News 2000年11月15日 10:38 PM 更新

USB2.0,普及は2001年末にずれ込むか――慎重を期すMicrosoft

COMDEXで姿を見せたUSB2.0。しかし普及はさらにずれ込み,「来年暮れがいいところ」だという。原因の1つは“失敗”の繰り返しを恐れるMicrosoftにあるという。

 「COMDEX/Fall 2000」に設けられた「USB Pavilion」では,最大480Mbpsの転送速度を実現するUSB2.0のデモが行なわれている。ようやく姿を見せたUSB2.0だが,本格普及はさらにずれ込み,「順調にいって2001年の年末商戦」との見方が強まっている。そして原因はMicrosoftにあるらしい。

 USB2.0は,理論値で最大480Mbps(60Mバイト/秒)の転送速度を持つ高速インタフェースだ。現行のUSB1.1(最大12Mbps)ではムービーなど大容量ファイルを扱うには限界に達しており,これと完全に互換性を保った次世代インタフェースとして,米Intelなどが仕様策定を進めてきた。しかし同様のスピードを持つIEEE 1394インタフェースが普及期に入ったのに比べると出遅れている。


富士通が出展したUSB2.0対応のGIGAMO。DVフォーマットのムービーを再生していた。USB2.0のインタフェースは米In-system DESIGN製

 USB2.0の普及時期については,「2001年夏には,USB2.0を搭載したPCが当たり前になっているだろう」として来夏のボーナス商戦が端緒になるとの予測があった(10月19日の記事参照)。ところが複数の関係者によると,「来年夏はどう考えても無理。ベストに進んで,来年の暮れがいいところだろう」とトーンダウンしている。

 なぜか。話を総合すると,「ドライバのサポートがない限り製品を出しようがない」――つまりMicrosoftによるUSB2.0ドライバのサポートが遅れているのだという。USB2.0ドライバを含んだWindows 2000用サービスパックは来年第1四半期のリリースが予想されていたが,これが来年半ば以降にずれ込むらしい。


米Orange MicroのUSB2.0ホストアダプタ

 Windows 98のユーザーなら,たいがいはUSB関連で泣かされた経験を持っているだろう。MicrosoftはUSB1.1のリリース時,ドライバの不備で「ボロカスにけなされた」(関係者)経緯がある。そのため2.0では1.1の教訓を生かし,「相当コンサバティブになっている」(同関係者)というのだ。

 ドライバがリリースされたとしても,今度はメーカーによるインターオペラビリティの検証作業が待っている。「真っ先に製品を発表したとしても,その後に出てくる製品とつながらないのでは恥ずかしい」(同関係者)ため,それなりの時間をかける必要が出てくる。となるとやはり「来年のCOMDEX/Fallで対応製品のお披露目」(同関係者)というスケジュールが堅いようだ。

 従って,エンドユーザーがUSB2.0の恩恵にあずかるにはもう1年待つ必要がある。しかしIEEE 1394が広く普及する兆しを見せており,この1年でもポートを備えたPCが増えてきた。安価なPCでもオンボード実装が一般的になってくると,USB2.0の存在価値が問われかねない。バスパワー出力の大きさやAV機器との親和性など,現時点でもIEEE 1394のアドバンテージは高く,普及の遅れがUSB2.0の致命傷にもなりかねない情勢だ。


大阪のラトックシステムもUSB2.0対応ホストアダプタを出展。PCカード用も早速用意するところがラトックらしい


川崎製鉄LSI事業部が出展したUSB2.0トランシーバーLSI。現在評価中で,サンプル出荷,量産出荷ともに2001年第1四半期を予定

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[小林伸也, ITmedia]

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