News 2000年10月3日 11:55 PM 更新

「IT革命の意味をはき違えるな」――富士通秋草社長の基調講演

富士通の秋草社長は,CEATEC JAPAN基調講演で森内閣のIT戦略を痛烈に批判した。

 富士通の秋草直之社長は10月3日,幕張メッセで開幕した「CEATEC JAPAN 2000」で「IT革命とは何を目指すべきか」と題した基調講演を行い,その中で,米国電子政府の実例を挙げながら,森内閣のIT戦略について痛烈な批判を展開した。


富士通の秋草社長
 秋草社長は,講演の冒頭で「猫も杓子もIT革命,IT革命と呪文のように唱えているが,ITの定義を本当に理解している人は少ない」と述べ,「抽象的な言い方をすれば,そもそもITとは,電気や水道のように社会のインフラとして機能するものだ」と持論を展開した。

 秋草社長の講演で森内閣がやり玉にあがったのは,IT戦略の一環としてPCスクールでの授業料を援助する「IT講習券」を配布しようとしたためだ。IT講習券については,政府のIT戦略立案を担うIT戦略会議の出井議長(ソニー会長兼CEO)が「個人的には必要ないと思う」と発言して話題になったが,秋草社長は「わけが分からない。そんな狭い視点でIT化を捉えてはいけない」とかなり辛辣だ。

 「IT革命によって,消費者が豊かで楽しい生活を享受できるようにならければならない。それは,IT講習券などではなく,インターネットやPCが生活必需品になることを意味する」(秋草社長)

 秋草社長が,IT革命の1つのあり方として例に挙げたのが,米国電子政府の「FirstGov.gov」(www.firstgov.com/)。「FirstGovは総ページ数が100万ページを超え,膨大な情報を検索することができる。さらに,免許の更新やパスポートの申請といった手続きも可能だ」(同社長)

 秋草社長によれば,FirstGovが優れているのは,各種手続きをオンラインで済ませられるからではなく,「消費者へのサービス」という発想に基づいているからだという。

 「こうした考え方は日本人には難しいかもしれないが,(森)総理はIT革命に熱心のようだから,(日本は)国土が狭いだけに,動き出せばすぐに電子政府は立ち上がるはず」(同社長)

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[中村琢磨, ITmedia]

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