News 2000年9月26日 11:20 PM 更新

音楽配信システムASPのRioport.com,目指すはネット配信業界の“Last Person Standing”

音楽配信システムASPの米Rioport.comは,コンテンツからシステム,再生ソフトまでワンストップで提供する強みを生かして業界のリーダーを目指す。

 「Napster? 楽曲を簡単に購入できるシステムがないからユーザーは音楽を“盗む”のだ」。音楽配信システムのASPサービスを提供する米Rioport.com社長兼CEOのJim Long氏によると,Napsterの爆発的な普及はデジタル音楽市場の潜在的な大きさを示すものだという。同社は音楽配信システムをポータルサイトなどに提供するASPで,日本法人を今年3月に設立した。コンテンツの確保に課題を残すが,「長い目で見れば音楽コンテンツがネットで流通するのは間違いない」と事業の将来性を強調している。

 Rioport.comは,MP3プレーヤー「Rio」シリーズの米Diamond Multimedia(現S3)からスピンアウトして設立された。コンテンツ配信サーバからコンテンツ管理,再生用クライアントソフトまで,音楽配信システムを一貫して提供するASP事業を展開する。同社自体は表に出ることはなく,契約サイトの配信サービスを代行する形をとっており,米国ではMTV.comやVH1.comなどが同社と提携している。

 Long氏によると「コンテンツ獲得から配信までワンストップで提供できる点がRioportの強み」。同社のシステムを利用すれば,ユーザーはレコード会社による配信システムの違いにわずらわされることなく楽曲をダウンロードすることができる上,Rioなど携帯プレーヤーとの連携もスムーズだという。

 日本法人のリオポートドットコムは,同社の海外展開の第1弾として設立された。今年4月に三菱商事と音楽配信事業で提携。ソフトバンク系の音楽配信会社であるイーズ・ミュージックが,Rioportの再生ソフト「Audio Manager」を標準プレーヤーとして採用している。また6月にはニフティと提携し,@niftyの音楽配信サイト「Digital Music Store」の運営をサポートしている。

 リオポートドットコムの遠藤信久社長は「日本では米国のコンテンツを輸入するのではなく,日本独自のコンテンツ収集を目指している」と話す。落語や漫才,英会話の教材に加え,新聞や雑誌を読み上げて吹き込んだ音声データなどをそろえていく考えだ。

邦楽メジャー楽曲を獲得する可能性は「ある」

 だが配信サービスの本命はやはり音楽。国内で事業を軌道に乗せるには,邦楽メジャーの楽曲獲得が不可欠だ。ところが今年4月,大手レコード会社12レーベルが共同で,配信会社「レーベルゲート」の設立を発表した。音楽のネット配信を自ら主導したい大手レコード会社の合従連衡により,新規参入組がメジャー楽曲を獲得するのは難しい状況となっている(4月6日の記事参照)。

 コンテンツ供給まで含むワンストップの配信サービス提供をうたう同社としては,メジャー楽曲を提供できないのは痛いところだ。ただ,米国ではUniversalと提携したのに加え,ほかの大手とも交渉を進めているという。そのため米国系の国内レーベルとは「米国と同様に交渉中」(遠藤社長)という。また「レーベルゲートに加わっていないレコード会社もたくさんある。交渉先については明らかにできないが,国内メジャーを獲得できる可能性はある」(同)といい,数年後には30億円程度の売上を目指している。

 さらに遠藤社長は「ネット音楽配信がもっと普及すればコンテンツは自然についてくる」との見方を示す。現在のネット配信はPCと携帯プレーヤーをベースとしているが,より手軽で身近なネット家電とブロードバンドの普及がネット配信の本番だと見ている。Long氏は「ネット配信では先行によるメリットはあまりないだろう。それより“Last Person Standing”(最後に残った者)が重要であり,Rioportはそれを目指している」と語った。

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[小林伸也,ITmedia]

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