News | 2000年12月21日 11:58 PM 更新 |
米Microsoftは今月はじめ,次期オフィススイート(Office 10)から「Office Designer」と「Local Web Storage System」(LWSS)という2つの機能が削除されたと発表した(12月9日の記事参照 )。数ある新機能のうち,たった2つが抜け落ちただけとの考えは正しくない。この2つの機能は,私が見るところOffice 10でもっとも重要な変更点だと思うからだ。
Officeファミリーの新しいツールとして追加されるはずだったOffice Designerは,「Web Storage System」(Exchange 2000やTahoe Serverで採用されているHTTPベースでアクセス可能なデータベース)や,Office 10向けに拡張されたWebサーバ上で動作するアプリケーションを開発するツール。
β2に付属していたDesignerは,“簡易Visual Studio”のようなインタフェースを持ち,あらかじめ用意されたテンプレートを元に,Webパーツをマウスで並べることにより,カスタムアプリケーションを作成できる。複雑なアプリケーションを作成することも可能だが,単にカスタマイズするだけであれば,操作は非常に簡単だ。
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デジタルダッシュボードなどを作成できるはずだったDesigner(拡大画像) |
このWebパーツは,あらかじめ用意されているものだけでなく,「Visual InterDev」を用いて作成したものを登録することもできる。例えば,企業なら,必要と思われるさまざまな情報アクセスのアプレットをWebパーツとして開発しておき,それらを利用するために適切なテンプレートを作っておくことで,社員に対してデジタルダッシュボードを提供できる。エンドユーザーは,テンプレートをカスタマイズして,自分のワークスタイルに合わせた情報ポータルを作り出せばよい。
一方のLWSSは,Web Storage Serviceと全く同じ動作を行えるモバイル機能を備えたキャッシュ付きプロキシサーバのようなもの(10月13日の記事参照)。LWSSがあれば,オンラインでもオフラインでも,その区別なくWebアプリケーションを利用することができる。したがって,Exchange 2000と連携して動作するWeb Formを用いたフロントエンドアプリケーションを作ったり,ネット上にあるLWSS対応アプリケーションを,モバイル環境でも利用できるようになるわけだ。
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OutlookはWebアクセスプロトコルを利用可能だったはずだが……(拡大画像) |
これらの機能は,エンドユーザーから見て魅力的なだけではなく,将来,Office.NETをフロントエンドツールとして,さまざまな機能をインターネット上のサービスで提供しようとしているMicrosoftにとっても,そこに行く着く過程としてLWSSは非常に重要なものだったのは明らかだ。
私はOffice 10英語版のβテストに参加し,これらの機能にアクセスすることができた。Microsoft のいう不安定さはよく理解できる。特にLWSSは必要もない時に起動し,メモリ上に常駐するなどのバグもあり,Office全体の動作を緩慢にする原因にもなっていた。またWeb Storage Serviceとほぼ同じ機能を備えているため,プロセッサに対する負荷も大きい。
ただ,こうした機能の削減は,Office全体の機能に焦点を当てた場合,あまりにも大きなマイナスだと感じる。特にLWSSに大きく依存していたOutlookは,LWSSがなくなったことでマイナーチェンジに等しい変化しか感じられないかもしれない。
もちろんOffice 10には,アプリケーションにエラーが発生した際,作業中の文書を即座に自動保存するドキュメントリカバリー機能や,機能アップしたWebコラボレーション機能,ならびに作業性を高める作業ウィンドウといった新しいフィーチャーが組み込まれているが,「Office 2000」からのアップグレードの決め手となるような機能とは言いがたい。
また,文書の読み上げや音声認識に対応したOffice 10は,自然言語処理の分野で一層の進化を遂げるだろうが,英語版に日本語ランゲージキットをインストールした状態では,日本語の自然言語処理機能が実装されていなかった。製品版でどのような対応が取られるかは不明だが,それらがOffice 10へのアップグレードを促す積極的な材料となるかどうかは疑問の残るところだ。
次期Officeの目玉は何になるのか? ユーザーに対して説得力のあるメッセージを探したいのは,Microsoftのマーケティング担当者自身かもしれない。
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