News 2000年10月6日 11:49 PM 更新

電源コンセントでネットに接続──家電ネットワーク「エコーネット」をCEATECで見た

PCやAV機器を結ぶホームネットワーク構想は花盛りだが,白物家電を結ぶ「エコーネット」はあまり知られていない。コンセントに電源プラグを差し込めばOKの“家電感覚”が特徴だ。

 家庭内の家電をネットワーク化して効率良く利用する「ホームネットワーク」。今のところ,テレビやオーディオ機器とPCをつなぐマルチメディア重視型のネットワーク構想が花盛りで,「CEATEC JAPAN 2000」でも各社が競って関連製品を出品している。その一方で,地味ながら生活に密着した家電製品をネットワーク化する技術が本格的に立ち上がろうとしている。接続のためにケーブルを引き回す必要もなく,コンセントに電源プラグを差し込むだけ,という文字通り“家電感覚”のネットワーク,「エコーネット」のデモを三菱電機と松下電器産業のブースで見た。

 エコーネットは,いわゆる白物家電を接続するネットワークの規格名だ。1997年,三菱と松下,東芝,日立製作所の4社を幹事会社としてコンソーシアムが発足。今年に入ってバージョン1.0の基本仕様が決まり,ようやく製品レベルでの具体化が見えてきた。

 エコーネットはその名前の通り,家電製品の一層の省エネ化が目的だ。省エネ技術は進んでいるにもかかわらず,一戸当たりの家電数は増える一方で,これらをネットワーク化して効率良く利用するのが元々の目的だ。そのためAV関連ネットワークとの直接の相互接続は考えずに設計された。AVネットワークとはゲートウェイコントローラを介して接続できるよう考えられている。

 機器間の接続には各家庭に必ず装備されている電灯線を利用する。対応家電や各機器を集中制御するコントローラは,電源プラグをコンセントに差し込めば,プラグ&プレイでネットワークに接続される。面倒なケーブル配線や知識は必要なく,既存の住宅でも設備工事なしにネットワークを構築できる。また白物家電の価格帯に配慮し,伝送速度を遅めにすることで通信用チップのコストを抑えた。


三菱電機の電灯線モデムモジュール。伝送速度は4Kbpsから36Kbps程度

 三菱電機のブースでは,エコーネットを利用したホームネットワークのデモが行われている。ここで中心となるのは,Webサーバ機能を内蔵したゲートウェイコントローラ。ネット接続対応の携帯電話でゲートウェイにアクセスし,接続機器をリモートコントロールできる仕組みになっている。今回は,携帯電話でエアコンを操作したり,小型カメラで室内を撮影,携帯電話で様子を確認するといったデモが行われた。松下電器産業も,エアコン操作やホームセキュリティ関連でエコーネットを活用したデモを行っていた。


三菱ブースで行われた,携帯電話でエアコンや室内カメラを操作するデモ。ゲートウェイとTVを接続し,携帯から番組予約を行うデモも


松下ブースでも,エアコン操作やホームセキュリティのデモ実施

 三菱電機の電灯線用モデムモジュールは2001年1月以降に発売される予定。松下の通信モジュールも2001年4月の発売予定で,「通信モジュールを組み込んだ対応製品が出てくるのはそれ以降」(三菱電機)という。最初に出てくる製品はやはり,「既に実現可能なエアコン」(同)らしい。


ソムフィのエコーネット対応ブラインド。実に地味だが,リモート操作が可能なら便利に違いない

 AV関連のネットワーク構想と比べると,なんとも地味なエコーネットだが,白物家電の制御に加えて高齢者の介護システムにも応用が可能。また日本の住宅事情を考えると,電灯線を使ったネットワークは有望だ。四国電力とACCESSも,電灯線を使ったホームネットワークの実用化に取り組んでいる(1998年9月18日の記事参照)。また電灯線によるEthernetも既に実用化され,ルータなど関連機器も発売されている。電源プラグを差し込めば,電源供給とネット接続が同時にOK──Bluetoothや無線LAN以上に便利な家庭向けネット接続が近い将来に実現するかもしれない。

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[小林伸也, ITmedia]

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