News 2000年12月4日 11:59 PM 更新

着実に電子書籍を普及させるザウルス──シャープ「ザウルス文庫」の新作を書籍に先駆けて提供

シャープは「ブレアウィッチ ラスティン・バーの告白」を書籍の販売に先駆けて電子書籍として提供する。ザウルスは日本の“電子ブック”となるのか?

 12月4日,シャープは映画「ブレアウィッチ2」のサブシナリオを,書籍に先駆けて「ザウルス文庫」として発売すると発表した。ザウルス文庫は,シャープのPDA「ザウルス」シリーズ上で読める電子書籍だ。


12月15日に発売される最新のザウルス「MI-E1」にザウルス文庫を表示させてみた。文字の大きさは変更できるし,縦書き,横書きも変えられる

 シャープは,これまで“ザウルス文庫”として1000タイトル以上のザウルス向け電子書籍を「シャープスペースタウン」で提供してきた実績がある。しかし,それらは既に書籍になっているものをデジタル化したものだった。

 今回提供されるのは,アーティストハウスから来年2月に発売予定の書籍「ブレアウィッチ ラスティン・バーの告白」。ザウルス文庫での提供開始は12月8日と,書籍に2ヵ月も先駆けての提供となる。

 価格はオンラインの販売で500円(税込み)。この絶妙な価格付けを,アーティストハウスのゼネラルプロデューサー楠部考氏は,「今回の書籍は1400円。印刷や物流,倉庫費用などのハードウェアに関する負担を考慮して,1200〜1400円の本ならば,500〜700円くらいが妥当。今回はPRの意味もあり,500円にした」と説明する。

 また,ビューワとしてザウルスを選んだことについては「液晶やフォントも含め,製品として表示品位が高い。文字の大きさが自由に変えられ,タテ,ヨコの表示設定も自由なので,読みやすいスタイルで読める」(楠部氏)とベタ誉めだ。

 確かに,楠部氏が「文庫販売の実績」という通り,電子ブックと呼ばれる機器がどれも精彩を欠く中,ザウルスは地味ながら着々と実績を重ねてきた。シャープSST推進センター所長の谷口実氏は「ダウンロード数は3万以上を目指したい」と,今回のザウルス文庫に自信の表情だ。

 この電子書籍は,Webブラウザを装備した「MI-500」以降のブラウザでダウンロードできる。ただし「MI-C1」「MI-P10」「MI-E1」以外の機種では別途文庫ビューワ(無料)もダウンロードする必要がある。

 これまでのザウルス文庫は1作品が250Kバイト程度あったが,今回のブレアウィッチ ラスティン・バーの告白は各章に分けて提供されることもあり,1章あたり20Kバイト程度だ。

 米国では電子ブックを読めるデバイス自体がまだ5万台しか売れていないというが(12月1日の記事参照),ザウルスは累計販売台数が200万台を突破したといわれている。すべてのザウルスで電子書籍を読めるわけではないが,電子書籍のプラットフォームとして,現在最も多くの台数が存在するのは間違いない。

 “液晶のシャープ”といわれるようにザウルスの液晶は美しく,独自に液晶用のフォント「LCフォント」を開発するなど,シャープは電子書籍のための基礎技術を積み重ねてきた。

 米国では低調といわれる電子書籍だが,案外ブレイクするのは日本からかもしれない。

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[斎藤健二, ITmedia]

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