News 2000年12月8日 09:17 PM 更新

メモリースティック戦略に「まんまと」はまった私

デジカメのメモリーカードには何をお使いだろうか? 私はソニー製DVカメラを選んだばっかりに,すべてをソニー製品で固めようとしている。

 小型のメモリカード市場では,次世代の標準を巡って各社がしのぎを削っている。それぞれの陣営に分かれ,どこも顧客を囲い込もうと必死だ。

 それは分かっている。分かっていながら,私はソニーのメモリースティック戦略にまんまとはまってしまった。

対応製品の数が重要

 ことの発端はDVカメラだ。自宅で動画編集としゃれこもうと考えた私は,DVカメラ選びを始め,結果ソニーの「DVR-PC110」を選択した。このDVカメラは業務用の機器で培った技術を生かしながら,100万画素の静止画も撮れるという触れ込みのものだ(しかもフラッシュまで付いている)。

 このDVカメラで撮影した静止画はメモリースティックに記録される。特定のメモリーカードを利用する機器を1つでも買ってしまったら,ほかでも同じメモリーカードを利用したいと思うのは当然だ。

 「そういえば,ICレコーダーはソニーのものが音がいいと友人が言ってたな」(メモリースティックを使う)

 「PDAならやっぱりCLIEかな?」(やっぱりメモリースティックだし)

 「携帯電話で音楽を聞けるといいな。auのDIVAっていいかも」(これもメモリースティックじゃないか!)

 「今,デジカメで一番売れてるのはP1らしいな」(もう全部メモリースティック……)

 ここまで来たら,ノートPCもソニーのバイオにしてしまうのは時間の問題だ。メモリースティックがアダプタなしで読めることが大きなメリットなのだから仕方ない。PCカードアダプタにはP-in Comp@ctが既にささりっぱなしだし,そもそもPCカードアダプタの場合,メモリカードを抜き差しするときにいちいちOS上から“停止”しなくてはいけないのが面倒だ。

 そしてもう1つ,シリコンオーディオプレイヤーで使われる「Magic Gateメモリースティック」の著作権保護技術をサポートしているのは,バイオシリーズの一部と,最近発売されたUSB接続のリーダーだけだ。

メモリーカードは何でもいい。統一さえされれば

 よくよく市場を見てみると,ソニーのメモリースティックに対するサポートが優秀なのが分かる。あの小型のバイオC1でさえ,メモリースティックスロットを持っているのだから,驚く限りだ。

 自社の技術を次世代標準とするため,自社製品に採用して顧客を囲い込んでいく,これはどこでも行う当然の行動だ。しかし,自社内だけでもそれができているメーカーのいかに少ないことか。

 SDカード陣営に属するといわれる東芝や松下は,対応が出遅れたと感じずにはいられない。SDカードがアダプタなしで読めるノートPCをすぐに挙げられる人が何人いるだろう?(答えは松下の「ヒト」だ)

 もちろん,松下電器産業は格段にSDカード搭載製品の種類を増やしている。12月15日にはSDカード搭載のICレコーダーも発売予定だ。ただし残念ながら各ジャンルでのラインナップはまだ豊富とは言いがたい。

 もちろん,最初にソニーのDVカメラを買ったから,メモリースティックの優先度が上がったのは確かだ。しかし松下のDVカメラを買ったからといって,SDカードが使えるノートPCがヒトしかないとなれば,選択肢はないに等しい。

 ソニーのメモリースティックと,松下のSDカードを,それぞれ直接読み書きできる製品の例を挙げてみた。すでにこれだけ差がついている。

メモリーカード メモリースティック(ソニー) SDカード(松下)
直接させるノートPC バイオC1,バイオSR,バイオ505 ヒト
直接させるデスクトップPC バイオL
デジタルカメラ F505V,F55V,S70,S50,S30,P1 ipalm

 ソニーには,PCから映像,音響まで自社製品を持っているというアドバンテージはもちろんある。それでも,これだけ多くの有名メーカーが集まりながら「SDカードが挿入できる機器の中から選ぶ」ということさえ難しいのはなぜだろう? 各陣営内でも足並みが今ひとつそろっていないという印象だ。

 いまからでもまだ遅くはない。多少コストアップになっても,すべての新製品でメモリーカードをそのまま利用できるようにすべきだ。何しろSDカードを利用しているユーザーは,別途1万円近く払ってUSBやPCカード型のアダプターを購入しているのだから。

 いまならアダプタを使えば済んでしまう問題かもしれない。しかし今後,シリコンオーディオプレイヤー,DVカメラ,カーナビ,オーディオ機器と,さまざまな電気製品にメモリーカードは採用されていく。そのときになって「データを交換するには専用のアダプターが必要です」は通用しない(SCEの意向のせいか,PS2のメモリはメモリースティックではない。惜しい話だ)。

 メモリーカード自体の機能差など,ユーザーにとっては全く気にならない。どこのメモリーカードであろうと,音声や映像が簡単に記録できて,そのままほかの機器でも利用できればいいのだ。メモリースティックはその対応が進んでいるにすぎない。しかしそれだけのことで,私の持っているデジタル機器は次から次にソニー製に代わろうとしている。

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[斎藤健二, ITmedia]

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