News 2000年11月1日 03:47 PM 更新

Adobe,電子出版「第3の波」到来を宣言。出版クリエイター向けの新サービスも

Adobeは,ネットワーク上でドキュメントの共有やワークフローなどのサービスを実現するASPの立ち上げなどを計画している。

 米Adobe Systemsはカリフォルニア州サンノゼのテックミュージアムで記者会見を開き,電子出版業界に訪れようとしているネットワークパブリッシング時代と,それに対応するAdobeの戦略について発表した。

 Adobe会長兼CEOのJohn E. Warnock氏は「電子出版はMacの登場とともにDTPとして1980年代に始まり,1990年代にはWebパブリッシングの時代が到来した。そして2000年。これからネットワークパブリッシングの時代が始まろうとしている」と同社のビジョンを紹介した。


Adobe会長兼CEOのJohn Warnock氏

 ネットワークパブリッシングとは,すべてのコンテンツがネットワーク上で統合され,Web,紙,PDA,携帯電話などあらゆるメディアを通じ,ユーザーが必要なとき,必要な手段でパブリッシュすることだ。Warnock氏は,今後数年にわたって変化していくだろうネットワークパブリッシングに向けて,出力メディアに依存しない出版環境を実現することをAdobeの戦略の主幹に据えると語った。

 Adobe社長のBruce Chizen氏は「現在の電子出版業界はWebや紙など,メディアごと別々に制作ワークフローがあり,本来は同じはずのコンテンツを別々に作業するといった無駄が生じている。ネットワークパブリッシングにおける出版制作に向けて,Adobeはこうしたワークフローを統合するための製品を出荷していく」と話す。

 Chizen氏は,ネットワークパブリッシング市場は今後大きな成長を遂げ,2004年にはワールドワイドで640億ドル規模に成長すると見る。Adobeはそのうちの120億ドルに関して,シェアを獲得するチャンスがあると語った。

 Adobeは現在ある出版業界向け製品を,XML,SVG,C-HTML,SMIL,WML,といったインターネットで使われるコンテンツ形式に対応させていくほか,ワークフロー改善を狙った新しいサービスを開始する。

 Adobeはエンタープライズ向けに出版ワークフロー,プロジェクト,バージョン管理などのツールを統合した「Inscope」を製品化しているが,ネットワーク上でドキュメントの共有やワークフローなどのサービスを実現するASP「Adobe Studio」を来春米国で開始する。

 Adobe Studioは5〜50人程度の小さなデザインオフィスや部署を対象にしたサービスで,出版ワークフローの各工程をインターネット上で管理し,複数オフィスが連携する出版プロセスを効率化させるものになるという。なお,日本でのAdobe Studio立ち上げに関しては未定だが,米国より数カ月遅れて立ち上がると予想されている。

 詳細は追って報告する。

[本田雅一, ITmedia]

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