News | 2000年11月16日 11:59 PM 更新 |
11月16日,「Audio Expo 2000」が東京有明の国際展示場で開幕した。今年は西展示場の1,2ホールを使い,国内外の82社が出展している。展示内容は,10月の「CEATEC JAPAN」や「WORLD PC EXPO」で既に見たものばかりだが,注目のブースが2つある。ポストCDとしてDVD-Audioを推す10社が共同で出展した「DVDオーディオ共同ブース」と,同じくSACDを進める「スーパーオーディオCDグループ」だ。
DVD-Audioは,DVDコンソーシアムのWG4が策定した標準規格。従来からあるPCM方式を採用し,192KHz/24ビットの2チャンネルに加え,5.1チャンネルサラウンド対応,動画対応など,ソフトに合わせて多彩な見せ方ができるのが特徴だ。最大96KHzの再生周波数帯域を実現し,ダイナミックレンジも144db(デシベル)と既存のCDを大きく上回る。
一方,ライバルのSACDは,DSD(Direct Stream Digital)と呼ばれる記録方式を採用しているのが特徴で,再生周波数は100KHz,ダイナミックレンジは120db以上。純粋に音質を追求した規格であり,ハイエンドユーザー層に受け入れられ始めている。ソニー主導のもと,この1年でタイトル数を飛躍的に増やした。
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DVDオーディオ共同ブース。対応プレーヤーは多いがソフトは少ない |
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スーパーオーディオCDグループのブース。ソフトの充実度は比較にならない。対応プレーヤーは12機種 |
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LAXMANが参考出展したのはSACDとDVD-Audio両対応のハイエンドモデル「DU-10」。重量(20キロ)もハイエンドなら価格(88万円)もハイエンド。11月中に発売される予定だ |
実際,スーパーオーディオCDグループのブースには,166タイトルものソフトが展示されているのに対し,DVDオーディオ共同ブースにソフトはほとんどない。これは,DVD-Videoのコピーガードシステムが破られたこと(1999年12月1日,2000年8月2日の記事を参照)に端を発し,大手レコードメーカー各社から著作権保護の安全性について横やりが入ったため。コピーガードの仕様変更によるハードウェアの出荷延期に加え,デジタルコピーの可否を巡って議論が長引き,未だ対応ソフトの本格出荷に至っていない。SACDよりも早く登場したにも関わらず,DVD-Audioは競争の第1ラウンドで劣勢を強いられている。
この状況に危機感を抱いたDVD-Audio陣営は,急遽AUDIO EXPOの会場に報道関係者を集め,共同ブースのオープニングレセプションを開催した。このイベントでは,米Warner Musicの新技術担当上級副社長であるJordan Rost氏が壇上に上がり,同社が11月14日に米国で7つのDVD-Audioタイトルを出荷したことを明らかにするとともに,DVD-Audioがいかに有望な規格であるかを語った。
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Warner MusicのJordan Rost氏。しかし,DVD-Audioが出遅れたのはWarnerを含む米国5大音楽レーベルが横やりを入れたためだったりする |
Rost氏は,DVD-Audioの遅れについて,「現在あるものだけで将来を決めるのはやめよう。いずれ,生まれるのにかかった時間など忘れてしまう」とフォロー。SACDを引き合いに出すことはなかったが,それはコンテンツ提供者という立場上,仕方のないことだ。
「CDやウォークマンが誕生したときのことを思い出して欲しい。CDの最初のタイトルや初代ウォークマンのサイズを憶えている人がいるだろうか? ハッキリしているのは,1979年と1983年(ウォークマン,CDが登場した年)は成長が始まった年だということだ」(Rost氏)。
同じく挨拶に立った松下電器産業AVC社副社長の大坪文雄氏によると,年末までにはDVD-Audio対応プレーヤーが20機種投入される予定だという。「ワーナーに続き,多くのソフトメーカーがオーサリング作業に着手しはじめた。いよいよ市場拡大の前夜だと解釈している」(大坪氏)。
競争の第2ラウンドはどちらに軍配があがるのか。それはソフトとハード両面の充実にかかっている。
AUDIO EXPO 2000の開催期間は11月19日まで。入場料は1000円。
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