News 2000年12月7日 07:54 PM 更新

もうGIFもTIFFもいらなくなる──JPEG-2000

保存する画像フォーマットで悩むのは過去のことになるかもしれない。GIF,TIFF,さらには動画までJPEG-2000で置き換えられるのだ。

 画像フォーマットというと,何を思い出すだろう? JPEG,GIF,TIFF? JPEGのブロックノイズが気になるのでGIFを使ったり,GIFは256色しか表示できないのでTIFFを使ったり……というのが普通の画像フォーマットの選び方だと思う。

 そんな画像フォーマットの選択に悩む必要はなくなるかもしれない。JPEG-2000を使えば,静止画はもちろん,動画さえも同じエンコード/デコードエンジンで処理できるようになるからだ(JPEG-2000については,12月4日の記事を参照)。

可逆圧縮をサポート

 いくらJPEGの圧縮率が良いからといって,すべてをJPEGで圧縮するわけにはいかない。少しでも画質が落ちたら困る,できる限り鮮明な画像を提供したい,というニーズがあるからだ。

 JPEG-2000では,圧縮の際に情報の劣化が起こらない「ロスレス圧縮」もサポートする。利用できる色数にも制限がない。また,画像の中の特定の部分だけをロスレス圧縮することも可能だ。ソニーのインフォメーション&ネットワーク研究所,代田研究室の主任研究員である福原隆浩氏によると,「遠隔医療などで,患部だけをロスレス圧縮し,必要でない部分は不可逆圧縮する」といった応用法が考えられるという。

アニメーションも可能

 JPEG-2000のファイルフォーマットは,複数のコードストリームを持てるようになっている。それによって,アニメーションGIFのように複数の静止画が順に切り替わって見せることも可能だ。

 カラーインデックスも持つことができ,合計で256ものチャンネルをサポートする。sRGBまたはICCプロファイルにも対応するなど,至れり尽くせりといったところだ。

さまざまなプログレッシブ表示

 多くのプログレッシブ表示に対応していることもポイントだ。これまでのプログレッシブJPEGは,実は正式に定められたフォーマットではない。JPEG-2000では,「解像度」「圧縮率」など5種類のプログレッシブ表示を正式にサポートする。


圧縮率のプログレッシブ表示の例(画像提供:ソニー)
オリジナルをダウンロード:ZIP形式 957Kバイト)

解像度のプログレッシブ表示の例(画像提供:ソニー)
オリジナルをダウンロード:ZIP形式 2.12Mバイト)

*それぞれリロード(ページの再読み込み)を行うと,アニメーションを見ることができます。
*オリジナルファイルの解凍には以下のソフトをお使いください。

Windows用解凍ソフト:+Lhaca
Mac OS用解凍ソフト:StuffIt Expander

 また,1つのファイルから特定の解像度や圧縮率の画像を取り出すことができる。例えば,回線の太さに応じて送信する画像を変更しようと思ったら,これまでは「56Kbps用」「ISDN用」「T1用」というように複数の画像をあらかじめ準備しておかなくてはならなかった。JPEG-2000では,大きく圧縮率の低い画像をサーバに持っておけば,任意の解像度などで取り出すことが原理的に可能だ。PDAや携帯電話など,インターネットに接続されるプラットフォームが増える中で,応用範囲が非常に広いと予想される。

動画もJPEG-2000に

 JPEG-2000には,動画向けのフォーマットである「Motion JPEG-2000」も策定される予定だ。

 現在の動画フォーマットと言えば,MPEG2や4,DVフォーマットが有名だが,どれも一長一短。大きなポイントは「動き予測をするかどうか」だ。ご存知のとおり,MPEG系の動画フォーマットは前や後ろのフレームを比較し,差分を記録するような圧縮を行っている。これは非常に有効な圧縮手段ではあるが,「編集が難しくなる」「圧縮に多大な演算を必要とする」という欠点がある。

 Motion JPEG-2000は,動き予測を行わない,基本的に各フレームごとに圧縮していく動画フォーマットだ。この方式の場合,編集が容易で圧縮もシンプルに行える。このため,「Motion JPEG-2000のハードウェアエンコーダは,MPEG系の圧縮を行うチップと比べると,ゲート数が50分の1から200分の1と,少なくて済む」(福原氏)。

 圧縮率では,ほかのフォーマットと一概には比較できない。MPEG系の動画は,動きの激しいシーンでは動き予測がうまく働かないのでそれほど圧縮がかからないため,場合によってはMotion JPEG-2000のほうが圧縮率が良いこともあり得る。最も置き換えに適しているのはDVフォーマットだろう。圧縮率は確実にMotion JPEG-2000のほうが上だし,柔軟性も高い。またビデオカメラに搭載するのにもMPEG系よりはるかにエンコードチップが小さくて済む。

 また,JPEG-2000がロスレス圧縮をサポートしているので,画像劣化の全くない動画圧縮ができるのも強みだ。福原氏によると「ロスレス圧縮の動画に興味を持っている放送局もある」という。

 Motion JPEG-2000の動画フォーマットは,AppleのQuickTimeをベースに,圧縮部分をJPEG-2000方式にすることで成り立っている。「Appleは(Motion JPEG-2000に)QuickTimeの6か7で対応するようだ」(福原氏)

 このMotion JPEG-2000は,規格のPart3で策定される。この12月に策定される予定なのは,JPEG-2000のなかでも「Part1」と呼ばれる基本的な部分だ。今後の策定予定は以下のようになる。

Part1中核となる画像圧縮/伸張技術を規定
Part2Part1の伸張方式に関する技術を規定
Part3静止画の連続動画符号化に関する技術やファイル形式を規定
Part4ビットストリームの検証方法を規定
Part5圧縮/伸張方式の符号化効率,ビットストリームの検証で利用する公式ソフトウェアを規定
Part6自然画像や図表画像など特殊画像向けのファイル形式を規定
Part7Part1をハードウェア化したときの相互互換性の条件を規定

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[斎藤健二, ITmedia]

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