News 2000年11月1日 11:59 PM 更新

CSKグループ総帥の大川功氏,セガについて大いに語る(1)

セガの事業説明会の席上,CSKグループ総帥の大川功氏が登場,セガグループのこれまでの経緯や今後の再建方針について語った。

 セガ(7964)が行った事業計画説明会に同社代表取締役会長兼社長で,親会社のCSK(9737)の名誉会長でもある大川功氏が登場,1時間近くに渡って「大川節」を鳴り響かせた。

 ゲーム業界の展望から入交氏の副会長退任の真相まで,歯に絹着せぬその発言内容のさわりを,ここにお届けしよう(構成 中川純一)。

「セガには経営の「ケ」の字もなかった」

 97年6月にセガの代表権を持ち,その経営に本格的にタッチし始めた大川氏。だが,その経営実態は呆れるばかりのものだったという。

 「横から見ていてもムチャクチャやった。製品の納期といえば,いつできるかわからない。いくらかかるかもわからない。」

 「商売の基本は『物を渡して,お金をもらって終わる』。ところがそんな認識もない。だから金を借りて商売しているのに,滞留債権の山でも平気でいる。在庫ゼロが理想なのに,責任不在で生産するから,不良在庫の山になる。それが海外子会社や孫会社に山積していた。とにかく金に甘かった」

 「ボクがなにか言っても,中山君(中山隼雄元社長)は大川さんはゲーム業界を知らないって言っていたが,ボクは商売を知っている。彼らはゲームは知っていても,商売を知らなかった」

 「結局セガはP/Lばかり追いかけて,B/Sなんか考えない経営体質だった。キャッシュフローなんて,なーんにも考えていない」

 同氏はそんなセガの体質を変えるために,オーナーとして3つの決断をしたという。まず,経営陣を刷新して,不良在庫を一掃,店舗閉鎖や流通合理化を進めた。これまで1500億円を超す特損を計上したが,これで「過去の膿みは全部出しきった」という。

 また,同社はこれまで分社化を進めてきたが,その最大の狙いが「経営を知ってもらうことだった」ことも明かした。

 「こんな凄いグラフィックができるんですよって言って,それが40億円かかるという。それが回収できるかとか考えていない。でも分社化で経営者になれば,納期や売掛の回収にも必死にならなければなくなる。分社化は経営感覚を植え付けるためだった」

 第2の決断が,財務面の不安解消に私財を投じて総額1000億円の第3者割当増資を実行したことだ。そして第3が,今回鮮明になったネットワークへのシフトである。

「ネットワーク機能がなかったら,ハードは閉めていた」

 大川氏は,これまで進めてきたDreamcast戦略について,必ずしも納得していなかったようだ。

 「これからはゲームも音楽もなにもダウンロードになる。これが世の中の流れなんです。ハードウェアのビジネス(製造・流通・在庫のビジネス)なんかするつもりはない。しかし,(代表権を持った)97年6月の時には,すでにハード(Dreamcast)の構想がスタートしていた」

 「だから,無理を言ってモデム機能だけは搭載させた。当時,何千円もするモデムを搭載するなんて,と社内は反対が多かった。でも,これは反対を押し切った。今,Dreamcastは,これをつけているからまだ生きている。これがなかったら,ハードは閉めていた」

 「ゲーム市場は成熟している。ゲームオタク向けの市場は冷え込んでいる。だが,インターネットでは,小さなコミュニティが無数に出現している。インターネット時代では,個人が放送局や出版社になれる。『ゲームの部品化やモジュール化』で,素人が勝つことだってできるんです。音楽や映画も同じ。このインターネットの流れは,誰も否定できない」

 「バーチャルな世界で,個人が自分の自己顕示欲を満たせるような場が,これから必要です。(セガは)その場を提供する。たとえば,競馬の馬や野球選手なんかを育成して,それを露出させる『場』とか。そこから先にいろんなビジネスがある。何が出てくるか,わからない」

 今期,同社はDreamcastの値下げによって,ハード事業の連結営業損失が403億円まで膨らむ見通しとなった。だが,同氏は「損を出しても,未来のネットワークビジネスを進める道を選んだ」という。

 「ケチケチしていてはアドバンスは取れない。在庫で持つぐらいやったら,やってまえ,と言った」

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