News 2000年12月1日 11:59 PM 更新

「.NET」戦略を再びアピールするMicrosoft

「.NET」フレームワーク初のコンポーネント「Visual Studio.NET」のベータ版もリリースされるなど,.NET構想は次第に実現に向かっている。

 12月1日,米Microsoftのプロダクティビティおよびビジネスサービスグループの副社長であるJeff Raikes氏が来日し,「.NET」戦略やタブレットPCについて語った。

 Jeff Raikes氏は,「Office」とその次世代製品である「Office.NET」,ビジネスアプリケーションやビジネスツール部門を率いている。

 .NETは次世代のプラットフォームとしてMicrosoftが推進しているものだが,非常に広範な戦略を差し示す言葉であるため,一言で示すのは非常に難しい。Raikes氏は,.NETを4つの要素に分けて解説した。

ユーザーインタフェース

 .NETの要素の1番めがユーザーインタフェースだ。Raikes氏は,.NETで音声認識や視覚認識,手書き文字認識を可能にしていくという。「COMDEX/Fall 2000」でBill Gates会長が初めて披露した「タブレットPC」を例に挙げ,次期WindowsであるWhistlerでは手書き文字認識を可能にし,その後継OSでは音声認識も搭載していく予定だ。

ユーザー経験

 豊富なユーザー体験を提供することが,.NETのポイントの1つだ。Office10で実装される予定の「タスクペイン」は多様なアプリケーションの各種機能を把握しやすくし,.NET対応OfficeであるOffice.NETではWebとデータのリンクを自動的に文書や電子メールに追加する「スマートタグ」機能が搭載されるという。

データをインターネットに格納する

 Raikes氏は,現在のPCとデータを巡る状況を「情報が1つのデバイスに結びついている」と表現する。.NETではインターネットに情報を格納して「スマートな形でさまざまなデバイスに複製を取る」ようになるという。これによって,1ヵ所にデータを置きながら複数のデバイスでこれを共有できるようにする。

ソフトウェアをWebベースのサービスと捉える

 また,ソフトウェアをWebベースのサービスと捉えることで,社外,社内のアプリケーションを結びつけて利用できるようにする。「電子商取引のサイトを立ち上げる際には,税金のコードを書かなくても,その部分はWebサービスを利用できるようになる」(Raikes氏)。

 後半の2つの要素は多少分かりにくいものだが,これまでPCというプラットフォームの上に載っていた「データ」や「ソフトウェア」が,インターネットというプラットフォームに載るようになる,と考えると分かりやすいかもしれない。「今後10年のうちにプラットフォームという概念をインターネットの雲の部分まで拡大する」(Raikes氏)。

 このように,.NET戦略においてはこれまで以上にインターネットが重要になる。そのため,WebサーバとしてのライバルとなるLinuxについては,「(Linuxは)ソフトのソリューションの密な統合が求められている。Microsoftの製品はそれについては有利だ。セキュリティ,マルチプロセッサ,カーネルにおける進歩では,(Linuxは)今後10年に求められるものに応えられない」(Raikes氏)と手厳しい。

 これまで構想ばかりが喧伝されていた.NETだが,「.NET」フレームワークの初のコンポーネントである「Visual Studio .NET」のフルベータ版が,COMDEX/Fall 2000ではリリースされている。

 「キャラクタベースからグラフィカルベースにインタフェースが進化したかことよりもインパクトのある変化」とRaikes氏は.NETがもたらす未来を語る。.NET年間40億ドルの開発費を投じていると言うが,その真価はこれから明らかになっていくはずだ。

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[斎藤健二, ITmedia]

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