技術を持つ企業は,そのコアを使って統合チップを開発できる。MediaQのビジネスモデルでは,それまでパートナーだった企業が,次の日から競合になる可能性も否定できない。Antoun氏は,「われわれは,技術的な優位性はもちろん,約束したスケジュールと機能の実現を確実にこなして顧客の信頼を得る。MQ-200の顧客は日本企業が8割を占めており,日本法人の設立で顧客との関係を深めるつもりだ」と話している。

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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