News 2000年12月18日 11:59 PM 更新

IMT-2000を待つ必要はない!?──H",128K,パケット通信導入へ

IMT-2000サービスインの前に,H"は128Kbps,パケット通信を導入しようとしている。価格が不透明なIMT-2000に比べ,H"のサービスは速度,価格ともに魅力的だ。

 12月18日,都内で開かれたモバイル・コンテンツ・フォーラム主催のセミナーでは,DDIポケットの販売促進部長である土橋匡取締役が,feel H"のコンテンツ戦略について講演した。土橋氏は「feel H"は安価な利用料を既に実現しており,スピードとコストのバランスで考えれば次世代携帯を抜いているだろう」と語った。

今になって生きてくるPHSのメリット

 来年5月のNTTドコモによるIMT-2000サービス開始を控え,盛り上がる次世代携帯電話だが,そのメリットの多くが既にPHSで実現していることに気付いているだろうか? 最大384KbpsといわれるIMT-2000の通信速度だが,最初のサービス提供地区は首都圏のみ。H"は既に「全国で64Kbpsのデータ通信を実現」(土橋氏)している。

 さらに「来年の4月か5月には128Kbpsのサービスを開始する。AO/DIも考えている」(土橋氏)という。128Kbpsのサービスは,PHSの2回線を束ねて利用する方式と見られている。一方のAO/DI(always on/dynamic ISDN)とは,データの送信状況に応じてパケット通信と回線交換を動的に切り替えるものだ。どちらも既に技術としては完成されている。どの部分でも,H"の戦略は現実的かつコスト面でリーゾナブルだ。

 IMT-2000では,音楽や動画の送信サービスが期待されているが,肝心の料金設定については不透明だ。「次世代携帯の料金などが明確にならないと,議論にならない」(土橋氏)。

 現状では推測するしかないIMT-2000での料金だが,“パケット料金で商売している”(NTTドコモ)と言うとおり,そうそう安価にするのは難しい。さすがに現状のパケット料金よりは安くせざるを得ないだろうが,現状のPHSの通信料金と比較するとデータ量当たりの料金は高くなるというのが関係者の見方だ。

 また,土橋氏は「1円からメールが送受信できるなどパケットにはパケットのよさがある」とした上で,回線交換のメリットを語る。「回線交換では5円で1万文字まで送れる。そこを利用して,Eメールのフッタに広告を入れるなどのトライアルをしている」(土橋氏)。ユーザーが登録したプロフィールに合った広告を入れ,利便性を増すように作っているという。「ユーザーの8割が広告を受け入れている」(土橋氏)。

 もう1つ,今後の技術的なトピックは位置情報の利用だ。auなどは既に位置情報を利用したサービスを始めており,携帯電話にGPSを内蔵するという話も出始めている。その点,PHSは電波が届く範囲が非常に狭いため,基地局からの情報だけで位置を特定しやすい。「PHSというのは基地局がたいへん多い。基地局を15万局程度持っているので,GPSを使わなくても位置を確認できる。地下鉄などでも位置情報を確認可能」(土橋氏)。

次世代feel H"はWAP対応!?

 H"シリーズで,PHSの悪いイメージも払拭され,端末としてもfeel H"シリーズで携帯電話を凌ぐ高機能,高性能機が投入された。残るH"シリーズの弱点は,「H" LINK」と呼ばれるコンテンツサービスだ。

 iモードユーザーが1600万人を数えるのに対して,H" LINKのユーザーは250万人。認知度の面でも課題は多い。

 「次世代のH”では,HTML,MIDI,JPEG,WAP2.0等々への対応を進めていく」と土橋氏は語る。iモードの大成功により,WAP2.0にはCHTMLベースであるiモードの影響が色濃く反映されるといわれている。H"がHTMLやWAP2.0に対応していくという発言は,現状ではほぼ“iモードの勝手サイトを見られるようにしていく”と受け取っても間違いはない。


feel H"のメディアミックス展開として,動画再生やインターネットスタンダードの採用を挙げる。次世代機では,「Trevaの高機能化」「高性能液晶」「JPEG対応」を挙げ,“映像に強いH"”を推し進める

 土橋氏は「JPEG対応への要望が多い。来年はJPEGやMPEG4の時代だと思っている」と言う。既にfeel H"全機種をカメラ対応にし,MPEG4の伝送でも高速,低料金のサービス提供が技術として既に可能なだけに,H"が映像/音声の提供に本格的に乗り出した場合,IMT-2000を待たずしてモバイルマルチメディアの時代が到来する可能性もある。

 「技術先行ではなく,今できる最高のサービスを提供していく」(土橋氏)というのがH"のスタンスだ。携帯電話がJavaやW-CDMAなど新技術を次々と採用する中,H"が最も地に足のついたサービスを予定している。新技術に胸をときめかせるのもいいが,とにかく安価で便利なサービスを提供するH"の姿勢には共感できる人も多いはずだ。

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[斎藤健二, ITmedia]

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