News 2000年9月27日 11:01 PM 更新

モバイルソリューションで差別化を図るLotus

あらゆる端末からナレッジへとアクセス可能にすることを約束する「ナレッジ・トランスペアレンシー」。このキーワードをもとに,モバイルソリューションを進めるLotusの意図は?

 ベルリンでプライベートイベントの「Lotusphere Europe 2000」を開催している米Lotus Developmentは,携帯電話向けソリューションを非常に強く押し出している。日本では当たり前。いやむしろ,遅すぎるという見方もある。しかし,Lotusが米国の企業ということを考えれば,用意周到にワールドワイドのモバイル戦略を練ってきたLotusに驚きを隠せない。

 というのも,米国ではやっと携帯端末としての携帯電話が注目を浴び始めたばかりだからだ。米Microsoftの「.NET」に見られるように,ビジョンとしての携帯電話戦略はあっても,実際の製品とリンクしたワールドワイドの戦略発表は,大手の米国ソフトウェア会社としては,おそらくLotusの発表が初めてではなかろうか。

 別記事にも掲載したように,Lotusは新バージョンの「Sametime 2.0」に,SGM WAP端末のインスタントメッセージと連携する機能を実装した。この機能を利用すれば,外出中の営業を捕まえ,急な連絡を取ったり,急を要する承認や数字のすり合わせなどをリアルタイムに行うことができるようになる。

 さらにアプリケーションに統合することで,ワークフローから発生する業務指示や承認作業,スケジューラと連携して予定の変更を送信するなど,さまざまな方面から携帯電話をより効率よく活用できる。

 Lotusは,ナレッジポータルへのアクセスや活用を,WAP端末から透過的に利用できるようにするつもりだ。Lotus社長兼CEOのAl Zollar氏が掲げた「ナレッジ・トランスペアレンシー」というキーワードは,あらゆる端末からナレッジへとアクセス可能にすることを約束するものだ。

 Lotusの関係者によると,こうしたモバイルソリューションの強化は,欧州でのWAPの盛り上がりにある。もともと,携帯電話からのインターネットアクセスは日本が先行し,米国の一部ベンダーが追随,欧州は遅れ目というイメージがあった。しかし,欧州でのWAPは1年ほど前から急速に盛り上がりつつある。GSM携帯電話のネットワークとインターネットのゲートウェイは,欧州全体で100カ所以上にも上っているという。日本での盛り上がりと携帯電話対応への要求に加え,欧州からの強い要望でLotus本体が動いた。

 Lotusは日本独自の製品として,NTTドコモと共同開発した「Domino Mobile Server 」があるが,そのGSM版を開発し,欧州市場に投入する。Lotusphere Europe 2000には日本のDomino Mobile Server担当者のほか,NTTドコモも人を送り込み,欧州向けのプレゼンテーションを行っている。

 一方,米国を中心に企業でも利用されているPalm OS搭載機向けには,今年1月のLotusphere 2000で開発の意向が発表されていた「Mobile Notes」が用意される。Mobile Notesは,ドミノ上で動作するアプリケーションのレプリカをPalm OS搭載機に持ち,PDA上でドミノのデータにアクセスできるほか,フォームの入力を行うこともできる。データベースはXMLベースで交換する。


Palm Vx上で動く「Mobile Notes」

 Mobile Notesは,既に動作するバージョンが存在しており,プレスカンファレンスでは実際に動作しているところがデモンストレーションされた。Palm OS搭載機上で入力されたフォームは,PCとの同期を行った段階でドミノに引き渡される。

 日本では,企業向けのPDAとしてPalm OS搭載機は普及していない。ライバルのWindows CE搭載機がより多く使われているため,そのまま日本市場に持ち込んでもうまくいかないだろう。日本での展開は未定というが,どんなデバイスからでも透過的に知識情報にアクセスするというLotusの戦略からすれば,この分野を欠落させるわけにはいかないはずだ。

[本田雅一, ITmedia]

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