News:“賃貸住宅ブロードバンド”のススメ──後編 2000年11月2日 11:59 PM 更新

“賃貸住宅ブロードバンド”のススメ──後編:一応ハッピーエンド(1)

通勤時間と広帯域常時接続環境のために引っ越しを決意したある編集者の手記。感動の大団円?

前回までのあらすじ
ブロードバンド時代を生き抜くため,CATVを引こうとした某編集者が賃貸ワンルームマンションを舞台に壮大な冒険を繰り広げる(嘘)。詳しくはこちらをどうぞ。

さらばDSL

 9月某日,いよいよ引っ越し。たまりにたまった十数台のパソコンを運ぶため,独り身のくせに3トントラックを呼んだ。ここで5万円の出費は痛い。それはそれとして,段ボールの山に囲まれながら,早速,PHSでNTTに電話した。引っ越し前に地元局に連絡した際,新住所の担当局まで転送してくれたので話は早い。ISDNの工事は2日後の朝に決まった。しかし,そこで衝撃の事実を知る。

「お部屋にモジュラージャックが2つ付いてますよね」

はい。

「それ,前に住んでいた人が1回線を中で分岐させたみたいなんです」

なに?

「どちらか1つでいいですか?」

……やだ。

 2回線入っているワケではなかったらしい。ISDN回線は仕事の都合で維持しなければならないから……つまり,ADSLという保険が消えてしまったのだ。考えてみれば,ちょっと広めとはいえ,ワンルームに2回線というのも変な話だが,わざわざ壁面のパネルを変えてまで分岐させる人はいないだろうと思っていた。人間とは,自分に都合の良いように想像してしまう生き物なのだ。それにしても,狭い部屋の中に電話機2台も置くなよ>前の住人。自信満々で「2回線です」なんて言うなよ>不動産屋。

 既に引っ越してしまったものは仕方がない。気を取り直して,最後の保険である「フレッツ・ISDN」について尋ねてみる。

今頼むと,いつ頃になりますか?

「2カ月待ちでございます」。

ちょっとはすまなそうに言えよ>NTT。

渡る世間は同業者

 いよいよケーブルを引くしかないと覚悟して,隣の大家さん宅に菓子折を持って挨拶に行く。大家さんは,感じのいい老夫婦だ。ケーブルTVでインターネットしたいと言って通じるか? などと思いきや……「ウチの娘もケーブルインターネットやりたいって言ってるんだ。ついでに頼んでくれない?」ときたもんだ。想像していたのと全く違う反応に面食らう。聞けば,マンションの3階は1フロアすべて娘さん夫婦の住居で,しかもニフティでコンテンツ制作の仕事に携わっているとか。こんなところで同業者に遭うとは,世の中広いようで狭い,というよりも,ネットが身近になった証拠なのだろう。

 当初思い描いていたシナリオとは随分違うが,とりあえずケーブルは引けるようになった。早速,同意書を手渡して記名してもらい,最大の難関は突破したと一安心。ただ,同意書をしっかりコピーして,娘さんの分までこちらに託されたのには驚いたけど。(東急ケーブルに相談したところ,別途手続きと工事が必要と言われてしまった。大家さん。お役に立てなくて申し訳ない)。

 賃貸アパートなどでケーブルを引く場合,最大の障害になるのがこの「同意書」だ。同意書には大家のサイン欄のほかに,ご丁寧に「壁に穴を開ける云々」(表現はちょっと違う)といったちょっと刺激的な工事方法がいくつか記されており,事前調査に来たケーブル会社の営業マンが該当する方法にチェックを入れてから手渡される。困ったことに,書面の真ん中に工事方法が書かれているため,どうしても大家さんの目に止まってしまうのだ(当たり前)。従って,大家に見せるときには,しっかり隠して……じゃなくて,しっかり説明できるようにしておいたほうがいいだろう。営業マンに尋ねれば,ケーブルの引き込み方法や保安器の設置場所などを細かく教えてくれる。特に,電柱から引っ張ってきた同軸ケーブルを建物の外側に固定するアンカーと,やはり外側にネジ止めしなければならない保安器は要注意。なんとか建物に手を加えず,目立たなくする方法を考えてもらおう。

 今回の場合,アンカーを打ち込むのは電話線や電気のケーブルを固定しているアンカーのすぐ横に,そして保安器も同じ場所に取り付けてもらうことにした。3階の高さなので,外から見た分には変化はないという判断だ。ただし,部屋にケーブルを引き入れる空気穴が電柱とは逆方向にあるため,建物の外側をぐるりと半周するようにケーブルを巡らさなければならない。隣は大家さん宅の庭なので,コンクリートの壁面に沿って引き回してもらうことになった。営業マンには「なるべく建物に釘を打ち込まないように」と念を押し,地面にケーブルをたらす形をとる。

 こういった注文を事前に営業マンに伝えておけば,工事業者も相応の対応をしてくれるようだ。ただし,東急ケーブルのSさんによると「ケーブル会社としては,後々のことも考えてしっかり工事したいところです」ということなので,そちらの立場も考えて,あまり無茶なお願いはしないよーに。

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