News 2000年9月29日 08:49 PM 更新

ネットアプライアンスも“標準”であるべきか

 ソニーから,「エアボード」が発表された。個人的にはとても面白いアプローチだと思う。今年は,各メーカーから,たくさんインターネットアプライアンスが発表されると予想されていたのだが,意外に,それほどは出てこないなぁ……と思っていた矢先の発表だった。

 が,この手のものを見るたびに,ちょっとだけ心配になるのは,「Webブラウザ以外のアプリケーションを誰が作るんだろう?」ということだ。Webは偉大だ。ハードウェアやOSの制約を最低限に抑え,HTTPのプロトコルを使ってやりとりされるHTMLを解釈し,ページとしてレンダリングするブラウザさえあれば,世の中の多くのWebページは十分に楽しめる。ASPなども,機種やOSに依存しないものをブラウザから利用することができる。でも,その一方で,ちょっとしたプラグインを必要とするようなWebページを楽しむためには,どうしても誰かがソフトウェアを書かないとならないわけだ。

 WindowsやMacintoshがすべてとはいわないけれど,アプライアンス,特にインターネットを利用するような環境を用意する場合には,このあたりを,誰が,どのようにフォローアップするのかを考えておかなければならない。今はまだ,iモードでShockwaveを動かそうとか,PDFを見ようなんて思わないし,大きな混乱も起きていないけれど,そういうニーズが出てきたりすることは十分に予想ができる。エアボードだって同じだ。

 例えば,ソニーが,今後同社が発売するすべてのアプライアンスに対して,このプラットフォームを採用し,APIなどをオープンにするといった気でいるのなら,そこで動かすことができるプラグインなどを提供しようという動きも出てくるのだろうが,特に,そういう話は聞かない。

インターネットアプライアンスはワープロ専用機の再来?

 ぼくは,日本という国におけるパソコンの普及が,パーソナルワープロという文化によって,多少足踏みしてしまったと感じている。今からいっても仕方がないことだとは思うが,あの時期がなければ,今,パソコンはもっと普及していたに違いない。そして,それは,自動的に,インターネットのインフラが,もっと充実する動きにつながっていたはずだ。

 現状で製品化されているインターネットアプライアンスは,一歩間違えば,あのワープロ専用機の再来となってしまう可能性を秘めているのではないだろうか。それだけならまだガマンできても,今のWebが,貧弱な環境に合わせてどんどんつまらなくなってしまうのでは本末転倒だと思う。もちろん,そっちのボリュームがグングン大きくなって,そこだけで十分なビジネスが成立するという考え方もあるけれど,ちょっと複雑な気分だ。

 その点,Intelなどの動きは堅実だ。アプライアンスのリファレンスを作っても,OSにはLinuxを採用したり,携帯電話用のマイクロアーキテクチャを提唱するなど,第三者がビジネスに参入しやすいような環境作りを先にアピールしているからだ。Windowsにこだわる必要はないけれど,共通プラットフォームであるWindowsに代替するものを,きちんと提案できている点で,周りはずいぶん安心できる。

 モノとして優れたものを出すことは大切なことだけれど,それが,コンシューマーの文化に,将来にわたって,どのような幸せをもたらすのか。そのあたりのビジネスモデルと一緒に提案できなければ,今後の商品は成り立たないだろう。ソニーだからこそ,それができて然るべきだし,誰もがそれを期待する。先日とりあげた松下のマルチメディアパソコンがWindowsにこだわったのとは対象的なだけに,これからの動きを気にしていたい。

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[山田祥平, ITmedia]

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