News 2000年11月20日 11:59 PM 更新

電子ペーパー実現間近──キヤノン,ペーパーライク・ディスプレイを展示

紙のように使える,安価で読みやすいディスプレイが,あと10年も経たずして登場する。新聞などの紙媒体は今度こそ消えてしまうかもしれない。

 11月20日から東京の新高輪ホテルで開催されているCANON EXPO 2000@TOKYOでは,「ペーパーライク・ディスプレイ」が参考出展されている。


将来の製品をイメージしたモックアップ。7年後,1000円程度で提供できるよう開発中だという

 究極のディスプレイの1つとして,紙のように柔軟で読みやすく,価格も安い電子ペーパーが挙げられる。キヤノンが展示したペーパーライク・ディスプレイは,随時書き換えが可能な上,一度表示させてしまえば電力を必要とせずに内容が保持できる。非常に紙に近いディスプレイだ。

 厚さは200μ〜300μメートルと非常に薄く,紙のように柔軟性もある。

 構造は意外と単純。2枚のプラスティックの間にコピー機で使われるようなトナーを封じ込めてある。数ボルト〜10ボルト程度の電圧をかけることで,トナーが吸着/離着して色が変化する。


実際に動作していた試作品。「Canon」の文字が反転を繰り返していた。紙に比べるとまだコントラストが高いとは言いがたいが,どんな液晶パネルよりも視認性は良いと感じた

 反応速度は20ミリ秒程度だが,1つの画素を小さくすることで上げることができるという。

 展示されていたのはモノクロの試作品だが,デジタルカメラと同じようにカラーフィルターを使うことでカラー化も可能だ。ただし,キヤノンはまずは究極の白黒ディスプレイを目指すという。「新聞のように気軽に持ち運べて視認性に優れたディスプレイが目標」(説明員)。

 このディスプレイは,2007年の発売を目指して開発中だ。現在はまだコスト削減を考える段階には至っていないが,発売時にはイメージモックアップと同じ形態で1枚1000円程度にするという。

 これまで“電子インク”“電子ペーパー”と呼ばれてきたものは,プラスティック上にトランジスタを印刷して,書き換え可能なインクのように使おうとするものが多かった。キヤノンの方式はそれよりも確実にコストを削減できるはずだ。

 電子ペーパーが目指すのは,まずは新聞など,持ち運んで帰りには捨ててしまうようなメディアだ。朝自宅でニュースを受信して表示し,電車の中で読み,帰宅前に新しいニュースを受信する……というような使い方が考えられている。配信コストや印刷コストの削減だけでなく,資源の節約,環境への配慮という意味合いもある。

 電子ペーパーの実現までには,確実にまだ数年はかかるだろう。しかし,もたらされるものは非常に大きい。

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[斎藤健二, ITmedia]

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